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風林

 魔術師ギルドでヴァレリウスに報告をした。


「するとフライターク家の魔術師、ビクターという者が、我々が製造したポーションを使ってスーパーゾンビを産み出してるわけか」

「実際に見たわけではないが、証拠と証言を合わせれば間違いない」

「分かった。こちらで調べてみよう。君は、ダンジョン攻略準備に忙しいと思うが、ゾンビの討伐依頼が来たらなるべく受けてくれ。応援が必要なら言ってくれ」


 報酬に、金貨と指輪をもらった。


「存在感を薄くする指輪だ。役に立つかもしれないと思って」


 スパイ用か。忍者か。レオのパーティのカールが使ってるやつだな。


 俺はありがたく受け取って、ギルドを後にした。乗合馬車で王都に帰った。馬車でずっとペプを撫でた。



 王都の西門の外で森に入り、ハウスに入った。


 ゾンビ殴り用のガントレットが欲しい。と思ったけどそもそもガントレットに魔闘気が乗らない。あ、エンチャントすればいいのか。っていうか、エンチャントするならガントレットじゃなくてよくね?


 俺はブロードソードを出した。これにプロテクションのエンチャントをして、切れ味が増せばいいんだよな。やってみようと思ったら……。


——あれ? プロテクションと剣の耐久性アップって、同じじゃん……


 パラメータが違うだけで同一のものだった。耐久性強化のエンチャントは、攻撃力はほとんど上がらないくらいの性能。その代わり長持ち。いやこれ、この性能値なら、百振りどころか千振りくらい保ちそうだが……。エンチャントしたやつが素人だったのかな?


 見てみたら、貼り付いてる魔法陣が小さかった。もっと大きくすればもっとマナが込められる。


 俺はプロテクションをブロードソードにエンチャントした。そして可哀想な犬二号にもプロテクションをかけて、外に出て思いっきり斬った。


——ガキン!


 金属的な音がした。斬れたが辛うじて斬れたという感じだ。次に俺はブロードソードのプロテクションの集中度を二倍にしてエンチャントし直して、復活した二号を思いっきり斬った。


——ガシュ!


 アタックは硬い感じがするものの、刃が通ってざっくり斬れた。これはすごい。マナ充填量は……結構食う。この感じだと三、四撃だ。打ち合いになると厳しい。しかし、これで打ち合う敵がそうそういるわけはないか。当たらなきゃマナは減らないわけだし。と考えて頭に思い浮かぶのは魔闘気の男だ。例えばあいつが、あいつの国の中では弱い方だったとしたら……さらに上がいることは想定しておいた方がいいな。


 決戦用武器はこれでいいとして、普段使いは威力抑え気味でもっと当たりやすい、軽い武器の方がいいかな。片手剣で全然問題ないか。切れ味と折れる心配がないから、バランスさえよければ適当な剣でもいいか。広い場所ではロングソードもいいかも知れない。でも、刃がついてなくてもいいかな。バトルスタッフがあったらなあ。でもあれはちょっと重いか。防御重視だったからな。あ、木刀でいいのか。オリジナルの木刀を作るか。


 俺はストレージから木刀を出して、柄の部分に『風林火山』と書こうとして、若干失敗して変な字になったのと、めんどくさくなったので、『風林』でやめておいた。そして木刀に通常のプロテクションのエンチャントを威力半分で付呪した。試しに素振りをしてみると軽くていい感じだ。二号を殴ってみたところ、ガキンガキンと音を出しながら、二号の骨にヒビを入れた。五十撃くらいいけそうだ。普段使いはこれでいいだろう。


「ペプ、明日からまた剣のトレーニングもしようかな」


 俺はハウスで一杯やって、ペプに顎を舐められたあと、腕枕をして寝た。



  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 高校だ。俺は裏門から入ろうとしている。エミリーが付いてきた。エミリーは制服じゃなくローブを着ている。下駄箱で上履きに履き替えようとしたが、ブーツがうまく脱げない。もたもたしているとエミリーが魔法で俺を浮かせてくれた。俺は廊下を滑るようにして教室に向かった。教室の扉を開けると、生徒の席にスケルトンが座っていた。そして一斉に俺の方を見た。目玉がないが首の角度が俺の方を向いている。首が不自然に曲がりすぎてるやつもいる。俺はエミリーに促されて、開いてる席に座った。ベルが鳴り扉から骨先生が入ってきた。教壇に立ち、口をカタカタと鳴らした。すると生徒のスケルトンたちも口をカタカタと鳴らした。


——カタカタカタカタカタカタカタカタ……


 うるせー…………



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めて、朝のルーチンをこなし、骨先生とスパーをして、風呂に入った。髪がだいぶ伸びてきた。もうすぐ後ろで結べそうだ。しかしこの世界には髪ゴムがない。結んでもきっと緩んでウザいだろう。短髪もかっこよくなりそうにないし、肩までの長さにしておくのがいいかな。ああ、シャンプーが欲しい……。


 俺はもう一回戦、骨先生とスパーをして、シャワーを浴びて、余ったマナで剣にエンチャントしたり、宝石に充填したりして、昼寝をした。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めたら昼過ぎだった。


「ペプ、買い物に行こうか」

「ナア」


 俺は市場を回り、魔法のバッグ方式でいろんな食料を買った。この間の燻製が美味しかったのでいっぱい買った。買っちゃうと自分で作らないような気がする。まあいいか。


 あとはペプ用の生魚と焼き魚。意外と小魚の方が好きっぽいのでいっぱい買った。俺もいつも肉とフルーツばかり食べてる。お手軽だからだ。焼き魚は全然嫌いじゃないが、やっぱ骨があってめんどくさい。骨を取ろうにも箸がないし。箸、作ればいいのか。ま、魚と野菜のスープも作ろうかな。俺は雑貨屋で鍋を買い増しした。ホットプレートになりそうな鉄板は売ってなかった。河原で石版を探すか。


 あ、もしかして、今なら石くらい割れるんじゃねえ? 素手は無理かもしれないけど、剣だったら。あとで河原いくか。


 雑貨屋でいろいろ見ていたら、石鹸があるのを発見した。なんだ、普通に売ってるじゃん……一個銀貨一枚だ。お高いがしょうがない。俺は金貨一枚で二十個まとめ買いした。まとめ買いしたので一個おまけしてくれた。


 次に俺は宝石屋に行って、古金貨を売った。ここでスロット武具の宝石が売ってるが、肝心の武具を見たことがない。


 服屋に寄ってみたが、注文したコートはまだ出来ていなかった。外套を一着と、下着とシャツと端布をあるだけ買った。


 魔法道具屋に行った。魔女っ子がいた。掘り出し物はなかった。俺製のいい感じの炎熱のメイスを売った。金貨四枚で売れた。ぼろもうけだ。


「魔法の武器は軍の人が買いまーす」


 戦争道具か。複雑な気分だ。メイス一つで攻め込むきっかけにはなりはしないが。いや逆に、もしハロン王国の戦力がイグレヴ王国に劣っているとしたら……? 積極的にエンチャント武器を売ってバランスがとれるように仕向けた方がいい。エンチャントメイスも数十本に集めればかなりの戦力になりそうだ。そして俺は丸儲け……。今度、エミリーに今どういう戦力バランスなのか聞いてみようか。


「それと、この剣を鑑定してくれ」

「これは……剣先から三段の炎、手元に弱く冷気の魔法陣が設置されてますね! 炎熱の威力が三倍で、手も熱くならない親切設計ですね! 金貨二十枚で買い取りまーす」

「金貨二十枚ってずいぶん高価買い取りだな」

「王国軍が買い上げますのでー。軍でもチャージできるらしく、発動回数が少なくても高値で買い取ってもらえまーす」

「そうか。いや、これはいい。自分で使う」

「残念でーす」


 日が暮れそうだったので、西門に戻り、河原へ向かった。着いたらちょうど日が沈む時だった。俺は光る石ころを灯りにし、手頃な石を剣で斬ってみた。プロテクションをエンチャントすれば剣は痛まないと思うが、念のためゴブリンからゲットした壊れてもいい剣で。


 石にも層があって、石の種類にもよるが、うまくやれば割れるように平たく切れて、石のプレートのようになる。ここの河原の石は、なんとか岩とか種類は忘れてしまったが、いい感じに割れるようだ。


 俺は斬りたい石を、別の石で支えて縦にし、剣で斬った。狙いを外さないようにちょっと弱めの力で。


——ガッ!


 石はうまく割れた。左側はボロボロになってしまったが、右の石は幅十センチ程度のプレートになった。ちょっと分厚いが、これ以上斬ったら絶対に割れる。プレートじゃなくなる。


 他に何個か試して、三つほど鍋プレートをゲットした。


 この河原には、前から目をつけていた岩がある。なかなか巨大な岩だ。吸い込んだら卒倒するかも知れない。マナ最大量を増やすトレーニングもした方がいい、しかしこの巨大な岩は吸い込んで大丈夫なのかと不安だった。実は岩になってなくて、地球そのものだったりして。その場合どうなるんだろ? 吸い込めない、ならいいけど、吸い込んじゃったら……地球が丸ごと消える? まあ、そんなわけないよな。きっと。きっと。


 俺は岩の近くでハウスに入り、恐る恐る吸い込んでみた。


——ぐわんぐわんぐわん………………


 ものすごい目眩、重力が頭から降ってきたような感覚。しかし、ぎりぎり踏みとどまった。マナはほぼ残ってない。


——この岩、逆にストレージから出したらすげえマナ増えるんじゃねえ?


 俺は寝床を入り口近くに移動させ、窓を開いて元の場所に大岩を戻した。そして卒倒した。意識を失う短時間でうまく寝床に収まるように身体を調整した。晩飯を食べ忘れたことに気づいた。




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