8話 仲間が加入した
王都を歩き回って残りのパーティメンバーを探していた。
でもパーティ加入希望者は見つからなかった。
『白魔道士のいるパーティなんてゴブリンに負けそうだからやだ』
『白魔道士のパーティに入らないかだって?嫌に決まったんだろ』
と散々な返事を頂けたのだった。
「おのれ………今に見ていろ。白魔道士を最高職に俺がしてやる」
「白魔道士が最高職になるんじゃなくてアインが強いだけで終わりそうだけどね」
苦笑いするシオン。
「そんなものだろうか」
「だって現状のめちゃくちゃな動きできるのアインだけだよ?アインが強いだけで他の白魔道士が強くなるわけないよ」
彼女はそう考えているらしい。
「しかしだな。いずれ俺は弟子を取って白魔道士がオワコン職じゃないことをだな」
流石に自分の職がこんなに言われていては悲しいものだ。
そんな事を話している時だった。
「むふふふ………パーティメンバー募集の貼り紙を見て来てあげたのだわ」
声が聞こえそちらを見ると少女が立っていた。
「この盗賊の私が必要と聞いたので来てあげたのだわ」
「ふむ。盗賊はたしかに欲しいが」
少女を見る。
小柄で盗賊としては文句なしの身体ではありそうだが。
黒髪に赤い瞳の少女を見る。
「報酬金は5割貰うのだわ」
「は?5割?」
「当然でしょう白魔道士。白魔道士のところに来てくれるのなんて私くらいなのだわ」
シェリーとシオンと顔を見合わせた。
「あ、悪い。俺ら急用できたから。それじゃあまた!達者でな!」
「え?ちょ、ちょっと待ってなの!」
そう言い立ち去ろうとしたら泣きそうな顔をしながら追いかけてきた。
「わっ!」
その時小石で躓いたのか隣にいた男の背中に突っ込んでいた。
「いで!ご、ごめんなさい!」
「ようよう嬢ちゃんぶつかっといてそれだけか?」
「ひ、ひぃぃ!!!!」
まったく………手間をかけさせるな。
元はと言うと俺が意地悪したのも原因か。
「おい、おっさん」
「あ?何だよ」
「これやるから勘弁してやってくれ」
おっさんにポーションを差し出す。
「多少の痛みならこれで治るだろ?」
「いやぁ治らないなぁこれは。嬢ちゃんがきちんともみもみしてくれないと治りそうにないなぁ」
そう言って汚い目を少女に向ける男。
なるほどな。
「なぁ?!」
「は、離して欲しいのだわ!」
男が少女の手を掴んだのを見て俺も男の手を掴んだ。
「離して欲しいって言ってるけど?」
「うるせぇぞ!ガキ!」
男の大振りの一撃。
それを避ける。
「な?!」
「ノロマが。それとひとついいか?俺に手を出したってことは手を出される覚悟があるんだよな?」
「ひ、ひぃいぃいぃぃ!!!!」
怯えているがもう遅い。
踏み込んで顎を拳で捉える。
それで吹き飛ぶ男。
「ひ、ひぃいぃ!!!!こいつ強えぇ!!!!」
慌てて転けそうになりながら去っていく男。
それをポカーンとした顔で見ている少女。
「流石に報酬5割もやれないんだが。パーティに入るか?」
「うえぇぇぇぇぇん。報酬なしでもいいから入れさせて欲しいのだわぁぁ」
俺に泣きながら飛びついてくる少女だった。
※
宿に戻った俺達はとりあえず自己紹介することにした。
これからパーティメンバーとして過ごすのだ。自己紹介は大切だな、うむ。
「まずは助けてくれた事感謝するのだわ」
少し瞳に涙を浮かべながらそう言う少女。
「俺の名前はアイン。まぁ好きに呼んでくれ」
「ならダーリンと呼ぶことにするのだわ!」
そう言って飛びついてくる少女。
確かに好きに呼べと言ったがその言葉を聞いて面食らう。
「これは運命なのですわ」
「はぁ?」
「神は言っていますわ。私たちは結婚すべきなのだと、なので結婚して欲しいのですわ」
「????」
頭を疑問符が埋めつくした。
何がどうなって結婚なんだ?
話が飛びすぎだ。
「ちょっと!何言ってるのよ!アインの隣は私だけの特等席なんだけど?」
今まで黙っていたシオンが反対側に抱きついてきた。
「何だか分かりませんけど私もアインと結婚します!」
シェリーまで訳の分からないことを言い出した。
「とりあえず落ち着け。意味が分からん」
全員を離れさせると静かに見回した。
「自己紹介をしようという流れからどうしたら結婚の話になるんだよ教えてくれ」
「それは………私達が運命によって結ばれているからなのだわ」
夢見る乙女みたいな視線で俺を見てくる少女。
「その前に名前を教えてくれ」
「申し遅れたのだわ。私はレイナですわ。お好きにお呼びくださいダーリン」
そう言ってまた抱きついてくる。
ダーリン呼びはもうやめないのだろうか。
普通に恥ずかしいのだが。
とはいえ俺も男だ。悪い気はしない。
前世ではサポーターという地味な脇役過ぎてこうやって言い寄られることもなかったし。
「で、聞きたいんだがレイナ」
「何を聞きたいのだわ?」
「何でこんな白魔道士のリーダーパーティに来たんだ?」
「運命を感じて………」
じっと見つめる。
嘘だ。
「私の冒険者ランクはEだからですわ」
「まぁそんなところだろうとは思った」
でもなければこんな白魔道士がいるパーティに来ないだろう。
「でも、私はそんなことを気にしません。私のダーリンはきっとSSSランクパーティになるって信じておりますから!」
「なれるといいよなぁ」
そんな風に同意する。
「なれるでしょ。アインは強いから」
一応駄女神はそう言っているがどうだろう。
「とりあえず寝ることにするか。直ぐに死の森へ向かうつもりだから。皆も早めに寝ておけよ?」
3人の返事を聞くと部屋の明かりを消した。