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5話 事件

 ギルドを出た後も馬鹿が絡んできた。


「おいおい、白魔道士ちゃんよ」


 金髪を短く刈り上げた男が話しかけてきたのだ。


「なんだよ」

「面白いことを言っていたのでな。白魔道士に懺悔の言葉とは」


 男が顔に手を当ててククっと笑う。


「どこからそんな自信が溢れ出るのだ?教えてくれはしないか?」

「どこからだっていいだろ別に」

「で、その懺悔の言葉を俺達はどうやって考えればいいのだ?」


 なおも笑いながらそう聞いてくる男。


「俺が魔王四天王の1人を倒す。まだ誰も四天王を倒すことが出来ていない。それをこの俺、白魔道士が倒せばお前らは俺を馬鹿にしたこと悔やむだろう?」

「おい、聞いたかお前ら」


 男が後ろに控えていた仲間にそう問いかけた。


「こいつが、白魔道士が魔王を倒すぞーだってよ。笑っちまうよ」

「無理無理。何やっても中途半端な白魔道士に四天王の相手なんてよ」


 後ろにいた紫髪のそいつの仲間も俺を否定する。


「やってみなくちゃわかんないだろ」

「やらなくても分かるんだよ。俺達Sランクパーティですら倒せてないんだぞ?」


 そう言って笑う男。


「自己紹介しておくけどな。俺は紅蓮団というパーティリーダーのサムだ。ジョブは魔法剣士」


 サムと名乗った男は腹を抱えて笑っている。


「そ、そんなことありませんから」


 だがそれを否定したのはシェリーだった。


「あ?」


 それを聞いてシェリーに汚い視線を送るサム。


「アインは四天王なんかに負けませんから」

「アイン?まさか名前まであの雑魚戦犯魔道士と同じなのかお前」


 今度は大爆笑が起きた。


「白魔道士アインの雑魚雑魚戦記。お前も知らないわけじゃないよな?まさか雑魚ゴブリンに負けて悔しくて死の底から帰ってきたのか?くくく笑えるぜ」


 一瞬転生したのをバレたのかと思ったがどうやら違うらしい。


「1人だけ死んでただでさえ低かった白魔道士の名を底の底まで落としたやつと同じ名前とか無理だろ」


 笑って俺に背を向けるサム。


「じゃあな雑魚。せいぜい笑わせてくれや」


 そう言って去っていった。

 心の底から俺のことを馬鹿にしていて討伐なんて無理だと考えているらしい。


「私悔しいんだけど?!」


 シオンが俺にそう言ってきた。


「あいつメタメタのギッタギタにしようよ!」

「わざわざ言われなくてもするつもりだ」


 シオンの言葉に頷く。

 このまま言われっぱなしで終わらせるつもりはない。



 サムとやらに絡まれた後俺達は広場の方に来ていた。

 ここを通れば色々な依頼や情報が集まる酒場へと行けるからだ。

 と思ったのだが。

 何やらやばそうな事が起きていた。


「何方か!ウチの娘を助けてくださる方はいませんか?!」


 若い母親がこれまた若い娘を背負ってそんなことを言っていた。


「娘は魔王軍四天王のキングスケルトンに【死の誘い】という呪いをかけられてしまったのです!誰か!」


 しかし道行く人々は皆素通りする。

 死の誘い。確かかなり強力なデバフだ。

 付与が成功すれば確定で相手を死なせることが出来る恐るべき魔法。


 しかしその発動にはかなりの猶予がある。

 見るところまだ猶予はありそうだが。


「皆さんの中で黒魔道士、又はヒーラーの方はいませんか?!」


 必死に声を張り上げている女の人。

 俺はシェリーの顔を見た。

 

「黒魔道士呼ばれてるぞ」

「私じゃ………レベルが足りませんよ。死の誘いは高レアアイテムを使って何とか解除出来るレベルです」


 そんなことを話しているとサムが女性に近付いていた。


「お困りですかな?ご婦人」

「あ、あなたは!Sランクパーティ紅蓮団の方ですよね?」


 パァっと輝く女性の顔。


「そうですよ。うちのパーティにはSランクヒーラーがいます」


 そう言って隣にいた眼鏡の男を前に連れ出すサム。

 その様子を見て更に人が集まってきた。

 皆口にすることは紅蓮団を絶賛する声だ。


「こんにちは私はビルドと申します」


 そんな中ヒーラーが名乗ると更に歓声が沸いた。

 どうやらこのパーティーはかなり支持されているようだ。


「我々が娘さんを救いますよ」

「本当ですか?!」


 顔に光を取り戻す女性。

 しかし逆にサムは口許だけを歪めて汚く笑った。


「勿論です。お代は金貨100で構いません」

「金貨100?!!!!」


 しかし女性の顔は値段を提示されて絶望の色を浮かべ始めた。

 金貨100もあれば贅沢しなければ1年は暮らせる額だ。

 安い値段ではない。


「うちは貧乏で………」


 別に女性の服装がみすぼらしい訳では無いが、どちらにせよ一般人にとってポンと支払える額ではないのは確かだ。


「こちらとしても死の誘いの感染というリスクもありますので、これくらいは貰わなくてはならないんですよね」


 更に口許だけを歪める男。


「あいつ最悪」


 そう言ってスタスタ歩いていくシオン。


「お、おい」


 呼び止める声も無視して歩いていく。

 やれやれ………面倒事は嫌なんだがな。


「ご婦人。娘さんの命は大事でしょう?」

「そうだぞ奥さん。サムさんが娘さんの命を助けてくれるって言ってるんだ。金貨100くらい安いもんだろ」


 野次馬はサム達の味方らしい。

 そう思っていたら先に到着したシオンが口を開いていた。


「ちょっとこのブサイク!最悪なのよ!何が紅蓮団よ!」


 サムに向かってシオンはそう言いきったのだった。


「ブ、ブサイク?!」

「そうよブサイクよ!このブサイク!人の弱みに付け込んで!」


 シオンが同じことを2回言った直後だった。

 更に周りがざわめいた。


「この女は何だ?」

「紅蓮団のサムさんに向かってブサイクとは」

「それも最低だって。Sランクに向かって言うことじゃないわね」


 やはり話をかき乱しているようだ。


「Sランクが何のよ!こっちは世界最強のヒーラー様がいるんだから!」


 そう言って俺を指さすシオン。


「この人が今からその娘さんを【無償】で救います!」

「は?」


 思わず口に出てしまった言葉。

 ………何やらややこしいことになってきてしまったかもしれない。


「はわわ………大変なことになりました」


 シェリーも困っているようだったが1人だけ自信満々な顔をしているシオンだった。

 俺の顔にこの辺り一帯の視線が突き刺さる。

 やれやれ。



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