4話 冒険者ギルドに登録
どうやら助けた少女は王都の人だったらしく案内してもらった。
「うん。何から何までサンキューな」
黒髪に赤い瞳を持った少女にここまで案内してくれたことについて礼を言う。
しかし少女の方こそ両手を突き出して左右に振った。
「いえいえ!私の方こそありがとうございますですよ!」
何だか顔を赤くしている少女。
「そうだ。俺の名前はアイン。よろしくな」
そう言って手を差し出す。
「わ、私はシェリーです」
俺の手を取ってくれた。
「私はシオンよろしくね」
シオンも挨拶していた。
「それより、あなた方は何者なんですか?あんなドラゴンを石ころで倒すなんて………有り得ないですよ」
「ありえないも何もできちゃったしな」
そう言われても困る。
それにしても改めて俺のラストバトル補正がやばいくらい強いのは分かった。
「もしかして狩人の方ですか?」
「狩人?」
職として狩人というものがあるのは知っているが。
「いや、違うな」
「でも、狩人以外に遠距離攻撃出来る職はなくないですか?」
「遠距離攻撃するだけなら別に狩人でなくてもいいだろ?」
俺だってそうだ。
弓があればそれで攻撃できるしなんなら俺がやったのはただの投石だ。
別に狩人じゃないとできないなんてことは無い。
「でも、あそこまでの威力普通出なくないですか?遠距離専門の狩人以外無理ですよ」
「俺は白魔道士だ」
「し、白魔道士?!」
やはり驚いたような顔をするシェリー。
ふむ。そう言うと驚かれてしまうということはやはり底辺職らしいな白魔道士は。
「あの最弱と言われてる白魔道士なんですか?!」
「そうなんです。その最弱と言われてる白魔道士なんです」
「えぇ?!!!!!冗談ですよね?!!!!」
どうやら白魔道士の信頼は地に落ちているらしい。
白魔道士がドラゴンを倒すということはありえない事らしい。
「親が白魔道士だと外に出れないと言われてるくらいだからね」
シオンにもわざわざどれくらい白魔道士の地位が低いのか補足説明された。
「それは流石に冗談だろ?」
「いえ、親が白魔道士だったということで虐められるという事もありましたよ。白魔道士アインは大戦犯と言われていますから」
「まじかよ………」
それにしても死んだだけで大戦犯扱いは酷過ぎないか。
これがラストバトルでなければここまで言われなかっただろうか。
そう考えるとラストバトルで死んだ俺もだめだな。
「で、本当はなんの職なんですか?」
「だから、白魔道士だって」
「………本当に言ってるんですか?」
「本当だって」
「ということにしておきます。ですがいつか必ず聞きだしますからね!」
ビシッと指さしてくるシェリー。
いや、そうされても俺は本当に白魔道士だから聞き出すも何も無いんだが。
「ちなみに私は魔法剣士だよ」
「そうなんですね。私は黒魔道士です」
シオンとシェリーがお互いの職を名乗りあっていた。
白魔道士が味方をサポートする職なら黒魔道士は敵を弱体化させたり拘束させたりするのが得意な職だ。
と、こんな話をするより先にすることがあったな。
「俺はそろそろギルドに行きたいと思うが2人はどうする?」
「ついて行くよ。私もしたいし」
シオンの声。
「私も行っていいですか?もう少しお話したいので」
どうやらシェリーも来るらしい。
※
「当ギルドは初めてでしょうか?」
ギルドに入ると真っ先に受付に向かった。
カウンターにいるのは若い女性。
その人に言葉を返す。
「そうだ。初めて」
「ギルドカードはお持ちでしょうか?」
「ないよ。ギルド自体来るのは初めて」
だからそのカードとやらを持っているはずもないのだ。
次にシオンの顔を見る。
「こっちの女も初めてだ」
「なら、登録からになりますね。こちらをご記入下さい」
女性が俺たちに渡してきたカードに適当に必要事項を書き込むとそれを渡した。
「職は………白魔道士なのですか?!」
俺がそう書き込んだからか驚いたような顔をする女性。
「ダメなのか?」
「勿論ダメな訳ではありませんが」
首を横に振る女性。
「ならどうしたというのだ?」
俺がそう聞いた時だった。
「おいおい、白魔道士なんて枠ねぇのにあいつ白魔道士で登録しようとしてるぜ」
「今時馬鹿だよな。白魔道士で登録だなんて。他の職に出来て白魔道士にしかできない事なんてひとつもないのにな。つか白魔道士で登録なんて赤ちゃんでもしないわ」
俺を嘲笑う声が聞こえてきた。
やはり白魔道士は相当居場所がないらしいな。
「おい白魔道士君あれやってよ。ゴブリンに負けるヤツ。うぎゃぁぁぁぁって」
「辞めてやれよ。本当にゴブリンに負けちゃうだろ!白魔道士なんだから!」
後ろから凄まじい笑い声が巻き起こった。
女性は不安そうな顔で俺を見てきた。
「あの、適正職が分からないならこちらでお調べすることも出来ますが」
「………頼めるか?」
流石にここまで言われてはこれからの冒険者生活に問題が出そうだと考えた俺は登録は別の職でしておこうと思った。
調べなおしたらもしかしたら他の適正もあるかもしれないし。
「こちらに手を当ててもらえますか?」
女性が取り出した水晶に手を当てる。
「………適正職が………白魔道士しかありませんね」
「適正職が白魔道士しかないとかギャグセンスが高すぎるぞあいつ」
後ろからまた笑い声が聞こえてきた。
「どうなさいますか?」
「白魔道士で登録してくれ」
「これしかないなら登録しない方もいらっしゃいますが」
「いや、してくれ」
こそこそしても仕方ない。
俺は白魔道士として活動する。
「わ、分かりました」
この時俺は白魔道士が消え去った世界で、たった1人の白魔道士になったのだった。
「で、でもそちらの方が魔法剣士なら白魔道士は相性がいいですね。強い魔法剣士をさらに強化出来ますので」
フォローになってないような事を言う女性。
「おいおい魔法剣士は誰と組んでも強いぞ!姉ちゃん!可哀想だから無理やりなフォローは辞めてやれ!むしろ100が50くらいになって弱体化するぞ!なんたって白魔道士はお荷物だからな!」
また爆笑が沸き起こったのだった。
それを見て黙ってギルドを出ることにする。
いや、その前に。
「お前ら白魔道士を笑ってられるのも今のうちだぞ?懺悔の言葉を考えておけ」
「懺悔の言葉を考えさせられたらいいでちゅねー」
そんな言葉を受けて俺たちはギルドの外に出るのだった。
今に見ていろ。