13話 面倒なことになった
白魔道士が近衛騎士団団長に勝ってしまったことはかなり大事になっていた。
「こ、これはどういうことなのだ?」
「まぁ待て。悪いようにはしない」
シドと名乗った王様に俺は引っ張り回されていた。
理由は簡単だ。
俺がアイムを倒してしまったのが大事になった。
「まさか最下位職の白魔道士が最上位職である魔法剣士のしかも近衛騎士団長を倒すとは思わなかった」
そう言いながら歩くシドに続いていると会議室に通された。
「ここは?」
「貴族の老いぼれ共に説明しなくてはならないのだ。お前も付き合え」
何だそれは。
そう思いながら案内された会議室に踏み込んだ途端ざわめいた。
「シド王!これはどういうことなのですか?!」
「知るか黙っていろ。誰が口を開けていいと許可を出した」
そう言われただけで口を開いた老人は無言になってしまった。
流石王様だ。
凄まじい発言力である。
「アイン、こっちだ」
そう言われて案内されたのは王の隣だった。
「座れ」
そう促されたので座るとざわめきが大きくなった。
「あの者は何者なのだ?」
「白魔道士だろう?だが何故」
そんな声が大きくなってきた中1人の男が立ち上がった。
見覚えがある。
というより少し前まで頻繁に目にしていた顔だ。
「腐れ白魔道士………何故ここにいる」
「黙れと言った。何度言わせる」
シドに睨まれて椅子に座り直す俺の親父バーチェ。
「皆混乱している事だと思う。今何百年も続いた常識が木っ端微塵に砕かれたのだから」
そんな中立ち上がってそう口にしたシド。
この部屋の視線が全て彼に集まった。
「白魔道士はこの何百年もずっと産廃の最下位職と言われてきた。そしてそれは行き過ぎて今では白魔道士として活動している者は0だった程だ。それは理解していることだろう?」
この部屋にいる全員が頷いた。
「俺だって正直こいつが負けると思って御前試合を行った。しかし結果は圧倒的だった。白魔道士が最強職の魔法剣士を倒したのだ。圧倒的な差を見せつけて」
それを受けてまたざわめき始める室内。
「有り得ない。ありえるわけが無い!」
「そうですよ!白魔道士が魔法剣士を………しかも何百年の1人の天才と言われているアイム様を倒すなんて!」
アイムの信頼を感じる言葉ばかり聞こえてくる。
それだけ魔法剣士という職がどれほどのものなのか感じてしまう。
「だが実際に起きてしまった。こいつに魔法剣士としての才能がないのは魔剣神威が証明した。握った者の腕を切り落とそうとするなどそれ以外に考えられないからな。その事から本当に白魔道士だと俺は考えている」
更にザワつく室内。
大変なことになっているらしい。
「どうなさるつもりですか?シド王よ。最強職の魔法剣士が最下位職の白魔道士に負けた、となれば今出来ている序列が完全に崩れてしまうことになりますが」
そんな中1人の菫色の髪を持った男が立ち上がる。
「そのせいで俺も頭を抱えているのだ」
どうやらあの出来レースはアイムが勝って終わりだったらしいし。
しかし俺はやってしまったということか。
「ギルドマスター」
その時シド王はギルドマスターに声をかけた。
「こいつに他の職の適性はないのか?」
ここにいたギルドマスターは沈鬱な顔を浮かべたあと首を横に振った。
「………ありません。ギルドの道具は全て王に用意していただいた天上のもの。その決定を疑うことには私には出来ません。故に断言します。その男に『白魔道士以外の適性はない』と」
シド王がその場で崩れるように椅子に座り込んだ。
その後に笑い出す。
どうしようもないから笑っているような感じだ。
「ははは………国民にどうやって説明すればいいのだ。まだ他に適性があるならまだしも、完全に白魔道士の奴が魔法剣士に勝ったなど………これまで築き上げた魔法剣士の信頼は間違いなく瓦解するぞ」
呆然とそう口にしたシド王。
ふむ。俺はみんなが築き上げてきたものを崩してしまったらしい。
「面倒事は嫌だし俺が負けたことにしてくれてもいいぞ?」
そうシド王に言ってみたが。
「無駄だろう。情報の漏洩は避けられん。それならば真実を公開した方がいい。それにアイムが勝てなかったキングスケルトンを倒したのはお前たちのパーティだ。多くの者が目にしているから、あれは誰なのだとなってしまう」
と、そうらしい。
ふむ。それなら困ったな。
「ですが、どうするおつもりですか?魔法剣士の信頼を失うとなると本当に混乱しそうなものですが」
「………まだセーフだ」
そう答えるシド。
「現状白魔道士として活動しているのはこいつだけだ。こいつが異常なだけで他の白魔道士はこれまで通り底辺ということでいこう。それなら魔法剣士の優位性は失われない。前ほどの信頼はないだろうが1番いい落としどころだろう」
そう口にしたシドは室内の貴族の顔を見た。
「そして俺はこいつの異常性を証明するためにある依頼をしたいと思っている」
そう告げてから最後に俺を見たシド。
「魔王を倒してくれ」
「え?」
室内を包み込む静寂。
「魔王を倒してくれればお前の強さは証明出来る。その後に俺がこいつが強いだけだと言えばそれで解決する問題だ」
「やだよ」
短く答えた。
「は?」
ポカーンと口を開けるシド。
「俺が白魔道士になったのはできるだけ味方の支援だけして戦いたくないからだ。何でわざわざ魔王を討伐しにいかなくてはならないんだ?」
「命令だ」
「ふむ。それは困ったな」
命令と言われてしまえば困るな。
「………仕方ないな。分かったよ」
「悪いな。のんびり進めてくれたらいい」
そう答えるシド。
それなら別にいい。
「なら、正式にお前に頼むことにするぞ白魔道士」
そうして話はまとまったのだった。
それにしても魔王の討伐なんて面倒臭い話になってしまったな。




