捏造の王国 その18 ユーはなにしにニホンへ?ドランプ大統領ニホン訪問の裏側~終身雇用崩壊&年金破綻、その他全部まるごと隠しちゃえ!
米のドランプ大統領の訪問で官邸はおもてなしの準備で忙殺。しかし、たいした外交的意味がないことを疑問に思ったニシニシムラ副長官。シモシモダ副長官に尋ねると、彼は訪問の裏の目的を語りだした…
初夏どころか真夏を思わせる陽気が続く今日この頃、ガース長官らは相変わらず策謀、陰謀、隠蔽、そのほかもろもろに忙しかったが、このところの忙しさは尋常ではなかった。
「ドランプ大統領のご機嫌はどうか?とアベノ総理もアトウダ副総理もしきりに気にしていらっしゃいます。先日のアベノ総理とのゴルフでは、プロゴルファーも呼んでおもてなしをしたのですが。しかし、ドランプ大統領がニホンに来てゴルフや相撲観戦やらで、予定は盛りだくさんで大変ですよ。しかし、日程はあらかじめ決まっていたとはいえ、なんだか予定より派手になってませんか、ガース長官」
タニタニダ副長官のボヤキにガース長官は苦々しそうに答えた。
「仕方がないのだ。ドランプ大統領に最大級の歓迎をせよとのアベノ総理のご命令だ。もっとも太り気味のアジア人がぶつかる相撲を大統領が本当に喜んでいるかはわからんが。ともかく、できるだけ派手ににぎやかに、警戒は厳重にしなければならん」
「それにしても、何かの政治的宣言やら協力の成果の発表が公式にあるわけではないですが」
とニシニシムラ副長官が不思議そうにつぶやく。
「まあ、なんというかアベノ総理の招待に応じたというのが主な理由なんだろう、ただそれにしても派手に騒いで警戒は厳重というのは。まさか…」
「シモシモダ君、わかっているのなら黙っていてほしいのだが」
勘の良いシモシモダ副長官の言葉を制するガース長官。有能な部下をもつというのは、通常悪いことではないのだが、ここニホンにおいてはそうとは限らない。
「はあ、そうですか、わかりました」
と気の抜けたような返事をするシモシモダ副長官。しかし状況がよく呑み込めていないニシニシムラ副長官はそっとシモシモダ副長官に尋ねる。
“どういうことなんだ、僕はいま一つわからないんだが”
“つまり、お祭り騒ぎの延長だよ。リベラルサイドのデモやらに規制をかけやすくするためでもある”
“え、なんで?だってジコウ党は予算の審議拒否をやっているから、委員会もろくにひらかれない。アベノ総理が失言もしないし、他の閣僚だって突っ込まれることはないだろ。第一共産ニッポンとか質問時間自体があんまりないからさ、最重要案件ぐらいしか質問できないし”
“はあ、忖度テレビやネットニュースしかみてないのか?新聞も読めよ、副長官たるもの黄泉瓜からレッドフラッグまで読みこなすの当然だ。いやネットでもやっていたぞ、”終身雇用はもう守れません“に”年金だけではだめです貯金を“に、実質国有林払い下げ法案に”
“読んでるし、知ってるよ。でもそれがどうしてドランプ大統領への過剰なおもてなしの根拠になるんだよ”
“ニシニシムラ君、ほんとうに君はお坊ちゃんというか”
“バカにしないでくれよ、君だってエリートだろシモシモダ君。で、どういうことなの?”
“つまり終身雇用がなくなるということは、事実上、ニホンの安定した雇用システムはなくなるということだ”
“そうだね、でも諸外国じゃそれが普通なんでしょ”
“野党どもは雇用の安定性がなくなる、今までよりも格差が広がるという。で、また共産ニッポンやらが大反対。消費税増税に加え、さらにデモだの反対集会が多くなるのが予測される”
“確かにメーデーとか、カイゲンの連休でもっと少ないかと思ったけど、そもそも連休が連休になってない人が多かったって、僕らもそうだけど”
“上級でも超有能なほうが忙しいということだろう、休む奴らの仕事の肩代わりのためにな。もっとも、終身雇用の崩壊は別の問題も引き起こす。つまり今まで正社員だった奴等の解雇がしやすくなるということなんだが、ニホン企業にとっても後々問題となりかねないんだ”
“能力あるなら他にいけばいいってことなんでしょ、どうして企業の問題に?”
“その通りだが、そうなったら誰が今までの低賃金、経営者に甘く従業員に厳しいルールで働くんだ。第一、今までのバイトテロとか見てみろ、職場に不満をもった連中が顔が世界中にさらされ、下手すれば逮捕されるのがわかっててもやるんだぞ”
“あ、そうか、会社や企業に忠誠なんか尽くす必要はない。かなりドライになるね。引き抜き当たり前になって、企業は引き留めるために”
“高額な賃金や権限のある地位などを用意できなければならないってことだ。今までのように死ぬまで世話してやるから黙って会社に奉仕しろ、は通用しない”
“江戸時代の丁稚から番頭、そして暖簾分けしてあげましょう、みたいな感じだったからね、ニホン企業のやり方って。一生面倒、結婚も住居も世話するから、会社に忠義を尽くせって
“ドヨタが一番そういうやり方だが、他の大企業も似たり寄ったりだ。それが無くなれば有能な社員はどんどん流出しかねない。金だけの問題でなく、上が無能ってことも退職理由のランキングで上位になっているからな”
“世襲社長や取り巻きはたいてい無能のオベッカ太鼓持ちだっていうからね。それじゃ能力の高い人ほどやりきれないよね。今まではクビにならないって保証があったからいいけど、それがなくなって昇給も退職金もないなら辞めちゃうよ”
“おまけに100年安心とかいっていた公的年金もあのざまだ”
“キンユー庁が全然足りないから自助努力って。それは確かに酷いって言われるよね。何十年も前に余ったからって、バンバン保養所みたいなのを建ててたくらいなのに”
“そういった事業は、ほとんど大赤字で大損失をだしてるよ。それでも今まではジコウ党、とくにソンカ派は『年金破綻はありえない』と主張してきたんだ”
“そうだよね、破綻なんかしない、大丈夫だから払えって半強制的に徴収してきたんだよね”
“子供が払ってなくて督促状がきたが、わけわからなくて無視してた世帯主の父親が銀行口座から何百万も差し押さえされたっていうケースもあったしな。厚生年金は天引き、国民年金も近頃はほぼ強制徴収、税金みたいな、いやほとんど税金だな”
“それがもう年金を十分払えませんからね、って詐欺っていわれちゃうよ。でも本当に不足してるんだから仕方ないんじゃ”
“ニシニシムラ君、わがアベノ政権下では、年金資金で株をどんどん購入してきたことを忘れたのか、アベノノミクスの裏の柱の一つだぞ”
“そ、そうだったね。でも買っても、売ったら、売りすぎになって株価が暴落するし、株価支えだけで、ついに連休明けから下がりになるし。ニホンのせいじゃなくて中国とかのせいだけど”
“外国の不景気がこちらに倍になって影響する状態がそもそも問題なんだ。つまりは株価があがったが、それは年金などの資金を投入しただけで”
“それでニホン企業の株が上がって配当金がある人間、アトウダ副総理とかドヨタの社長一族とかはよかったけど、結局年金のお金は実質目減りしちゃったということなのか”
“しかも目減りが半端ではない。他にも年金の受給資格がある人間のデータが消えた、いわゆる消えた年金も全部調べられなかったし、そのほか年金関連組織の個人データ流出なんかもあっただろう”
“そうだね、それに昔の事業大失敗の件もあるし。それを決めたジコウ党の政治家や官僚、今の年金事務に係わっている官僚や天下りの連中がお咎めもロクになく高額の給与貰ってるとしたら?そいつらの給与の原資も年金で、そういう滅茶苦茶をやった挙句に年金が不足しましたっていわれたら”
“デモどころか暴動、革命も起こりかねんよ、欧米諸国なら。中国でも景気が悪いから消費税にあたる税を減税したくらいだ。一生安定だったはずの保証制度、終身雇用も年金もなくなるとなれば、『もうニホンなんてどうなってもいいわ、レジスタンスだ、革命だ、新国家だ!』になりかねない”
“そうだよね、安定、安心だからジコウ党だったからね。その根底が崩れたら、今の政府じゃないほうがいいってなりかねないし”
“下手すれば今のニホン政府がひっくりかえる暴動が起きかねないんだ。幸か不幸か野党、共産ニッポンでさえ、そこまで過激な行動はしないようだが、リベラルサイドが一様に足並みそろえて行儀良くしてくれるとは限らない。おまけに国有林の実質払い下げ法案だの水道法だの、漁業法だの庶民が確実に苦しむことになるような法案がジコウ党の賛成多数で通っているうえ、そして消費税増税も控えているし”
“このままいっても生活破壊されるならニホン政府を倒せってなってもおかしくないか。それで”
“そうだよ、だからマスコミはメイジの党のバカ阿保議員と議員候補に焦点をあて、総理とちょっと親しいと勘違いしたボケ出版社のアホツィートを秘かにながし、ドランプがきたとお祭り騒ぎをしているわけだ”
“マンマルにパカセガワか、あとケンケンジョウ社長だっけ。でも彼らも総理のお友達じゃ”
“もうロクに利用価値もないしな。マンマルらのことはメイジの党のマツイダも承知だし、ケンケンジョウやモモタンも、そろそろヤバくなってきたということだろう。あいつら調子にのりすぎて、このままだとアベノ総理に不利なりかねないし”
“サクラを愛でる会に招待されたのにねえ”
“そのサクラを愛でる会の関係資料が廃棄されたこともリークされて、さらにリベラル側が騒いでるんだ。もう毎週、デモ、抗議、それに新党たちあげたヤマダノが、全国行脚やってるから”
“テレビやら新聞やらをドランプ大統領一色にして、ついでに警護の名目でデモや集会を規制しようってことなんだね。だけど…なんだか虚しいね。お祭り騒ぎで不味いことを隠しつづけようとするなんて、バレないわけないのに”
ニシニシムラ副長官がそっとため息をつく。シモシモダ副長官も
“そうだな、こんなこと、いつまでも続くわけはない”
“ガース長官が総理になれば、少しはマシになるかな”
何気ないニシニシムラ副長官の言葉にシモシモダ副長官は
“どうかな…”
答えながらドクダミ茶を啜るガース長官のほうに目をやった。採れたてのドクダミを味わうガース長官の眼は虚ろで冷たかった。
お祭り騒ぎはいつかは終わります。その後片付けと現実の揺り戻しの反動はなかなか大きいものです
(祭りのあとの掃除は大変なんですよね)