1-4.Four leaf clover
「レキ、左翼のアルベルト准将に協力を要請してみようか」
「そうだな。天使からの頼みなら、断る気も起きないだろう」
「もう、からかわないでよ。天使との共通点なんて髪の色だけなんだから」
「名前も、だろ?」
僕たちの首都星デミトリオスには「金の髪の天使が乗る艦は神にしか沈められない」という言い伝えがある。
大昔は洗礼を受けた金髪の幼子を天使と見立て共に出陣していた史実があり、実際その天使を乗せた艦は最後まで沈むことはなかったという。
「おまえは自分の価値をわかってないな」
レキシアはあきれたように苦笑した。
自分の価値……? 訊き返そうとしたとき、アルベルトから短い返信が届いた。
我、協力す――どうやらアルベルトもネスラーの作戦に不満を持っていたようで、レキシアの読みどおり快諾を得られた。
良かった。僕らだけで立て直すより両翼から攻めたほうが効率がいい。
「軍法会議ものだねぇ」
「勝てばいいだけだ」
レキシアは事もなげだ。でも、決して大言壮語じゃない。経験に裏づけされた堅実かつ揺るぎないもので、僕を、そしてつき従う部下たちを納得させ、奮い立たせる。
「上手くいくよ。必ず。ね、レキ?」
フローティングディスプレイから顔を上げた僕に、レキシアはほんの少し腰をかがめ耳打ちした。
「首都星デミトリオスに戻ったらお前の好きな酒をおごってやる」
毅然とした司令官顔でつぶやくけれど、まぎれもなく私語だ。そのギャップがほほえましくて、僕は早く決着をつけなきゃねと笑顔で返した。