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星の海を翔る  作者: アラタ
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1-2.Four leaf clover

「戦闘での機動力を温存するにはやむを得ないな」


 レキシアは黒髪をかき上げため息をついた。

 長身に黒の軍服が栄える。華美な装飾のないデザインでも、レキシアが着れば遠くにいても目を引く。容姿もさることながら内面からあふれる才気ゆえだ。


 僕はレキシアの自信満々に敵を見すえる強気な眼差しが一番好きだけれど、いまみたいに憂いをおびた伏し目がちな横顔も好きだった。レキシアをわずらわせるすべてから、守ってあげたくなるからかもしれない。


 なんて言ったら嫌な顔するだろうな。年齢も階級も下の僕がどうにかできるほど、レキシアの行く手を阻む障害は小さくないのだから。


 彼は僕よりひとつ上、二十三歳という若さですでに第一宙域中央政府軍――通称“第一軍”(プライマリ)の中将、分艦隊の司令官で一個艦隊の約半分、六千隻の艦を指揮下に置く。


将来を嘱望された逸材で才智に長けた戦略家でもあり、輝かしい功績は数えきれない。


 けれど、その活躍に反感を持ち、嫉妬の目を向ける者は少なからず存在する。自らの持たない優れた才能と特質を称賛するどころか妬み、足を引っ張ろうとするのだから手に負えない。


 それでもレキシアは自棄になったり卑屈になったりしないし、悪意や小細工に打ち負かされるほど弱くも脆くもなかった。


 夢に向かってどこまでも真っすぐに生きる姿は凛として強く、僕にとってまぶしくさえある。


「ミハエル、頭を打ったんだぞ。ふらふら歩くな。ここに座ってろ」

「司令席に座れるわけないでしょう」

「命令だ」

「……はい」


 反論は不発に終わり、やむなく僕は指令台(コマンドフロア)の階段を上がった。司令官補佐とはいえ、レキシアが不在でもないのに腰かけるのは気が引ける。


 こんなとき力不足を痛感する。

 結局、守られてるのは僕のほうなんだって。

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