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彼と彼女のなりゆき  作者: キョウ
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道香サイド 9

 まさかまさか、こんな所を日向さんに見られるなんて……。

 店を出て、翔が待ってるという大通りまで、理人は、足元がおぼつかない私を抱えるように支えてくれていたんだけど、そんなの一目見ただけでわかるわけもなく、丁度彼女がカフェから出てきた所で、くっついてる私達を彼女は見た……。

 驚愕の顔を張り付けて固まってる……、と思った瞬間、彼女はくるりと背を向けて早足で去って行ってしまった。咄嗟に理人が「奈都!」と呼んだけど、聞こえてたのか、聞こえてなかったのか……。

「理人!追いかけて!!」

 さっきまでふわふわしてた頭が、とたんに回り始めた。

 翔から、理人が猛烈追いかけていて日向さんは戸惑って逃げていることは聞いている。それまでも多分誤解している日向さんに、更に追い討ちをかけるようにこの状況を見せられたら、完全に間違った認識になってる。

「三枝、大丈夫。後で行くから、とりあえずお前は翔と帰れ」

 珍しく、動揺しているのか理人の顔が固い。


 大通りに出ると、翔の黒いスポーツカーが停まっていた。翔は車の脇に立って、スマホをいじっている顔を上げてこちらに気づいた。

「翔、三枝を頼む」

 手短に言って、理人はものすごい勢いで走り去って行った。あんなに走ってる所、初めて見たかも……。

 状況を理解してない翔が「どうした?」と聞いてくるので、ざっと説明した。

 そっちの出来事に気をとられて、昨日翔が連絡してこなかったこととかをすっかり忘れて、普通に会話してる。

「ま、多分大丈夫だろ。そもそも誤解させるようなことした理人が悪い」

 翔はあっさり言って、助手席のドアを開けた。

 日向さんを見て、その瞬間は酔いが覚めたけど、やっぱり酔っぱらってる私は、この場で翔に何か言うでもなく、そのままシートに滑り込んだ。翔がドアを閉めてくれる。

 瞬間訪れた静寂に、ホッと息を着いて前を見たら、今度は私が固まった。


 車の前を通って、助手席側から運転席へ移動する、たったそれだけの間に翔は綺麗な女性に声をかけられていたからだ。

 様子を見てると、どうも知り合いみたいだった。ちょっと腰の低い翔の対応で、多分以前のクライアントだと思われる。

 その、キレイにマニキュアを施した手が、翔の頬にかかったのを見て、車から出た。

 すぐに気づいた翔が、こちらを見たのは分かっていたけど、さっさと後ろに停まっていたタクシーに乗り込んだ。


「えっ、え?」

 いきなり前の車から降りて、勝手に乗ってきた客に驚いている運転手さんに「すぐに出して」と言った。丁度よく後続車がいない右にするりとタクシーは動き出した。

 焦った翔がこっちに走ってきて「道香!」と呼んでるのが聞こえたけど、知るもんか!

 今夜は男性は二人とも女を追っかけるがいい。

 案の定、スマホは鳴らない。

 マンションに来るつもりだ……。

 いや、また来なかったらどうしよう。

 っていうか、私、こんな逃げてるのに来て欲しいの?


 そもそも、あの場面でどうするのが正解だったのかわからない。

 助手席でじっと待ってて、戻ってきた翔に「あの人誰?」って聞けば良かったの?

 車から出て二人の方へ行って、「お世話になっております」とか言って彼女に私の存在を知らせれば良かったの?

 もう、酔ってるせいなのか、翔のせいなのか、思考がまとまらない。

 タクシーはそのまま私をマンションまで運んだ。



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