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彼と彼女のなりゆき  作者: キョウ
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翔サイド 7

 理人達の様子を見てきてもらった道香から来たメールには

「ごめん……。日向さんに誤解させちゃったかも」

 と書いてあった。どういうことだ?

 とりあえず理人からは、今日は日向さんと倉庫を片付ける、という連絡があったから、大丈夫だとは思うが……。

 道香も日帰り出張と言っていたから、多分今日は忙しいのだろう。詳しいことは後で聞くことにした。

 俺も急遽、例の相楽に会わなければならなくなった。本気で依頼してくるとは思わなかったし、まさか高科教授からの後押しがあるとは想定外だった。

 恩師の頼みじゃ、断れないしなー……。

 相楽と高科教授がどんな関係かはまだ聞いていない。今、考えてもしょうがないことは後回しにして、とりあえず目の前にある今日の業務に取りかかった。


 *****


「アタシ、東海林 要(とうかいりん かなめ)1年よ。よろしくね……、って、何よ?その二人の目付き!そんなにおネエが珍しい!?」

「いや、そっち……も突っ込みたい所だが、そのファッションもすげーなー、と思って」

 思ったことをそのまま口にして、気を悪くさせたか?と思ったら、突然大爆笑された。

「あっはっは!何、アンタ、率直すぎー!」

 涙目になりながら、彼(彼女?)が言うには、大抵の人はポーカーフェイスを装って服のこともおネエってこともスルーされるのが普通らしい。

「気に入ったわ!この子の彼氏?アタシ、この子をコーディネートしたいんだけど、いいかしら?」

「ああ!そうそう、彼氏彼氏」

「ちょっと!翔!!」

 焦ったように、道香が俺の腕を掴んだ。

「だから、コーディネートはいいけどコイツを狙うのは無しな」

「やだ、それは大丈夫よ。安心して」

 道香を見ると、あっけにとられた顔をしてる。

 でも、俺が何をしたかったのか理解したようで、今のやりとりにこれ以上口を出して来なかった。


「コーディネートって?」

 お互いに名乗って、要も席に座ったところで改めて聞いてみた。

「んん?ミスコンに出るんじゃないの?」

「や、それが断ろうと思ってて……」

「なんで?」

 あっけらかんと要。

「なんで……って、容姿も性格もミスコンなんて無理で……」

 道香が言い終わらないうちに要が言った。

「なに言ってんの?さてはこの大学のミスコンのこと知らないわね!」

 アフロの中のオヤジ顔がニヤリと笑った。


「ここのミスコンはね、よくあるミスコンとはだいぶ違って、仮装大会みたいな感じなのよ」

 要の話だと、どうやら美と教養を競うようなコンテストではないらしい。

「だから、出場者の選考もかなりゆるくて、立候補はもとより、推薦でもほぼほぼ参加出来るのよ」

「じゃあ、もしかして参加者すごく多いのか?」

「アタシが聞いた昔のミスコンが、めちゃくちゃ人数多くて、もう、パレードにして大学構内練り歩いた……ってきいたけど……」

「ぶは!なんだそれ」

「だから、ミスコンによくある優勝者が就職に有利だとかスカウトが来るだとかはないの。その代わり、ファッション業界では別」

「というと?」

「仮装、って言ったでしょ。モデルだけがメインのイベントじゃないの。大抵はチームを組んで、服も一からデザインして、メイクも仮装によっては特集メイクの域までやるところもあるし、総合評価で優勝者が決まるの。で、そのチームのメンバーはファッション業界とかイベント会社とかからのスカウトが来たりするわ」

 さっきまで黙って聞いていた道香が、おずおずと言い出した。

「あの……、でも、私そっち方面興味ないんだけど……」

「アタシにはあるのよ!!」

 食いぎみに来た要は、目がマジだった。

「詳しいことは省くけど、アタシ、メイク関係やりたくて専門行きたかったんだけど、ちょーっと事情があって美大に来ちゃったのね。だ、か、ら、こういうチャンスは逃したくないわけ!」

 道香と二人で顔を合わせる。

「いやあね、その二人しか通じあってない感じ。わかってるわよ、それはアンタ達には関係ないわね。でも、見つけちゃったんだもの、アタシの『ミューズ』を!」


 *****


 そうだった。最初に俺らに『ミューズ』を持ち込んだのは要だった。

 創作のインスピレーションを刺激する存在……。

 要にとっては道香がそうであるように、理人にとっては日向さんだった。

 理人なんて、最初に聞いた時には要のことを半目で見てたくせに、あのポスターの日向さんを見たら急に覚醒したのは面白かった。


 俺には特にミューズはいない。道香のことは好きだが、インスピレーションの元か?といえば否。どちらかというとやる気の元って感じかな。俺的には結構道香のことを日常的に考えてるつもりなのだが、当の本人にあまり伝わっていないようだ。

 その証拠に今現在、「愛してるよ」と言ったのに返ってきたのは強烈なビンタだった。





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