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彼と彼女のなりゆき  作者: キョウ
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翔サイド 6

 突然休講になったので暇を持て甘し、いつも陣取る学食の定位置のテーブルで、1人で本を読んでいた。

 ふと目を上げたら、入り口から道香が泣きそうな顔でこちらにやってくる所だった。

 目の前まで来ると、がくんと椅子に座り

「翔、どうしよう~」

 と、泣きついてきた。


 今まで、道香はなんでも自分で解決しようとするタイプだった。

 男に言い寄られるのが嫌なくせに、俺らに言えば容易く追い払えるのに自分で対処しようとする。

 理人によると、ゼミの担当も自分の分はキッチリこなして、他人のすら手伝うくらい。

 わからないことがあっても、誰かに聞くでもなく自力で調べたり、女子には重いであろう資料でさえ自分で運ぼうとする始末だ。

 それが、こないだの一件依頼、俺には少しずつだが頼ってくるようになった。

 本人は無自覚なのかもしれないが、それが嬉しい。


「何がどうした?」

 無言で1枚の紙を渡された。

 見てみると、今度の学園祭で行われるミスコンの出場決定のお知らせだった。

「道香、ミスコン出るんだ」

 ちょっと意外で聞いてみたら、涙目で睨まれた。

「私が自分で応募するわけないでしょお!」

 よくよく聞いてみると、ミスコンの選手の選出は二通り方法があって、1つは立候補、もう1つは推薦枠というのがあるらしく、一定の数の推薦があれば選手として認められる、ということらしい。

「道香、人前に出るタイプじゃないだろ……」

「クラスの友人達が面白がって推薦して、それに男子も乗っかってきて……、こんなことにぃ……」

「辞退すりゃいい」

「う……。そうしたい……けど……」


「ちょっと、アンタ、ミスコン出るの?」


 突然、テーブルの横を通りかかった人物から言われた。

 道香と二人でそちらを見て、二人とも止まった。

 そこにいたのはピンクのアフロヘアーに、白黒のブロックチェックのサテンシャツ、ベルボトムのストーンウォッシュのジーパンを着こなしているおじさんだった。

「すげー、かっこ……」

 呟いた俺をスルーして、真っ直ぐ道香に向かってソイツは言った。

「ミスコン出るなら、アタシにコーディネートさせてくれない?」


 *****


 理人のミューズが見つかった、と喜んでたのもつかの間、ミューズである日向 奈都(ひゅうが なつ)はなかなかにやっかいな過去を持つ子だった。

 俺がテレビの密着取材を受けることになって、まさかそこで日向さんのトラウマになった人物と会うとは思わなかった。

 以前から、妙にメディア関係の仕事を避けている節は見られた。あの相楽とかいう奴と接触したくなかったのに、仕事とはいえ会わせてしまったのは申し訳なかったと思う。


 と、同時に、今までほとんど女子に反応を示さなかった理人が、あんなに執着するとは想像してなかった。

 理人には言えなかったが、探し続けてる時は、雲を掴むような話で見つかるとは思ってなかった。偶像崇拝のように一途に思い続けている友人を、どこまで見守ってやればいいか考えたりもした。

 見つけるまで長かったから、もし見つけたらどうなるんだ?とは思ってた。

 今まで女性にアプローチしたり、デレたりする理人なんて見たことなかったからそういうことが果たして理人に出来るのか?と思ったがそれは杞憂だった。逆に暴走ぎみだったしな。

 真っ直ぐぶつかって行く理人を見て、ちょっと羨ましくなった。


「道香、悪いが頼まれてくれるか?」

 テレビ局で相楽と鉢合わせた日向さんは普通じゃなかった。

 もちろん理人が追いかけたが、「直帰する」と連絡があった後は何も連絡してこないので、心配になった。

 俺は別の仕事で動けなかったので、道香に様子を見てもらいたかったので電話してみた。

『いいけど……、私、明日日帰り出張なのよ。早朝訪ねても、彼女いないんじゃない?』

 いや、俺のカンでは多分理人は日向さんにずっとついてる……。

 あの執着っぷりと、あの動揺っぷりを見てたので、理人が彼女を離さないであろうことは予測出来た。

 でもまさか、日向さんが道香と理人の関係をそこまで勘違いする、とまでは思ってなかったのは俺が浅はかだった。

 そのせいか、二人っきりにしてやったのに何の進展もしてないとか……。理人、何やってんだー。









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