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彼と彼女のなりゆき  作者: キョウ
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翔サイド 1

 道香と初めて会ったのは、大学1年生の時。

 学生生活も慣れてきて、じわじわ夏の気配がしてきて、みんなが薄着になってきた6月末くらいだったと思う。

 それまでも、噂だけは聞いていたんだ。

 高科教授のゼミにすごい美人がいる、っていう。

 まあそんな、噂なんて尾ヒレが付いたり、個人の好みが影響するから、たいして本気にしてなかったし、入学当時から仲良くなった理人の周りにはウジャウジャ女の子が群がってたから、その中にもそれなりにかわいい子はいて、「噂のすごい美人」にたいして期待したりもしてなかった。

 それに、美大ならではなのか、四年生達の洗練されたオシャレな大人っぽい人達を見ていると、「すごい美人」ってのがこないだまで高校生だった俺らの世代にいるのか疑問なところもあった。


 講義終わりに携帯が震えた。

 見ると理人からで「ゼミに来い」と一言。

 そっけなさすぎる。

 今日は理人とメシ食いに行く約束をしたのだが、どうやら間に合わないらしい。

 とりあえず、言うとおりに高科ゼミの部屋に向かった。

「失礼しまーす」

 と部屋に入ると、いきなり目の前に美人がいた。


 納得。

 これは、かなりの美人だ。

 こちらをちょっとビックリした顔で見る瞳は、黒目がちでパッチリ大きい。色白の肌、鼻筋の通った整った顔、柔らかそうなウェーブした肩までの髪、女性にしては身長が高めだが、柔らかな曲線の体つきは抜群にスタイルがいい。

 特に目を引いたのが、凛と伸びた姿勢。

 一瞬でそれを観察したが、目線が合ってペコリと頭を少し下げた動きがかわいかった。

「如月くん、いますか?」

 内心、かなりドキドキしたのだが、それを隠して普通に接する。

「珍しい、理人の友達?」

 珍しい?

「そっちこそ、珍しい。理人を呼び捨てにする女」

 お互いに見つめあって、ぷっと吹き出した。

「これじゃ、理人がどんなやつなんだっていう話だよな」

 俺が言ったら笑った。

 うわ、笑ったら美人というより、かわいい。

「俺が何だって?」

 本棚の後ろから声がした。

「理人、いるなら言えよ」

「悪い。今、丁度手が離せなくて……」

 と、言いながら出てきた所で俺を見て止まった。

 まあ、そうだろうな。

 昨日、髪を兼ねてからやってみたかった金髪にし、今日は更にツンツンと逆立てている。

「……。お前、戦闘能力上昇したのか?」

「……。しっぽ生えてねぇから」

「理人、この頭初めて見たの?」

 野郎二人のバカ話に彼女はするりと入ってきた。


「ああ、コイツは神沢翔(かんざわ しょう)。昨日までは普通に人間だった」

「今日も人間だっつの」

「で、彼女は三枝道香(さえぐさ みちか)。もちろん、人間だ」

「わかってるっつの」

 三枝さんと俺の間で理人が紹介してくれた。

 改めて彼女を見る。俺たちのやりとりを見てクスクス笑ってる彼女は、ものすごく可愛かった。

「同い年だろ。翔でいいよ」

「私も道香でいいわ」

「いいんだ?」

 理人が道香を見た。

 "いいんだ?"

 良くないこともある、ってことか?

 二人でアイコンタクトを取ってるのが、ちょっとイラっとした。


「道香って、彼氏いるの?」

 ファミレスで理人とお互い課題をしつつ飯を食いつつしながら聞いた。

「……。何?惚れたの?」

「かわいいよな」

「三枝をかわいいと表現した奴はお前が初めてだ」

「そう?なんでだ?」

「さあ?大抵の奴は「美人」だとか「ナイスボディ」だとか」

「ふーん。理人は?どう思ってんの?」

「俺?………………素直にひねくれたやつ?」

「なんだそりゃ」

 この理人の表現が一番しっくりくる表現だと、後々思うことになる。


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