表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
比 翼 恋 理  作者: 本橋 一真
1/1

〜プロローグ〜  邂逅


“事実は小説よりも奇なり”


その言葉通りの体験をした自分は、一小説家を目指す者にとって幸運なことなのであろうか……。




『―――ひぃ君、ずっと……ずっと一緒だからね―――』




()っ……!!|」

頭部の痛みでフッと我に返る。


「そうだ、俺は……」

目の前には割れたフロントガラス。大きくひしゃげたボンネット。


さっきのカーブで対向車と衝突して―――


ドアを開け外に出てみる。肌を刺すような寒さだ。

吹雪で数メートル先もぼやけて見える。


ザクッ……ザクッ……雪を踏み固める俺の足音だけが雪の山道に不気味に響く。

体が重い。頭から出血しているようだが、なんとか歩くことはできた。


「……相手の車は?」

何歩か歩いた所で俺は愕然とした。


ガードレールを突き破り、5メートルはあるであろう崖下の河原にに小さな車が横たわっていた。


「マジ……かよ……」

なんとか崖を滑り降り、車内を確認した。


運転席の男は血だらけだった。

「大丈夫ですか!!」

大丈夫ではないのをわかっていながらも、そう叫びながら窓ガラスをバンバン叩く。が、反応は無い。

ドアを開け引きずり出そうと試みたが、ドアはピクリとも動かない。


――他に同乗者は?

助手席には……いない。

後部座席には……


………いた!!


まだ中学生くらいであろう女の子が、ドアに寄り掛かるようにして気を失っていた。


ガチャ……


今度はドアが開いた。

女の子が外に倒れてこないようゆっくりドアを開け、そっと抱き抱えた。


「おい! 大丈夫か!?」

だらんと垂れたその子の頭を抱え、顔をこちらに向けさせる。


「……………!!!!!!」


俺は言葉を失った。


そこにいた少女は……



    俺の初恋の人だった。



「おい! 大丈夫か!?」「救急車呼んでくれぇ!!」

上の方から何やら騒がしい声が聞こえた気がしたが、俺の頭には何も入ってこない。



ズキン!!

再び頭部を痛みが襲った。

ドクン、ドクン……速まる心臓の鼓動。

段々と目の前の少女の顔が霞んでいく。

意識が遠のいていくのがわかる。


「俺は……死ぬ……のか……?」



「……か………れ……ん…………」



そして俺は少女を抱いたまま気を失ってしまった。




この時の俺は、これから訪れる運命をまだ知る由もなかった。

いや、心のどこかで予感はしていたのかもしれない………。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ