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試験

 学生の話し声にかすかに聞こえる水の音。少し長めの廊下をコツコツという音が鳴る。高い位置にある日の光が廊下の窓から入り込んで周りを明るく心地よい暖かさがある。季節で言えば春のような眠くなる優しい暖かさ。

 そこを三人が歩いている。


「試験の内容を話しておきます」


 そういって前を歩く男性、グラス先生がこちらを少し振り返りながら話を始める。

 試験の内容についてなので周囲の俺にとっては珍しい光景を見ているわけにもいかない。

 真剣に聞くように注意を先生に向ける。


「試験にて測るものは3つ。1つは魔力量。これは専用の魔法具を通して魔力などを測る簡単に終わるものです。ここで魔力の属性や質もわかるようになっているので知らない場合でも安心してください。簡単なあなたの現在の能力も出ます。学生証もここで作ります。」

「話の途中にすいません。なぜ魔力を測る魔法具で学生証ができるんですか」


 枢が質問をする。俺も疑問に思ったが、そういう疑問をちゃんと聞くあたりが優等生っぽいなと思う。


「それはですね。人によって魔力の質が違うのを利用して個人の魔力の性質を記録した専用の学生証にすることで偽造などを防止するために個人の魔力を測る魔法具は利用できるというわけです。それにあなた方は入学が決まっているのでここで作ってしまったほうが時間が短縮できるというわけです」

「そうなんですか。ありがとうございます」

「いえ。では2つ目の話です。これは魔法を実際に使ってもらい、簡単な魔法の技術を測ります。これは少し離れた位置にある的をめがけて魔法を打ってもらい私が判定します。3つ目は、模擬戦闘をします。武器はこちらで貸し出したものを使用してください。相手は私がします。この試験では戦闘の技術を見ます。終了は時間制限もしくは私に一本入れた時点で終了です。何か質問はありますか?」


 3つを大まかにまとめると、1つ魔力量、2つ魔法技術、3つ戦闘技術、ということらしい。ただ一つ疑問があるとすれば。


「まぁ、私を見てほとんどの人が考えるのは、私のようなひょろそうな人間が戦闘できるのかってことですかね。ですが……」


 先生の周りの空気が変化する。冷や汗が背中を流れ、口の中が乾く。


「…学生に簡単に負けるほど弱いつもりはないですよ」


 そういうと軽く微笑み、周囲の空気感が戻る。


「…では行きましょうか」


 再び歩き出した先生のあとを追う。3つ目の試験が少し怖くなったのは言うまでもない。





「到着です。こちらで試験を行います」


 ついたのはいくつかあった建物のうちの一つ。かなりの広さがあり天井の位置も少し高めに作られているようだ。建物というより一種の運動場のようでもある。基本はコンクリートに近い材質の硬い材質だ。中央が開けておりその周囲には観客席のようなものがある。

 観客席があるのは普段も何かの催しがあるのかもしれない。


「こちらを渡しておきます」


 そういってどこからか持ってきたのは小さめのスーツケースのようなもの。


「これはこの学院の運動用の服です。戦闘に対応できるようにいろいろな魔術を利用した特別ものになっていますので運動するのに支障はありません。今の恰好では動きづらそうなので用意したものです」


 二人に制服といっていたものをこちらに渡してくる。


「あちらに着替える場所があるので着替えてきてください」


 そういって建物の一角を指す。

 着替えるために指されたほうへ移動する。


 着替えが終わり準備が完了する。運動服は黒を基調として、白のラインが入った短めのコート?ジャケット?をシャツの上にきている、シャツには革の鎧を仕込んであるのか胸周りが固くなっている。そして緩すぎない体に合ったズボン、腰のベルトやズボンには何かを収納できるようになっている。そしてところどころに服が運動を阻害しないように調節用のベルトがついている。靴も同じようなデザインで用意してある。鉄板を仕込んであるのかかなり丈夫なものになっている。全体のデザインは落ち着いているが制服とは全然違う気がする。だが動きやすい使用になっているようで特に重いという感じもせず暑苦しくもない。はっきり言ってとてもいい。

 サイズはどうしたのだろうか、と疑問に思うが魔法に機能でもついているのだろうと適当に納得する。


 動きやすさを確認していると枢が出てくる。着替えが終わったようだ。

 男用とは違い白を基調にした黒のラインが入ったもの。上は俺が着ているものよりも短いがデザインはほぼ同じでこちらにも調整用のベルトがあるようだ。短すぎないショートパンツに太ももまである黒のソックス。膝下まである白いブーツのような見た目のものを履いている。


「二人とも準備ができたようだね。それじゃあ始めましょう」


 着替えている間に用意していたのか様々な器具があり、先生の前には透明な球体がある。

 特に機械などが発達してなさそうなのに、こういったものがあるのは魔法の技術を利用するために発展してきた結果かもしれない。


「ユート君から始めましょうか。こちらに来てください」

「はい」


 透明な球体の前に立ち指示を待つ。


「この球体に手をかざしてください」


 指示に従い球体の上に手をかざす。

 すると、球体の中央に小さく赤い光が出る。それは炎のような形を作りゆらゆらと揺れている。


「終了です。手を放しても大丈夫です」


 魔法の使い方なんて知らないので魔力を込めろと言われなかったのでよかった。だが次の魔法技術を測る試験では教えてもらわねばなるまい。

 次の試験を考えていると。


「これがあなたの学生証です。」


 そういって渡されたのは一枚の薄く青い色のプレートのようなもの携帯端末に似ている。裏にはこの学園の紋章なのか盾の前に剣と杖を交差させ、下には弓が描かれ、左右に鳥の羽が描かれている。


「学生証の下部に丸いくぼみがあると思います。そこに触れると学生証の役割をします。あなたの魔力にしか反応しないようになっています。触れたままステータスと唱えるとあなたの情報が表示されます」


 学生証のくぼみに触れる。すると、裏のものと同じ紋章の下にこの世界の文字が現れる。名前が表示されているらしい。読めるようにしておいてよかった。枢に改めて礼を言おうと決める。


ユート=カガミ


 なんで俺の名前があるのかと聞くと、俺の情報を魔力を通して反映しているという返答が返ってきた。本当にスゲーな魔法って。

 というか、やはりこの世界では名前の表示の仕方が違うようだ。名前しか言ってこなくてよかったと思う。だがこちらに世界の表記をしている国はないんだな。

 次の準備を進めている合間にステータスについてのことを教えてもらった。表示されるのは名前と適正魔法の属性、筋力、耐久、敏捷、器用、魔力の7つ。階級は最とも上からS順番にA、Bと続いて最も下がFになっている。戦闘職の人はC一般人がDというのが一般的であるようだ。意味についてはゲームに近かった。訓練すれば上昇することもあるようだ。Bより高いというのは人間としては一握りらしい。

 ゲームっぽいのにレベルで成長はないんだな。


 そしてステータスを見るためにステータスと唱える。すると俺の情報が表示された。


名前:ユート=カガミ

魔法適正:火

筋力:F

耐久:F

敏捷:F

器用:E

魔力:F


 数値を見て思ったことが一つある。


「……貧弱すぎじゃね」


 思ったことが声に出ていたらしく。不思議そうな顔でこちらを見る枢に何でもないと手を振る。

 一つ気になるのは魔法適正の属性欄にかすれて読めない文字が一つある。何なのか気になるところだが魔力が最低ランクであることからあっても使えないだろう。そう思うと少し残念な気分になるが、全く使えないとかではなくてよかった。属性もあるしな。


 自分のステータスについていろいろ考えていると次の準備が整ったらしい。


「では次、カナメさん。こちらに来てください」


 次は枢の番だ。特に手順に違いはなく手をかざす。

 球体にかざすと三つの小さな光がともったかと思うと、まばゆい光を放つ。

 三色の光は水色と黄緑色と少し黄色がかった色の輝きが視界を遮る。


「……しゅ…終了です。手を放してください」


 戸惑い交じりの声だけが聞こえる。

 光がだんだん収まってきたと思うと。最初に先生が眼鏡の奥の目を見開き驚いている姿が映った。だがまだ視界が少しチカチカしている。


「……ま…魔法具の故障か?」


 信じられないといった風にもう一度検査をするが結果は同じだったようだ。俺の時は何ともなかった球体にひびが入っている。特に落としたりたたいたりといったことがなかったのを考えると、枢の魔力に耐えられなかったようだ。


「…これが君の学生証だ。使い方に関しては彼に説明した通りだがもう一度聞きますか?」

「いえ大丈夫です」

「わかりました。では次の準備ができるまでステータスの確認でもして待っていてください」

「「はい」」


 枢は準備の手伝いを申し出ていたが丁重に断られる。先生は準備をしながら何かをぶつぶつとつぶやいていた。

 断られた枢は確認をするためにステータスと唱える。


「……見せてもらってもいいでしょうか?」


 先生のあの反応とさっきの光の意味を知りたくなった。非常識なのはなんとなくわかる。自分のいわば個人情報に値するものなのは言わずもがなだからだ。だが許可を得られないかと頼むぐらいは許してほしい。

 誰に言ってんだよみっともない。自分で自分の言葉を非難する。


「いいよ」


 快い返事が返ってきたことに聞いたのは俺だが内心で枢の警戒心のなさを心配になる。

 何を思ってんだろうな。


 枢の学生証を受け取りステータスを見るとさっきの先生の反応に納得するとともに俺自身も目を見開くことになった。

 映し出されていた枢のステータスは


名前:カナメ=ミズシマ

魔法適正:水(氷)・風・光

筋力:B

耐久:B

敏捷:S

器用:A

魔力:S


「マジかよ……」

「どうしたのかな…っていうのは違うよね」

「今朝読んでくれた本の内容では一人一属性で才能のある人が二属性あることもあるって話だったよな」

「そうだね」

「ならなんであんたは四属性?もあるんだ?それにこのステータスの高さはなんなんだ?」

「……あぁ、たぶんあれだと思うよ」


 あれ?あれってなんだっけ。


「……………あぁあれか。そういえばそうだったな。忘れてた」


 神様の加護ってやつだな。

 でもここまで異常な高さになるものなのか?先生の言っていたことをベースにすると、才能のあるもののステータス値がBだと仮定すると筋力や耐久は才能のある人と変わらないが敏捷と魔力がありえないほどの値になっている。そして魔法適正が三属性ってのに関してもこの世界の人間では尋常ではない。(氷)ってなんだよ。

 それだけ神様の加護の力がすごいってことなのかもしれない。

 だがもう一つ。これは想像だが、枢の会った神様との相性が良かったのもあるのかもしれない。


「そういえば君のステータスってどんな感じなの?」

「見ても面白くないぞ」

「私のも見せてあげたんだからさ…ね」


 そういわれると弱る。

 しぶしぶだが枢に俺のステータスを表示させた学生証と枢の学生証を渡す。


「ん~と…君の魔法適正は火属性なんだ。私とは違う属性なんだね。君って体育苦手なの?」

「いやそんなことはない。苦手ってわけでもないけど運動神経が特にすごいってわけでもないって感じだな。あんたはどうなんだ」

「私は女子の中では運動できるほうだったかな」


 才色兼備ってやつか?スゲーなこいつ。やっぱ加護もそうだがもともとの身体能力も高いのかもしれないな。


「これありがとう」


 そういって学生証を返され受けとる。


「次の準備ができたので始めましょうか」


 いろいろと話をしているうちに先生のほうは準備ができたらしい。


「ではまたユート君から行きますか」


 引かれている線のところまで移動する。丸い弓道などに使われているような形の的が胸に付いたマネキン人形が前方にある。的までの距離は大体10メートルぐらいといったところだろうか。そこに魔法を当てるようだが。


「先生」

「なんでしょうか」

「魔法の出し方を教えていただけないですか」

「………はい?」


 本当に疑問を体と声で表したような感じの先生がこっちを見ている。

 今までも見てきた人と同じような反応だ。


「魔法の出し方を教えてください」

「私にも教えてください」

「…………………はい。ではやってみましょうか」


 軽い深呼吸をしてから答えてくれる。

 反応も今までの人と同じでその後の対応もほとんど似たような感じだ。基本的に優しい人たちに出会っているのは運のいいことだろう。


「魔法についてどこまで知っていますか」

「属性のことを少々です」

「私も同じです」

「そうですか。いろいろ教えていると時間がかかるので今は魔法を発動することについてだけ教えます」

「「お願いします」」

「魔法は自分の中に流れている魔力を使用して発動します。体を流れている魔力が一点に集まるイメージをしてください。集める場所はどこでも構いませんが手が一番無難でしょうね。魔力のイメージがしづらければ同じ体を流れている血液をイメージしても構いません。大切なのは集めるということです。そしてその集めた魔力が属性の現象を起こすこと。火ならば燃えるなどですね。そして最後に集めた魔力を飛ばす。これが魔法を発動する基本になります。いくつかの手順を加えたり応用したりすることで様々な魔法を発動します。高度な魔法は詠唱で魔法のイメージを固める人もいますが今は必要ないですのでそういうこともあるとだけ覚えておいてください。以上が基礎的な魔法を発動する手順です。では実際に試験の続きとしてやってみましょうか適宜こちらからもアドバイスしていくので失敗しても気にしないようにしてください。」

「「はい!」」


 元の的の前まで戻り魔法を発動する手順を思い出す。


 イメージしやすいように目を軽く伏せ掌を的に向ける。言われたとおりにイメージをしていく。

 俺の属性は火だから魔力が燃え上がるイメージで。


 向けた掌の先に紅い幾何学の紋様が現れる。

 紋様がきえ入れ替わるように火の粉が舞い散り火の玉が出現する。


 ―――なんてうまくいくはずもなく…

 マッチ程度の小さい火がこれまた同じぐらい小さい幾何学の紋様から出てきて、ポンッと音を立てて消える


 しばし呆然としていると脱力感があり息切れも起こした。そしてとにかく眠い。


「……はぁ…はぁ。…ビミョーだなオイ」

「いえいえ、初めてでできるのはすごいですね。」

「……ありがとうございます」

「発動後には脱力感があると思いますが。それは体内の魔力を消費した代償みたいなものです。魔力は休んでいれば回復するので少し休んでいてください体のダルさもそのうち取れます」


 まぁ見た感じは微妙だったが初めてできた魔法という元の世界では異常な事柄の嬉しさに顔が自然と笑みの形になる。

 だが次は驚きの顔になるんだろうなとなんとなく予感する。


「では次に行きましょうか。カナメさん来てください」

「はい」


 線の引いてある位置に移動し手をかざす。

 次の瞬間に水色の幾何学の紋様が手の先とその周囲に7、8個できる。

 紋様が消えるのと入れ替わりに水の球が出現したかと思うと。水の玉の中心から凍っていき先のとがった鋭利な形に変わる。

 そして打ち出す瞬間に黄緑色の紋様がそれぞれの後ろに現れ風が氷を押し出す。

 氷は大きな音を出しながらすさまじい速度で的をめがけて飛んでいく。

 着弾と同時に氷が爆散し的の人形をバラバラにする。


 軽く呼吸を吐き出している枢。

魔法が使えていることよりも先ほどの魔法についてのことが俺の頭の中を回っている。

 俺は一つしか紋様が出なかったものをあの数出していること。それに魔法を併用していること。簡単ではないはずだ。属性があったとして最初でやれと言われても俺にはできない。

 単純な想像力の違いというわけだ。ステータスもそうだが想像力もすごいとは、相変わらずすごいな。だが、ここまでくると少しは慣れてきたらしく前回ほど驚かなくなっている。


 先生といろいろ話した後にこちらのほうに来る。先生のほうは次の準備をしている。

 補助の先生ぐらいつけてあげればいいのにと思うが今が授業中であることを考えれば仕方のないことなのかもしれない。俺たちも手伝いたいところだが邪魔になりそうだ。さっきから魔法使ってるっぽいし。


「お疲れ」

「ありがと」


 それから次の試験の準備が整うまで俺たちは魔法についての話をしていた。


なんかかなり長いような気がしているのですが、単純に速度が遅いだけですね。

頑張っていきたいと思います。

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