幕間~神と教師、二人の話~
遅くなりました申し訳ございません。
◇天界アオ・アクア ネーヴェ
「流石に、まだ完全には馴染んでいないか。それに、この世界に送った理由について深く考えすぎだな~どちらかというと面白そうだからってゆう理由のほうが大きいから、好きなように生きてほしいものだけれどね。その辺をちょっと話すために会いに行ってみようかな~。あと一緒に送った剣も刀のほうがよかったかな」
どこまでも続くように見える真っ白い世界で少女のように見える者が、とある女の子が映し出されたものを炬燵に入りお茶を飲みながら眺める。
場面は、学校の先生のような男に案内され女子寮に向かっているさなか、心の声もなんとなくだがわかるようになっている。
完全にはわからないからいいよね。
などと考えながら、彼女いや彼…男性女性といった形などに意味はない(一応女神ってことになっているが)ので、そうだな「ボク」としておこうか。枢ちゃんの前では私って言ったけどまぁ一人称なんてどうでもいいからいいよね。
「それにしても、彼は何者なんだろうね」
これまで枢ちゃんと行動を共にしてきた男の子のことを考える。
この世界には似たような顔の造りの者は少なくはないが大半は彫りの深いチキュウで言うところの北欧系の顔や髪の色だ。
まぁ別にそのことで何か問題があるわけでもないんだけどね。彫りの浅い顔だからといって珍しいというのはあるだろうけど醜い顔といった風潮があるわけでもない。枢ちゃんはモテるね、うん間違いない。
親バカみたいな発言は置いておいて、まぁ彼がどちらの誰なのかは枢ちゃんを追っているとわかることなんだけどね。
彼をこの世界に呼んだ覚えがない、いや呼んでいないとはっきり言える。
彼がいる理由について、いくつか考えが浮かぶが憶測の域を出ない。
「まぁわかんないものは考えても仕方ないね~」
グデ~っと寝転び指を振ると枢を映し出していたものが見えやすい位置に移動する。
しばらく観察した後、手を払い映像を消す。
消えた映像から視線を切り猫のようにゴロゴロしていると
「姉さん!また勝手なことをしましたね」
「ん、ヴァサじゃないかどうかした?」
大人バージョンのボクより少し高めの澄んだ声が聞こえ、目だけをそちらにむける。
そこには腕を組み仁王立ちでこちらを見下ろす今は妹の神がいた。
ボクとは、逆の左目が深い蒼色で右目が翠色の青色の髪をした背の高いボンキュッボンの女性だ。
その脂肪の塊もいでやろうか。
ボクたち神にとっては見た目なんてものは変更可能だが大体の型っていうのが決まっている。
例えば目の色や髪の色、姿を変えた時のその種族にとってどの程度のレベルの造形なのかとか、時間や形の概念はないがそれぞれの特徴ってのは変更ができないわけ。
そういうわけでボクの妹神はボクよりスタイルがいい。
妹が自分より優れているのはもちろんいいことだけど、まぁ嫉妬ってのもしないわけじゃないんだよね~。
「『どうかした?』じゃないですよ!」
怒りながらゴロゴロしていたボクの耳を引っ張り上げられる。
炬燵から出され耳を引っ張っている手をタップする。
「い、痛い、痛いから。離してよ」
離してくれた耳をさすり。
「それでどうしたの?」
「逆に聞きますよ姉さん。私が怒っている理由が本当にわからないんですか」
何かあっただろうか……あっそうだ。あれかな
「ヴァサへの捧げもののお酒を飲んじゃったことかな?」
「違いますよ!……ん?そんなことをしたんですか」
あっ…墓穴を掘っちゃったかな?
「ち、違うのならなんなのさ」
「はぁ。あとでその話もきっちりさせてもらいますよ。本題はまた異世界の人間をこの世界に呼んだことですよ。」
急いで話を変えようとしたが駄目だったよ。
また怒られるな~。
それは置いておいて、異世界の人間をこの世界に呼んだっていうと――枢ちゃんのことかな。
「あぁその話ね。それがどうしたの?」
「忘れたんですか。不用意に人間を世界の境界を渡らせてはいけないという私たち神々の規定を。そのしわ寄せがなぜか私に来るんですよ!わ・た・しに!」
「いつものことじゃないか」
「いつものことだからですよ!何度言っても直してくれないじゃないですか!」
「そんなに怒るとしわが増えるよ?」
「誰のせいだと思っているんですか?それに増えませんよ、それをわかってて言ってますよね」
「あはは、まぁね~」
「まぁねって…はぁもういいです。ただ姉さんはさすがに自由にしすぎですよ。他の神々が言葉だけで手を出してこないからいいものの」
厳格な神の連中はいろいろやることに厳しかったり口うるさかったりする。そんな人ばっかりではないけどそういう神の声っておおきいんだよね。
さて妹をからかうのもこのくらいにしてっと。
「それで他の神々はなんて?」
「まぁいろいろ言っていましたが、まとめると勝手なことばかりするなってことです」
「母さんは?」
「母さんはノーコメントでしたよ。私たちの自由に任せているようでした」
「いつも通りってわけね」
「はい。いつも通りです。こんな時くらい何か言ってくれたらいいんですけど……」
そういった母さんの姿勢を見て、神とは人々を見守る存在であり干渉するべきではないという考えを持つ神もいる。そういった神とはボクは反りが合わない。
想像でしかないけれどこうしていろいろなことをそれぞれがやっていき意見を出し合っていくことを良しとしているのかもしれない。
そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。やっぱり想像上のことなので不明だけれどもね。目的すら言わないんだから。
数多のほかの世界の管理も行っている母さんだからしょうがないのかもしれないけれどね。
「再度言いますがほかの神々が手を出してこないからまだいいんですよ。気を付けてくださいね」
「なに?心配してくれてるの?」
にやにやとしながら妹神の顔を見る。
全く可愛い妹神だな~。
「いえ。私に飛び火しないかが心配なだけです」
やっぱりかわいくない。
なんてね。大事なときにはちゃんと助けてくれるからやっぱりかわいいね。
「とりあえずあの子がいるうちは変なことしないよ。話が終わったならお茶でも飲もうか。ほかのやつがいいかな?」
話を切り上げるように炬燵に入ろうとする。
「飲むといえば姉さん、先ほどおっしゃっていた私の供物の酒を飲んだのは本当ですか」
炬燵に入ろうとした体が硬直し、油をさしていないブリキ人形のように首を妹神に向ける。
黒いオーラが見えた気がした。
「――ごめんね」
語尾に音符でも出そうなほど軽く言う。
そして脱兎のごとく走りだす。
「あっ逃げるな!」
それからいたずらをした子供と追いかけるお母さんのようにも見える長時間の鬼ごっこが始まった。
どちらが勝ったのかはご想像にお任せする。
◇学院長室前 グラス=ソイル
試験の報告をするために学院長室の前まで来た。日は高い位置にある。
教員用の白い制服に上から暗い色のローブをまとった黒縁の眼鏡をしている30歳代後半ほどの細身の男性。
持ってきた書類があっているか確認してノックを三回、すると落ち着いた声音で「どうぞ」と。
「失礼します」と声をかけ扉を開ける。
きらびやかすぎない落ち着いたデザインの部屋。
横に長い大きめのデスクにはくすみのない金色の髪に碧眼、若そうに見えるが長命種のエルフなので私の何倍もある年齢の学院長がいらっしゃる。
棚には本やまとめた書類が並べられており応接用のソファと机がある。
書類仕事をしていたのか細いチェーンでつながれ、はずしても首から下げられるようになっている眼鏡をかけ、広い机の傍らには書類が積んである。
今も書類に何か書き込んでいるようだ。
「すみませんが、ひと段落するまでそちらで待っていていただけますか」
「わかりました」
ちらとこちらを一瞥し指し示されたのは応接用のソファ。
浅く腰掛け、待っている間に持ってきた書類に目を通し再度確認をしていく。
数分たち学園長が席を立ち奥の部屋に入っていく。
また数分がたったのち奥の部屋からティーカップを二つとティーポットをもって出てきた。
かぐわしい香りが漂う。紅茶だろうか。
向かいのソファに座りティーカップに注ぎ差し出してくる。
「お待たせしました。紅茶でよろしいでしょうか」
「ありがとうございます。いただきます」
差し出された紅茶を一口飲む。
口に広がり鼻に抜けていく香りが何とも言えない。飲んでいて非常に落ち着くことができる
「おいしいです」
「そうですか。それは良かった」
眼鏡をはずし首から下げ、微笑む。
学院長も一口飲みしばしの時間がたったのち話を切り出す。
「カナメさんとユートさんはどうでしたか」
「そうですね…どちらも極端な意味ですごいですね」
まとめた書類を差し出しながら言う。
学院長は眼鏡を再度つけるとさっと目を通し。続きを促す。
「ステータスについてはカナメさんは非常に素晴らしいどころかありえないほど高い数値を示しました。カナメさんのステータスを測った魔法道具が片付けているさなかに砕け散ったのは焦りました」
「ステータスが高いのはここに書いてあるのを見る限り本当のようですね。驚きました。それで、砕け散ったというのは本当ですか?あれはステータスを測る程度で壊れるものではないのですが」
少し疑わしそうに聞いてくるが事実なのだ。
カナメさんのステータスを測り終わり片づけと次の準備を進めようとしているときに、壊すとは思ってはいないが下手なことをさせないために彼女からの手伝いを断り倉庫へと運んだときに目の前で砕け散ったのだ。
あれは貴重な魔道具であってもそう簡単に壊れたりはしない。
下手に落としたりでもしない限り砕け散るといったことは起こらないのだが…。
「事実です。ですが私にもよくわかっていないというのが現状ではあります」
「そうですか。信用しないといったわけではないのですが。…はい、わかりました。新しいのはこちらで申請しておきます」
「よろしくお願いします。」
頭を下げてお願いする。
あれはこの学院では結構利用するものである。なので、壊れたままにしておくこともできない。
あの魔道具が高価で貴重でもあることから他の場所から借りてくることは難しい。
予備はあるが用意しておいてお金はかかるが損はないはず。
「ユートさんのほうはどうでしたか?」
「彼に関しては、一言でいうと弱いです。この学園に入る基準には達していません。そして魔法の適正はありましたが魔力に関しては一般的な子どもにも及ばないレベルです。どうして国王陛下は彼を学院に入れろと言ってきたのか不明ですね。」
「二人をこの学院に入学させるのは、たしか褒美だとおっしゃっていました。なんでも姫様をかばったとかなんとか。その褒美に学院への入学を申し出たそうですよ」
「カナメさんであればそこらの有象無象などは相手にはならないでしょう、ですがユートくんに関しては弱いと評判のゴブリンですら死にますよ。かばったというのも信じがたい話ですね」
「そうですか…ですがそれに関しての口出しは厳禁ですよ。もう受けてしまったことなのですから。それに入学後のことはこちらに任せるという条件をのんでもらったのであとは彼女たち次第です」
「そうですか、わかりました」
紅茶を一口飲み気分を切り替える。
「魔法に関してはどうでしたか」
「魔法は二人とも素人です。使い方も試験中に教えたぐらいですから。」
「それで、発動できたのですか?」
「二人とも詠唱を必要とせずに発動していました」
魔法に関しての研究が進む中で詠唱をすることで魔法などをイメージを必要とせずに発動することができるようになった。
「我は願う、我が魔力を糧として」で始まる式句を唱えた後に魔法名を唱えることで世界に魔法という現象を個人の魔力を媒介として発言することができる。
欠点も少なく利便性にたけていると考えられ世間一般に広まっている。
だが私個人の意見では式句を唱えることを推奨していない。
戦闘においては相手に自分はこれからどういった魔法を使うと公言しているようなもので、剣を振ることにおいて、いまから右を切りつけます、三秒後に切り上げます、などを発言しているといってもいい。
最後のイメージ固定のために魔法名を唱えることはあっても詠唱魔法はあまりお勧めできない。
そして何より詠唱をするだけで使えてしまうので魔力の流れなどをちゃんと理解できないことにある。
あくまでも私個人の意見だがどんなに魔力が低くとも極力無詠唱の方法を教えている。
「そういう意味ではどちらとも才能はあるといえます」
「そうですね。ですが魔力量があるかないかで雲泥の差が出てしまうことは仕方のないことかもしれません」
「…はい」
ステータスは鍛えれば伸びる。だがそれが伸び幅に関係することはなく、人によっては全く伸びない者もいればいきなりランクが上がる者もいる。その理由はわかっていない。
だからこそ現状のステータスが信用できる基準なのだ。
少しの沈黙が訪れたので紅茶を飲み話題を移す。
「それは、おのおのの運と努力に任せるしかありません。次に戦闘技術に関してですがカナメさんは足運びや体重移動がしっかりしています。何かやっていたのかもしれません。ですが刀の筋が分かりやすいことやステータス通りの力を発揮できていないことから戦闘経験の少なさが見られました。逆にユート君はからめ手を使っては来ますが方法が単調でわかりやすく、考えに体が追い付いていません」
どちらもいい点はあるのだが比例して悪い点も目立つ。それはこれから教えていくしかない。この学院はそういう場だからです。
いろいろと講評しながら話を進めていった。
彼女たちのクラスも決まり。渡すものについても話を進めた。
報告が終わったときにもう日は傾いていた。
時間をかけて話したおかげですかね、話したいことは話した。
もう一つ言えるのは―――学院長の淹れる紅茶はとてもおいしかったことですかね。
定型文と化してきた前書き、安っぽいですね。
進んでいる人間を止まっている人間が羨むなよ。
というわけで自分が嫌になります。
まぁそんなのはどうでもいいですね次回もよろしくお願いします