テイマー
あれから半年がたった。
え、いきなり?
いやだって話すことないし、
強いて言うなら文字がかけるようになったくらいか。
あ、あの事は知らない。あれが結局トファかどうかはわからなかったし。
それはさておき・・・、
今日はすごく楽しみな事がある。
そう、それは魔力測定日だ。
その名の通り、魔力を測定する日だ。
6歳の誕生日に測定するのだ。
それまでは、魔法は使ってはいけないから、
やっと魔法が使えるようになるのはものすごく嬉しい。
とりあえずどんな属性が出ても頑張ろう。
ーーーーー
「これから魔力測定を始める」
魔術師団長が言う。
あ、魔術師団長と言うのは、魔術師の塔の
最高責任者だ。
「この水晶の上に手をおけ」
この水晶は、一番得意な属性が分かるというものだ。
・・・。
何の属性になっても頑張ろう。
「これは・・・判定結果、闇属性」
「・・・」
お父様はなにも言わない。
大丈夫だろうか、
闇属性は少ない上に、何かと難癖つけられる。
しかも家は代々風属性の家系らしいから。
用無しかもな・・・。
用無しになるとまたスラム暮らしか・・・
もしくは“処分”されるか。
「何だ?」
見ているのに気づいたのか、こちらに目を向けてきた。
「いえ、何でもありません」
はぁ。何を考えてるんだか全く分からん。
まったく、この人は苦手だ。
感情が読めないから・・・。
「のぅログナフ。この子ワシにくれぬかのぅ」
ふと、一人の魔術師が、声をあげた。
「お前ロリコンか!?」
魔術師の一人が言った。
「違うわい。この子を魔術師の塔で一度預からないかと言っておるんじゃ。
どうせログナフの事じゃ、引き取ってからまともに接してないのじゃろう。
ほら、怯えておるわい」
「・・・」
できるだけ顔には出さないようにしてたんだけど何故分かったんだろう。
「ほら、図星じゃろう。だから一度ここで預けたらどうじゃ。教育はここでもできる。
環境もお前の家よりはましじゃろう。
どうじゃ、一度預けてみぬか?」
なんかわからないうちに話がどんどん進んでいく。
はぁ・・・。ま、なるようになれだ。
あ、間違った。なるようにしかならない、だ。
「・・・わかった。預けよう」
なんかよくわからないうちに、どこかに預けられることが、決まったようです。
ーーーーー
「ワシは、ここの副魔術師長のプロクス・アルデバラン、一応子爵の位を賜っておる者じゃ。
お前は・・・確かシエルと言ったか。
今日からここに住んでもらう。
なぁ、ひとつ聞きたいことがある。
ログナフ・・・お前の父親じゃがな・・・
お前から見てどうおもう?」
へー、副魔術師長なんだ。
どうって言われてもなぁ・・・、
あ、とりあえず何か答えないと。
「えっと、印象ってことですよね。
そうですね・・・冷たいとは思いましたが・・」
「そうかそうか。ではもうひとつ聞こう。
お前の母親について、何か知っておるか?」
母親か・・・。考えたことなかったな。
毎日生きることに労力をつぎ込む生活しかしてこなかったからな・・・。
公爵家に来てからもどうやれば面倒事に巻き込まれないかを考える日々だったからな・・・。
改めて考えると・・・うん、何も知らない。
名前すらも知らないからな・・・。
「知っておるか?」
「名前すら知りません」
正直に答えとこう。
このひとは、何だか嘘が通じない気がする。
って嘘を言う必要も無いか。
「そうか」
そう言うと、ニコッと笑いようこそと言った。
ーーーーーー
「ここじゃ」
今私は、自分の部屋に案内されたところだ。
住むとは言っても、住む場所がなきゃ話にならないからね。
「何か困ったことがあったら遠慮なく言いなさい」
この人は、なんか優しい気がするな・・・。
この人なら、信じてもいいかもしれない。
「はい」
私はこれからの生活に思いを馳せるのだった。
ーーーーーーーー
「これから魔法の勉強をする。
まず、魔法とは何か知っておるか?」
ここに来てから2日、
魔法の勉強が始まった。
「魔法とは・・・なんでしょう?」
ま、こんな状態だったので、なかなか先には
進めなかったが。
「質問を質問で返すな。これも知らぬとなると・・・、仕方ない。最初から教えるか。
まず魔法とは、体内の魔力を使って、色々な現象を起こすことを言う。
魔力は体内にあって、どれくらいの量があるかは人それぞれじゃ。
ま、親が多ければ、子も大体が多いがのう。
ま、例外もあるが。
次いくぞ。
で、魔力は誰にでもあるが全員が魔法を使える訳ではない。
ここで問題じゃ。
魔法を使うには何が必要じゃ?」
えー、魔力があっても使えない・・・
うーん、分からん。
はぁ、本当私ってバカだな。
「分かりません」
「そうか。じゃが答えを当てるより考えることに意味があるのだ。
答えは魔力とイメージだ。
あとそれと、呪文を解することも必要じゃ。
それができて、初めて魔法が使える。
呪文を解するとは、例えば・・・
『グロウ プラント』
そこにあった草に向かって魔法を使った。
すると・・・
「成長した!?」
そう、成長したのだ。
今まで10メル(10センチメートル)位だったのが、
ぐんぐんと延びて、1メルト(1メートル)位になった。
「これは、植物を成長させる魔法。属性は樹だ。
魔法を解するとは、呪文を脳に刻みこむ事じゃ。
だからこれができないと魔法は使えない。
お前はそれはできるので、魔法は使えるぞ」
「え、なぜそう分かるのですか・・・?」
私は魔法を一度も使ったことはないのでそんなことは分かるわけない。
「お前は一度魔法を使ったことがあるぞ。
一度刻みこめばもう忘れることはない。
思い出せないだけでな。
いずれ分かるときが来よう。
それまでは、何も知ろうとするでないぞ」
なにも知るなか・・・。
一体何があったんだろう。
「あ、もうこの話題は終わりにして、属性について説明しようかのう。
属性とは、一番得意な魔法の系統じゃ。
例えば、風系統の魔法が得意なら風属性。
お前のように、闇属性なら
・・・、闇属性はちと特殊な系統じゃったな。
ま、とにかく属性は八つあり、その属性は、お互い得意不得意がある。
・・・説明が難しいのう。
そうじゃ、例をあげよう。
例えば火属性は、水属性に弱いが、樹属性には強いとかじゃ。
さっき八属性あると言ったな。
火属性 水属性 風属性 樹属性
地属性 雷属性 光属性 闇属性
それが八大属性だ」
ふーん。八個も属性ってあるんだ。
「で、お前は闇属性だったな。
あ、闇属性は少し特殊な属性じゃからなぁ。
光属性もじゃが。
闇属性と光属性は、他の属性とはちがってのう。
どこが違うのかと言うと・・・、
さっき言った通り炎は樹に強く、水に弱いが、
闇属性には何かの属性に弱いと言うことがない。
闇属性は光属性の攻撃には強いが、
光属性も闇属性で攻撃しても効きにくい。
他の属性は体は関係ないのじゃが。
闇と光属性は、そんな感じで謎に包まれておるのじゃ。
ま、そんな特殊な属性なのだ。闇属性は。
それでは闇属性の説明に入る。
闇属性とは、どんな魔法を操ると思う?」
闇属性っていったら暗いイメージしかないな。
「黒い魔法・・・ですかね」
何だ黒い魔法って。
自分でいっといてよくわからないぞ。
「ははっ、それも正しい。
しかしそれだけではない」
あ、正しかったんだ。
それ以外ってなんだろう・・・。
「契約も、闇属性の魔法だ」
契約・・・奴隷契約とかもそうだが、それ以外・・例えば使い魔契約や、召喚もこの契約を用いることがあると言う。
結構使い勝手がいいな。
「だから、闇属性がなる仕事は、奴隷商人か、召喚術師か、もしくは・・・死霊術師が多い。
もちろん死霊術師が合法な訳はない。
けど闇属性は忌み嫌われておるから、そういう職業についてしまうことも多いんじゃ。
あ、他にも従魔術師・・・テイマーという職業があったな」
そこで一旦言葉を区切った。
しかしまともな職業なんてほとんどないな。
「それで・・・」
喋りだした。
「お前の考えを聞かせて欲しい。
それによって今後何を教えるかが決まるのでな」
「・・そうですね。
私は、テイマーになりたいです」
「そうか。ワシの教えは厳しいぞ。
それでもやれるか」
大丈夫。この人ならついていける、
本当に、そう思った。
「はい、プロクス・・先生?」
「はは、ワシのことは、師匠とでも呼んでもらおうかのー」
「はい、師匠!」
こうして、私は師匠の弟子となった。