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「眠すぎて、忘れてた」

ケイタは朝一番に起きて荷車に向かった。

「あらあら・・・」

そこには荷車の上で眠っているカズハの姿があった。

「スピィ~、スピィ~」

とても気持ちよさそうに寝ていて起こそうにも起こせなかった。

(そ~っと、そ~っと)

ケイタは彼女を起こさぬよう荷車から鳥かごを取り出した。

「毎日送るつもりが早速さぼってしまったな~」

そう呟いて中に入っている伝書鳩に手紙を入れて空に放った。

すると伝書鳩は村の方角へ飛んで行った。

伝書鳩はあらかじめ国から支給されていた。とても人間になついていてコウタがその理由を聞くと、騎士のザイヤが自分の育てている鳩を無料提供してくれたらしい。最初の手紙は「死なせたら許さん」と書かれおりコウタたちは肝に銘じた。


 伝書鳩が飛んで行ったあとケイタは鳥かごを戻そうとすると眼前にカズハの顔があった。

「うわぁ!」

「わぁっ!・・・いたっ!」

驚いたケイタだったが、それに驚いたカズハが荷車から転げ落ちた。

「すみません!大丈夫ですか?」

カズハは頭を押さえながら起き上がった。

「いや・・これは、私のせいだから」

頭を打って恥ずかしいのか彼から目を背けた。

「朝食でも作ろうか」

そういってカズハは荷車から食料を取り出した。そしてケイタはそれに続き、火を起こした。

「あなたも使えたのね?」

ケイタはコウタのように火をつけたことに気づいたようだった。

「村の人はほとんど使えますよ」

その答えにカズハが驚いていた。

「村人が使えて魔法専門の私が使えないなんて・・・・」

村人に負けた気分で少しショックを受けたようだった。

「使えないのではなく習っていないのでは?」

そういわれて彼女は思い返してみると、いっていた通りだった。

「確かに・・・・・」

そして簡単な火おこし魔法を教えてもらった。

「使ってみる」

早速カズハは魔法を使ってみた。すると・・・・

_____ボォン!

と少し大きな音を立てて焚火が炭に変わった。

「「あ・・・・・・」」

なんとか食料は燃えなかったもののまた木材を採取しなければならなくなった。

(この人、才能あるんじゃないのか?)

そうケイタは思って木材を回収しに出かけた。


「迷惑をかけてしまった・・・・でも・・使えた」

ケイタが探しに行っている間、カズハは回復以外の魔法を使えたことに安堵していた。


「あなた、燃やした割にはうれしそうね」


と声のした方向をみるとそこにはテントの入口から顔を出しているメイカの姿があった。

「!?・・・起きてたの?」

「ええ、燃やしたあたりから」

それを聞いてカズハの顔が赤くなった。

「でもこれでよかったわね。絶対攻撃魔法が使えないということじゃなくて」

少しメイカがホッとしているのに気づいた。

(やっぱり攻撃魔法使いも欲しかったのかな)

そう思ったものの自分が使えるとわかりすぐにその思考は消えていった。


「持ってきましたよ~」

森の中からケイタの姿が見えた。そして枝を何本か持っているのを確認できた。


「まだコウタ寝てる?」

ケイタが起きてからコウタは一回もテントから出てきてない。

「寝ていると思いますが」

「は~、一番頑張ってもらわないといけないのに」

ため息をついてメイカは起こしにテントに入る。

「コウタ~、起きなさ~い・・・・あれ?」

そこにはコウタの姿がなく、布団まで消えていた。そして、布団があったであろうそこには、人一人分くらいの穴があった。


「コウタがきえたぁぁぁぁぁ」

メイカが叫ぶと二人もテントに入る。

「なんで・・・・私が起きた時はいましたよ」

「なら、いつ・・・・」

流石に起きた時に横に大穴が開いていたら気づいているはずだ。

「でも、大きな音なんて・・・・」

そこでカズハがひらめいた。

「まさか、私が魔法を使ったときじゃないでしょうか」

そういうと二人は「あ!」といって納得した。

「でもそれだと、ジャストタイミングで穴が開いたのよね」

となると約30分前に開いたようだった。


「どうする?追う?」

「それしかないと思いますが」

三人の意見は一致し追うことになったものの行方につながるのが穴一つだった。

「流石にここを通るのは賢明じゃなさそうね」


「煙でも焚く?」

「それではコウタが死んでしまう可能性が」

「それもそうね」

なかなかいい案が浮かばなく三人は立ち尽くした。




そのころコウタは、


「zzz・・・・・・ん?」

起きると見知らぬ場所にいた。

「ん!?」

周りをみるが状況が全く読み込めず、数秒間静止していた。

「ここ・・・どこ」

改めて周りをみると土で固められていた。

「なにこれ地中にでもいるのか?」

その後持ち物を確認してみると服しかなかった。隣には布団、剣はテントにおいてあるのでもってはおらず、普通に寝たためなにも持っていなかった。

「いたずらにしては凝り過ぎているしな~」

そう思って彼は慎重に出口へ向かった。彼が寝ていたフロアを抜けると通路は迷路のようになっておりところどころ部屋があったり、分かれ道があったりしていた。

(うわ~行き止まりだ~。一応来た道は覚えているけど)

と引き返そうとした途端、後ろから声がした。

「ヒトリツカマエタラシイナ」

後ろを振り向くと姿はなく声は少し奥からしているようだった。そして声の正体をみるように部屋の陰に隠れた。

「コレデナントカショクリョウハカクホデキタナ」

(うげ)

その声の正体はゴブリンだった。見える限りでは2体おり、会話しながら進んでいる。ある程度聞き取れる会話からコウタの脱走はばれてはいないようだ。

 ゴブリンたちはコウタの部屋のほうへは来ずに分かれ道の逆のほうへいった。

(一旦引き返すか)

ゴブリンの姿がみえなくなるのを確認すると足音をなるべく立てずに戻りまた違う分かれ道を進む。

「この部屋は」

その部屋には机と明かり、本やベッドがおいてありみるからに誰かの寝床だった。

「これは使えそう」

コウタは明かりを取った。その明かりはアルコールランプのような形をして中身を確認するとアルコールの匂いがした。

「ん?これは?」

机の上の本をみてみると字は何書いてあるのか読めないが間に鍵が挟まっていた。

「これは何の鍵だ?」

ランプと鍵を別々のポケットにしまった。そしてベッドの下も調べるとそこには小さな箱が置いてあった。

「お宝の予感」

そう思いコウタは開けるとそこには、赤いルビーのような宝石があった。素人からしてもいい宝石だとわかるぐらいだ。

「確かケイタの父は鑑定士だったな」

ふと宝石をみて思い出す。ケイタの父は鑑定士という宝石や素材を鑑定する人だ。現在ケイタの父は死んでしまっているがケイタもある程度は鑑定できるらしい。

お金がもらえるとにやけながら、部屋をでて奥へ進むと少し広い空間にでた。

少しの足音だけでもかなり反響する。

すぐ引き返そうとするが後ろから声がして戻れなくなってしまった。

(まずい)

彼はすぐに走り、このフロアになにかないかを調べた。だがこれといっていいものはなにもなかった。

「ナゼココニイル」

「ダレダ」

(見つかったぁぁぁぁぁぁぁぁ)

とうとう見つかってしまった。ゴブリンは3体いて1体は杖、2体は棍棒をもっていた。

「ヤレ!」

杖ゴブリンが命令を下すと2体のゴブリンが迫ってきた。そして杖から光が出たかと思いうとコウタのしたに魔法陣がでてきた。

「なんだこれ?」

コウタは光に包まれたがなにも起こらなかった。なんとか2体のゴブリンの攻撃もよけて距離を取る。

「ナゼキカナイ」

杖ゴブリンが驚きながら何度もコウタに魔法を打ち続けたがなにも起こらなかった。

「ナゼダ、ウゴキガテイカスルハズダ」

杖ゴブリンが解説してくれたおかげでなんとか状況が読み込めたコウタは少し鎌掛けてみることにした。

「なら俺に逆の魔法掛けてみれば?」

そういうとゴブリンはなんとか意味がわかるようで杖ゴブリンが試しに使ってみた。すると、

(少し軽くなったぞ!もう少しやってみるか)

「あれ、これは効いたぞ。やっぱりその魔法がダメなんだな。そこの二人に掛けてみろよ」

そういうとまんまと騙され、2体のゴブリンに移動力低下の魔法をかけた。その瞬間コウタは走り、ポケットにいれていたランプを杖ゴブリンに投げる。

「ウゲァ」

アルコールを被った瞬間に、コウタは杖ゴブリンに向けて火おこしの魔法を使った。もちろん燃え広がり杖ゴブリンが悶え、脱出することが可能となった。

「杖。もらっていくよ~」

「ギザァマァ」

杖を奪いなんとか脱出したコウタはすぐに出口を目指すために走った。だいたいのマップは把握し、残す分かれ道は最初のゴブリンのところとまた違うところの2つだった。

ゴブリンに遭遇するのはまずいので違う方へいくとまた分かれ道があった。それを右へ行くと牢屋みたいなところにでた。

「ここは」

コウタの声に反応したのか奥から声がした。

「助けてください!」

(人の声!)

奥へ行くと牢屋にとらわれている人が5人いた。そのうち、男女二人ずつの子どもと一人が大人の男性だった。子どもたちは少し衰弱しており大人のほうも元気とは言えないような状態だった。

「今助けます」

そういったものの牢屋は固く、鍵がなければ開けられなかった。

「鍵?・・・そういえば」

思い出し、ポケットの鍵を取り出すとそれはピッタリとはまり牢屋を開けることができた。

「さぁ、逃げましょう。すぐにゴブリンたちがくるかもしれません」

コウタの掛け声で一斉に動き出す。なんとか動けるあたりで、長時間走るのは無理そうだった。

 コウタは囚人たちを連れ、少しもどり分かれ道の左の方へ行く、すると少し光が見えてきた。

「出口だ」

外には木がみえ、出口まであと20mというところで後ろからゴブリンの声がする。

「きぁ!」

その途端、一人の女の子がこけてしまった。立とうとするがその間にもゴブリンたちが迫ってきて、目と鼻の位置までくると手に持っている棍棒を振りかぶった。

______バキィ!

なにかが折れた音がした。囚人の目がその折れた音に注目するとそこにはコウタが棍棒を腕で押さえていた。咄嗟のことで杖では受けとめられず腕で受け止めたため、腕が折れた音が響いたのだ。

「速く逃げて!ここは俺に任せ・・て」

コウタが叫ぶと囚人たちは一斉に走り出し、こけた女の子も走り出す。だがその間、

「棒なんて抜かなければよかった」

という言葉を聞いた。

 なんとか囚人たちは出口を抜けて森の奥へ消えてゆくのを確認した。だがもちろんなすすべもなく、捕まった。顔を燃やした恨みとにがしたことで腕をもう一本折られて、囚人たちのいたところに収容された。




コウタが収容された30分前、なにをどうすればいいのかわからなかった3人はとりあえず戦闘準備という段階まで一応していた。

「ほんとにどうするの?」

何も案がないまま戦闘態勢にはなっておりいつでも出撃可能だがどうすればいいのか全くの八方ふさがりだった。


そしてそのまま30分が過ぎると、村の奥から叫び声が聞こえた。

「この声は?」

3人は声の方へ行くと子供と大人合わせて5人いた。

「助けてください!私達ゴブリンにとらわれていたんです!」

とても動揺している男性を少し落ち着かせると、子どもたちが次に言葉を発した。

「僕たちお兄ちゃんに助けてもらったんだ。でもお兄ちゃんは一人で残って!」

その報告を受け「残念ね」と諦めようとした途端にこけた女の子がある言葉をいう。

「そのお兄ちゃん、最後に『棒なんて抜かなければよかった』っていってた」

その瞬間3人の頭に電撃が走る。

(((ん?)))

数秒頭を整理し、メイカがいった。

「早速助けに行くわよ。道を教えてちょうだい」

そういって子ども達をテントに預け、ケイタを留守に置き、メイカとカズハと男性でゴブリンのいた場所へ向かった。



またそのころコウタは、

「いたぁい、いたい」

腕が動かせず、うつ伏せで寝ていることしかできなかった。だが突然大きな叫び声がする。

「ギャアアアアアアアアア」

「ダズゲデェェェェェェ」

「アアアアアアアアアアアアアアア」

耳を澄ませるとそれはゴブリンたちの叫び声だった。

「助けに来たのか」

そう思い牢屋の柵へ近づき、出口のほうを向くと奥から黒い高さ3m長さ5mぐらいの黒いなにかが頭を出した。


「ゴブリンの次は巨大アリかよ」

次々に起こる災難にもはや呆れていた。そしてそのアリの口にはゴブリン特有の紫の血がべっとりとついていた。

「俺も死ぬのか」

だんだんとアリがコウタに近づき柵まで差し掛かった途端、突進をして壊そうとしていた。だが、柵はビクともせず壊れる様子がない。

「助かった?」

________ドンドンドン

少し安堵すると、食欲旺盛なのか意地でも壊してやるかと何度も打ち付けていた。


「あ~旅、終わるの早かったな~」

そういってアリが柵を壊す様子をみていた。




男性の道案内は完璧でゴブリンの巣窟にはすぐについた。

「ここにコウタがいるのね」

二人は入口をまじまじとみる。

「でもこの穴、ゴブリンにしては大きすぎないかしら」

入口は5mほどありだいたいゴブリンは人間と同じ身長なので確かに大きく感じる。

「さて、あなたはもうケイタのところにいっていいわよ」

「わかりました」

先に男性をケイタのところへ逃がし、残るはメイカとカズハの2人になった。

「ここに入るんですね」

カズハが若干嫌々そうな顔をしている。

「そうよ。逆にいい機会じゃないかしら」

そういいメイカは余裕な表情で入っていく。

「そんな顔してる場合じゃないよね。私も彼を助けないといけないし」

覚悟を決めてメイカについていく。入って少し歩くとピチャと音がした。

下を見るとゴブリン特有の紫の血が足にべっとりついていた。

「うげぇ、コウタがここまでしたの?」

最初はコウタがやったのかと思ったがすぐにコウタではない予感がメイカにはした。そしてその血の中で足に金属の何かが触れたような気がした。

「ん?」

それをみると鍵だった。メイカはそれをポケットにしまい手に付いた血を払う。

「血があっちに続いてる」

血が分かれ道のほう左に向かっていることにカズハが気づいた。

_______ゴォン!

突然血の向いている方向から大きな音がなる。すぐにメイカとカズハが顔を合わせて走って向かった。するとそこには巨大なアリと牢屋の中で寝そべっているコウタがいた。

「コウタ!」

メイカが叫ぶとコウタはこっちをみる。だがアリもみてきた。

「ギィ!」

檻の外で食べられると思ったアリは一目散に向かってくる。

「きゃぁ」

そのでかさにカズハは少し叫ぶ。だがメイカは隣の部屋をみると鍵がついていることに気が付いた。

「まさか」

鍵に気づくとすぐに鍵をカズハに投げた。

「私が時間を稼ぐからその間に鍵を開けてコウタに」

カズハは鍵をキャッチしメイカの指示にしたがう。

「ギィィ」

アリが大きな口のはさみをメイカに向かって開き食べようとする。だがメイカはすぐに剣を抜き、口のはさみを弾く。それに若干アリが後ずさる。

「すご」

思わずカズハが声を出してしまったがその隙にコウタの元へ向かう。

「大丈夫!?」

すぐに鍵を使い柵を開く。

「両腕折られた」

「!!」

その報告を聞いた後腕をみると青く大きく腫れている腕をみて思わず口を押えた。

「今すぐ応急処置をする。治すにはテントじゃないとうまく治せない・・・かも」

そういってカズハはすぐに回復魔法をかける。

「ふぅ、少し楽になった」

コウタは痛みが引いたことにより少し笑顔をみせるとカズハも安心して笑顔をみせた。

「そっちは大丈夫なようね」

そういってメイカは一歩踏み出し、もう一度きた噛みつきを同じように捌く。そしてさらにアリの下に行き腹を裂いた。アリの外側は硬いもののメイカの剣は容易く裂くことができた。そしてアリはバタッと音を立てて倒れる。

「よし」

安心して二人に向かおうとする。だがまだアリは生きていて静かにメイカに近づく。

「後ろ!」

カズハがそれに気づいた。だが遅くいまからでは防御に間に合わない。

「間に合えぇ!」

メイカが向いてからでは間に合わないのでカズハは燃やす魔法をアリに向けて放とうとする。それにメイカが気づき、前に飛んだ。

するとアリの頭が少し燃え、怯んだ。

「いま!」

メイカはすぐに立ち上がりアリの脳天を貫き完全に息絶えさせた。

「ふぅ~」

今度は周りをみて二人に近づく。メイカもコウタのけがをみて少し動揺していた。

「ごめんなさい」

その言葉は自分を責めているようだった。

「なんで謝るんだ。俺が連れ去られたのが悪いのに」

謝れるのに少し苦手なコウタは早急に否定した。

「いえ」

言葉はここでおわったがメイカはコウタが思っている以上に責任を感じていた。

「コウタ、足を曲げて」

メイカの指示に従い足を曲げる。するとメイカは曲げたところに左手を伸ばし右手で首をもち、お姫様抱っこのようにコウタを持った。

「ちょっ!恥ずかし」

コウタは抵抗するがいつもとは違うメイカの顔をみるとすぐに身を任せた。



帰りは行きの二倍早く着いた、三人は皆に迎えられコウタはすぐにテントに運ばれた。テントにはコウタ、メイカ、カズハ、ケイタがいる。そしてコウタにカズハが付いた。

「まずは、骨を戻します」

まずは回復魔法を折れた両腕に掛ける、それを維持したまま、まずは左腕を戻そうとする。

「いたたたぁぁいてぇぇぎぃぃいぃぃ!!」

想像以上な痛みがコウタを襲う。コウタが白目を向きかけた時に左腕が戻った。

「ふぅ~」

コウタは多くの汗を掻き少し休む。そして数分後に再開された。2度目も同じような痛みが彼を襲う。だが次は耐え切れずに白目を向いて失神した。

「大丈夫!?」

すぐにメイカが掛けよるがカズハがコウタの状況を説明した。

「大丈夫・・・・痛みで失神したとおもう・・」

自信なさげに言うがその判断で正しかった。

「コウタを休ませてあげよう」

そうケイタは二人にいう。

「わかったわ・・・」

カズハが回復魔法を維持したままテントをでた。

「私はここに残る」

メイカは責任をもって待つことにしていた。

「なら私は昼食を作りますので、呼んだらきてくださいね」

居づらくなった空間から抜け出そうとケイタは理由をつけてテントをでる。

「ごめんなさい」

メイカは泣きそうな顔で寝ているコウタに声を掛ける。


「馬鹿ですかあんた」

その声にメイカは驚いた。声の主はコウタで、ジト目で彼女の顔をみていた。

「起きてたの!?」

その答えにゆっくりと体を起こした。

「今起きたんですよ。それにあんたが責任を感じる必要ありませんよ。まずこの旅を始めたのも俺ですし、この事態を招いたのも俺ですから。まだなにかあるのでしたら夜、話しましょう。あんたがテンション低いとみんなも低くなるんですよ。責任を感じているのでしたら俺でなくチーム全体に向けてください」

コウタは自分なりにうまくいったと少し笑う。だがメイカは彼の胸に倒れこんだ。

「ごめんなさい。もう少し、このままでいさせて」

そういってコウタはじっとまった。だんだんと胸が湿っていくのを感じながら。


一時間後ケイタ達が昼食を作って呼びに来た。

「そろそろ行きますよ」

コウタが声を掛けるとメイカは顔を上げた。

「ええ」

目が少し赤くなっているもののその顔は騎士の顔をしていた。

 コウタには両腕にギブスがまかれているのでメイカが体を支え立ち上がらせた。

「ありがとう」

お礼をいいテントをでると・・・

「わぁ~あの時のお兄ちゃんだ~」

「体大丈夫なの?」

と助けた子ども達が迫ってきた。途中バランスを崩しそうになるがケイタがすぐそばによる。

「助かった」

「全員コウタが救った人たちだぞ」

それを聞いた途端コウタは照れ臭くなり顔が赤くなる。けれど子供たちの顔をみると救えてよかったと思うようになっていった。

「さて、食べますか」

コウタがそういうと計9人が卓を囲んだ。腕が使えないコウタが食べるのに苦戦していたが子どもたちが食べさせてくれた。少しこぼれたりもしていた。

 食事が終わり、ケイタが子ども達をどうするか話した。

「コウタが寝ている途中に連絡取りましたが、今日は日が暮れてしまうため明日の朝に4位がくると、そしてほしいものがあればすぐに連絡してくれ。だと」

その報告が終わるとメイカがため息を吐いた。

「彼女がくるか~」

何かとてもまずいものがくるかのような言い方をした。

「知ってるの?」

「友達だ。けど頭が切れるやつで、よくいたずらするんだよ」

その顔からいたずらの度合いが想像以上だと察した。


「そういえばなにを要求するか決めた?」

メイカが手紙の最後にあったことをいった。

「決めてない」

「食料とか?」

「医療キットとか?」

コウタだけ決めてなく特にほしいものはないようだ。

「わかったわ」

みんなの要望を書いた手紙を伝書鳩に持たせ王国に飛ばした。

「今日は何もできないわね」

メイカが言う通り子供たちもいるので冒険へは出られそうになかった。そのことにより子どもたちの相手をするだけでもう日が暮れた。


 そして夕食も終わり深夜を迎えると二人の冒険者が起きていた。

「眠れないの?」

「腕が少し痛くてね」

起きていたのはメイカとコウタだった。二人は荷車に座って星をみている。

「まだ責任を感じてる?


「ええ」


「なぜそんなに」


「私がこの中で一番戦闘経験があるからよ」


「それが原因ですか」


「私は国王様に命令された。それの意味がわかるよね」


「もちろん。出された命令は絶対成功させなければならないでしょ?」


「そう。その命令はあなたの使命を守ること」


「でもおかしい。それだけではない気が・いや、まさか・・・・・

いままで仲間の命を背負ったことがないとか?」


「ばれちゃったか。そうよ、私はいつもザイヤの下で動いていた。だから隊長とかそうゆうのははやったことがないの・・・でもできると思っていた。けど、私は!

あなたが失踪したときなにもできなかった・・・・・・・・・はぁ」


「手掛かりがなかったんでしょ?仕方がないことだと思うけど」


「あなたはそれで済ませてくれるのね。けど、私がもっと早く向かっていればあなたが怪我をすることなんてなかった」


「そう?逆にいえば早く向かっていなければ俺は自分の力に気づけなかったと思うけど」


「どういうこと?」


「実はあの巣窟の中で魔法使ってくるゴブリンに移動低下の魔法を使われたんだが、俺には効かなかった。ゴブリンが試しにほかのゴブリンにしたときには効いたけど」


「そんな力があるのね。でもそれだけでしょ?」


「まぁね。けどこれでこの仲間の欠点がいま失われたでしょ?」


「まだ足りないと思うけど」


「そう、じゃあ。前言ったことを少し変えていうよ」


「なに?」


「この旅は俺が始めてしまったもの。最初に棒を抜きさえしなければメイカをこんな目にさせることはなか・・・・」


「やめて!これはあなただけの責任じゃ」


「そう思ってくれるのなら、そっくりそのまま返すけど、メイカが背負っている責任は仲間全員の責任、俺がさらわれたのも悪いし、三人が行動できなかったのも悪い。けどメイカはケイタにいった『簡単な旅じゃない』って。だからこれで悩むようじゃメイカらしくないし、これではっきりと分かった。

俺達はまだ弱い。剣の経験がない俺とケイタ、攻撃魔法があまり使えなく少し人見知りのカズハ。剣の腕だけで心はガラスのメイカ。だから一番戦闘経験があるとかじゃなく全員一緒。全員が魔王討伐の初心者。メイカだけが飛びぬけていい訳でもない全員1からのスタート」


「けど私は自分の役目を果たせなかった!」


「メイカは剣の腕を十分に振るった!そのおかげで俺とカズハはアリに喰われずに済んだ!まだ騎士の気分でいるんなら城に帰ったほうがいい!王国の騎士は民と城を守るために戦うんだろ?だが今は違う!守るのではなく攻めることをこれからしていくんだ!それはもう騎士じゃない一人の冒険者なんだよ!」



コウタが怒鳴るとメイカは涙を垂らしながら崩れた。


「私は!私は!」

騎士じゃないと言われたのが相当きたのだろう。そして覚悟したように顔を上げて剣を取り出し自分の長い髪に添える。

_______スッ

切られた金髪が風に飛ばされ飛んでゆく。


「いいの?」

コウタが心配そうに見えるがメイカは吹っ切れたようだった。

「ええ、もう私は騎士じゃない。一人の冒険者」

笑顔で彼をみて彼も笑顔で返す。

「ありがと・・・」

「こちらこそ」


会話シーンがうまくできているか心配です。そして登場人物の特徴を伝えるのが下手でおおざっぱに説明しますが、メイカの髪を切る前は長髪でした。コウタとケイタは髪が耳まであるくらい。コウタが黒髪、ケイタが茶髪。カズハは黒髪ロングです。

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