17
ゴブリンたちが見えなくなって5分くらい馬で走った。
「ここまでくれば安心ね」
馬車が止まり4人は降りた。
カズハが探知魔法をかけても魔物はいなかった。
メイカは疲れていなかったもののケイタは初陣だったので疲れていた。
「いい経験になった?」
とメイカが聞くとケイタは苦し間際に頷いた。
ケイタはまだ魔物を殺した感触があるのか、短剣を握りずっと見る。
「ふ~」
と深呼吸をして剣を鞘に納めた。
それを見ていたコウタも自分の剣をみた。コウタも戦闘経験は洞窟でのゴブリン戦しかないので慣れておらず疲れていた。さらに五感強化の影響も少しあり感覚が鈍っている。
(連戦がくるときついかもな・・・ケイタも頑張ってるし俺も頑張らないと)
カズハも戦闘は洞窟での巨大アリとの戦闘くらいで数を相手にするのに慣れてなく魔力を少し使い過ぎた。
(ゴブリン相手ならもう少し魔力を落とした方がよさそう)
カズハの魔力量は普通の魔法使いたちよりはあるものの、五感強化、探知魔法も多用していて限界が来そうになり眠気が来ていた。
「すみません」
カズハがメイカに声を掛けた。
「ん?」
カズハはメイカに眠気が来たことを伝えると了承してくれて馬車の中で寝ることになった。
「カズハが休息を取っている間も馬車を進めるからその間、右偵察、左偵察、運転をそれぞれ決めるわよ」
じゃんけんを結果、左をコウタ、右をメイカ、運転がケイタになった。
ケイタはできるだけカズハを起こさぬようにゆっくりと移動している。
そのおかげでケイタも歩きながら調子を整えていく。
(このままなにもでなければいいけど)
メイカは疲れてはいなかったものの3人が心配だった。それゆえいつも以上に目を光らせている。
月が雲に隠れ何も見えなくなると止まり、月が現れると進むを繰り返していると日が昇ってきた。
「こんなに歩いたのか」
メイカも正直驚いていた。時間を忘れていてずっと歩いていた。日の光を浴びると歩き続いた疲れを実感してしまう。
「もう歩けない」
コウタはドスッと馬車に腰を落とした。その衝撃でカズハが起きる。
「おはようございます」
朝は強いのか日の光を見るなりすぐに目が覚めていた。
「ごめん。起こした」
「いえいえ」
コウタと正反対でカズハの疲れはもう取れていた。
「少し休憩にしま・・・」
メイカも少し疲れて休憩を命じようとした途端、ケイタが何かを発見した。
「村があります!」
馬車から立ち前を見ると村があるのが見えた。家は10坪ほどでそれほど多くはないように見える。
「じゃ、そこで休憩にしましょう」
メイカの指示の後ケイタは少し急いだ。運転疲れもあり、早く休みたかったからだ。
「着きました」
勇者御一行は村に着いたものの、ひとひとり出迎えてくれる人がいなかった。それどころか人の気配が全くしない。
「ここで待ってて」
メイカは待機を命じ、一人で近くにある家を見に行く。
「ごめんください」
小声であいさつしながらゆっくりと扉を開ける。だがその家には誰もいなかった。
「おかしい」
メイカは家の中の異変に気付いた。それは誰もいないのに、食器がテーブルの上に置かれていることだった。食器だけが置かれているだけではまだしもその食器の上にはちゃんと料理が置いてあった。しかも荒らされた形跡もない。
「どういうこと?」
メイカは恐る恐る料理を調べた。触ると冷たく、作られてから半日は立っているだろうと予測した。
「こっちもでした」
家のことを伝えて3人にもほかの家を調べてもらうとすべての家が同じような状況だった。近くにある小さい畑も荒らされていない。
「まだ休めそうにないわね」
メイカは少し焦った。状況が最悪だったからだ。人が一人いればまだしも、だれもいない。ただ席を外しているだけなのか、それとも魔物に襲われたのか。襲われたにしてもどんな魔物にやられたのか。
メイカは必死に推理する。
(こういう推理は3位の奴が得意なんだけど)
メイカは騎士仲間の3位のことを思い出していた。
「メイカさん!」
ケイタがなにか発見したようだった。
「足跡です」
ケイタが発見した足跡はたくさんあった。それもすべて同じ方向を向いている。数は40ほどあった。
「この足跡は人間じゃなさそう?」
カズハが人間とは少し小さい足跡を見つけた。メイカの経験からすぐにゴブリンの足跡だと判明した。
「この地域ゴブリン多すぎない?」
コウタはまたゴブリンかよとため息を吐いた。
「とりあえず足跡を辿りましょう」
足跡は500mほど続いていた。そしてそこには大きなクレーターのような穴がった。
「静かに」
そのクレーターからたくさんの声が聞こえてきた。メイカはゆっくりと覗くと一瞬で表情が変わった。
「ついてない」
そこには20体くらいのゴブリン、2体のオーク(身長は4mほど)、20人ほどの村人の姿があった。