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「いまのところ魔物はいない」
ソータに教えてもらった探知魔法でカズハが周りの状況を探る。
「よかった~」
コウタは安心して松明に火をつけた。
「ちょ!」
松明の火を見たメイカはすぐに火を消した。
「ここで火を使ったらだいぶ目立つわ」
メイカは助言した後カズハにもう一回探知魔法を使わせるよう指示した。
「大丈夫なようです」
それを聞いてメイカは安心する。
「とりあえず集まって」
メイカは馬車に集まるよう指示した。
「どうするの・・・?」
カズハが聞いた。
「まずは、ここに残る。ここら辺の地図を知っていたらいいけど、わからないからね」
メイカの指示が聞こえるも姿は暗くて見えない。だが前にもらった味方の位置がわかるシールでは近くにいることが分かった。
「「「了解」」」
3人はメイカの案に乗った。
「そして・・・」
メイカは次の説明に入る。
メイカの説明はこうだ
1.暗く見えないため夕飯はなし。ただしそれが食べられるものだとわかれば食ってよし。
2.寝る際は2組のローテーション(コウタとケイタ、メイカとカズハ)で交互に寝る。
3.基本的には馬車から出ず、敵がいる、月明かりが周りを照らした場合は外に出てよいとのこと
「とりあえず先に私たちが寝るから、何かあったら起こしてね」
そういってメイカとカズハは寝た。途中ごそごそという音が聞こえたので布団を出したのだろう。
「じゃ、俺達は見張りしますか」
ケイタの合図から1時間たったが特に変化はない。2人は疲れたのか、だれてきた。
「なんもこねーな」
「こないことがいいけど。いつまで続くんだろ」
二人はあくびをしてとても眠そうだった。
「そういえば、ケイタは今日の分の手紙書いたの?」
手紙のことを聞くとケイタは思い出し、目が覚めた。
「書いてなかった」
一応手紙の書く紙とペンはポーチに入っているので位置はわかるが、見えないので書くことができない。
「みえない」
手紙を出すことが生存確認とイコールしているのでやめられない。
「なら・・・・」
コウタはある提案をした。
「箱の中にろうそくを入れて書く。上に布を被せれば少しは光が出なくなるでしょ」
コウタの案は少し期待できたのでケイタは乗った。そしてその手順で明かりをつけ、顔と手を箱の中に入れその上から布を被せた。
「どう?」
少し明るいもののそんなにまぶしくはない。
「大丈夫」
_____カタカタ、シュッ、シュッ。フッ
ろうそくの火が消える。どうやら書き終わったようだ。
「終わった~」
終わるとケイタは伝書鳩に手紙を持たせた。伝書鳩は呼ぶと腕に乗ってくるので暗くても大丈夫だった。
「いってこい!」
ケイタが腕を振るとバサバサと羽音をならして飛んで行った。
_____サササササササッ
羽音が聞こえなかった瞬間、遠くから足音が聞こえた。
「まだ五感強化効果切れてなかったかな」
先に気づいたのはケイタだった。
「コウタ、二人を起こして」
コウタはすぐに状況を察し、2人を起こした。メイカはすぐに目を覚ましたもののカズハはまだ少し寝ぼけている感じがした。
「わかりました」
コウタ起こすとすぐにカズハに探知魔法をさせるように指示した。
「え・・・」
探知魔法を使うとすぐにカズハの目が覚めた。
「魔物の数およそ・・・30ほど。ゴブリン」
「「多!」」
コウタとケイタは驚いていて、メイカはため息をついた。
「これは時間かかりそうかな」
丁度その時、雲に隠れていた月が現れ周囲を照らした。
その光は強く、色まではわからないものの形ははっきりと分かった。
「全員武器を持って!」
メイカの合図で全員が武器を持つ。その動きを見てゴブリンたちは一斉に勇者御一行へと走ってきた。
「カズハ、俺に五感強化を」
カズハはコウタに『五感強化』を掛けた。コウタはまだ五感強化魔法を試していなかったため、特別に使用が許可された。そしてこの夜中じゃ思うように動けないのも理由に入っている。
五感強化を付与されたコウタには、様々な情報が頭に入ってきた。近づいてくるゴブリンの足音や、におい、形や身に着けているものなどがはっきり捉えることができる。
五感が強化されたコウタはその効果を実感すると同時に真っ先にコウタに襲い掛かるゴブリンに気づく。
「あぶね!」
ゴブリンは1mくらいの棍棒を持っており、コウタはそれに殴られそうだった。
間一髪でかわし、切れない剣でゴブリンを肩から打ち付けた。
「ギィ!」
そのゴブリンは思いっきり地面に落ち、顔を打ち気絶した。
「この調子で倒しますか」
「はぁっ!」
メイカはゴブリンの攻撃を華麗にかわし、切っていた。コウタが1体倒すころには2体倒しており目が慣れるにつれてスピードが速くなっていった。
「これなら時間かからなそう」
(隙を見て・・・・切る!)
ケイタはヨルの教えを守り、ゴブリンの動きをよくみていた。
ゴブリンがケイタに攻撃を仕掛けるが、ケイタはそのゴブリンの動きを捉えていたので避けるのは容易だった。ゴブリンは避けられたことにより、武器を地面にたたきつけ体が硬直する。
(ここだ!)
その隙をケイタは逃さず、短剣でゴブリンの背中を刺した。ゴブリンはそのまま息絶えた。
「結構きついな」
魔物を殺したのは初めてでかなり精神に響いた。
「でも・・・」
これからこのことが続くのかと覚悟を決めて、再びゴブリンと対峙した。
「炎よ」
カズハは魔法の集中で手一杯だった。魔法を放つタイミングがゴブリンの攻撃が当たるギリギリで巻き込まれそうになる。
「もっと早く。電気よ!」
カズハが頭に電気のイメージを走らせ、放った。すると1体のゴブリンに当たるとさらに感電した。そして死にはしなかったものの倒れた。
「この魔法が・・・・効きそう」
それぞれが修行の成果を実感し、ゴブリンたちは1時間もせずに戦闘をやめた。死んだ者や逃げたもの、そのまま気絶しているものもいる。
「さて、今のうちに!」
メイカの掛け声を聞いた3人はすぐに馬車に乗った。そしてメイカは馬車を走らせ、その場を去った。
書き終わって気付いたけどそんな支援魔法役に立ってなかった・・・
次回は新しい町に着きます。