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「さて、もうすぐこの町をでていくから今のうちにここからの注意点をいうわよ」
ロンガードを出る予定の3日前にヨルが勇者御一行に座学を開いた。
座学を開いた理由は昨日の話し合いでメイカが食料に傷みやすいものもっていったことを思い出したからだ。この御一行の中で遠出の経験があるのはメイカだけ。そのため、道中毒キノコを食べて死ぬことがないよう講座を切り出した。
「とりあえずこれをケイタに渡しとくわ」
ヨルは一冊の本をケイタに渡した。
「サバイバルブック?」
ケイタはぱらぱらページをめくると、植物、食料、鉱石、魔物の情報が絵付きで載っていた。厚さは約5cmと分厚い仕様。
「魔物系は流し読み程度でいいわ。あなたたちが戦う魔物よりもこの地域付近の魔物しか載ってないからね」
本の説明をするが、ケイタはこの部厚さが気に喰わなかった。
「これ非常に読みにくいんですが」
ケイタが苦言を呈すると準備していたかのように4冊の本を机から取り出した。
「一応あるけどね4等分したのが。そっちの方がまとめてあるのよ。たとえば植物の欄にその植物を餌にする魔物の情報とかね」
そういい4冊の本をみると題名が『サバイバルブック -植物編-』とこのように食料、鉱石、魔物編もあった。
「どっちも渡しとくからあとで目をとおしといてね」
と本がケイタだけに渡されたことにコウタが気づいた。
「私たちの分はないんですか?」
ない。と答えた。理由としては意外と値段が高かったことと、一番注意力がある人に渡した方が重要な情報を見落としせずに済みそうとのこと。
本の解説が終わり本題に入った。
「さて、あなたたちが戦う魔物だけど。大きく分けて3つあるわ」
そこから魔物の話が長々と続いた。
「まず1つは魔王に従えている魔王従属派。
2つ目は自分の縄張りで暮らす自衛派。
3つ目は縄張りを探す放浪派。
おそらくあなたたちが戦う相手はほとんど魔王従属派と放浪派だろうけど冒険のときにやっかいなのは自衛派よ。
魔王従属派は簡単にいうと私みたいな騎士たちと思ってくれればいいわ。
自衛派は一つの城みたいな感じね。
なぜかっていうと自衛派の魔物は自分の縄張りだとほぼ負けなしの実力くらいに強いの。対策なしにうかつに踏み込めば相手次第で私達でも数秒を持たずにやられるでしょうね。ほんと城を攻めるようなものよ」
嫌な記憶でも思い出したのか。ヨルの額から汗が垂れる。
「例でいうとあなたたちが出会ったゴブリンは放浪派ね。そして途中ででてきたという巨大アリが自衛派。魔王従属派は、え~とたしか、ケイタとカズハが気づいた秘密扉を作ったゴブリンが該当するわね。わかるとおり同じ種族でも派が違う場合があるの」
一から魔物の説明をしてくれてコウタは少し興味を持ち始めていた。
「自衛派がいるって冒険中気づくものなんですか?」
コウタは自衛派について質問した。
「いい質問ね。自衛派はここからさらに二つに分かれて
敵を誘い出す誘導派。
敵を追い出す威嚇派がいる。
後者はわかるからいいんだけど、前者はほんとやっかいよ。この際だから説明するわ」
そんなに嫌だったのか顔が少し渋くなっている。
「1年くらい前かな。私が率いた6人分隊で遠征にいったことがあるのよ。そこにはメイカはいなかったね」
するとメイカが縦に頷く。
「私たちは一つの森に入ったの。見た目は普通の森と変わらないわ。けど50m進んだ時にあるものを見つけたのよ」
「あるもの?」
「蜘蛛の巣があったの。しかも超大きい。大人が7人以上は引っかかりそうな大きさ。最悪だったのはここからよ。その蜘蛛の巣を見つけてこの森をでようとしたらもうすでに周りは蜘蛛の巣だらけだったわ。そして上からカサカサ音がなると思ってみたら、全長5mほどの巨大蜘蛛がいたのよ」
コウタは想像するだけで嫌そうな顔をしている。当時ヨルはそれ以上の顔をしていただろう。
「すぐに撤退命令を出して私は時間稼ぎもかねてその蜘蛛と戦おうとしたのよ。けどね。私が攻撃しようとした瞬間すぐに糸で後方に下がって避けるの。動きも異常よ。一瞬で私の視界から外れるもの。完全に地の利があっちにあることもあるけど。その動きを見てすぐに私も撤退しようとしたけどね。気が付いたら分隊全員いないのよ。周りをみたけど誰一人いない。そして数十秒経って遠くから叫び声がしてすぐに分隊の一人だと気づいたわ。助けに行こうにもこの森じゃ死ぬから私はその隙に森をでようとしたの。けど、たくさんの蜘蛛の巣が顔や体に掛かってうまく進まなかったよ。
森から外の景色がみえるくらいに戻った時にうしろからカサカサ音がしたらまた巨大蜘蛛がいて次の標的が私になってたわ。その姿をみたとき気持ち悪すぎるのと恐怖で咄嗟に閃光玉を投げたら運よくきいてぎりぎり脱出できたのよ。森をでるとその蜘蛛はかえっていったわ。
外には分隊の人が3人ほどいてね。みんなにきいたら恐怖してそれぞればらばらに逃げたらしいのよ。そして生き残れたのが私達入れて4人。犠牲が2人で済んだのは奇跡かもしれないわね」
体験談を聞いたコウタ、ケイタ、カズハの3人はこれからの冒険に嫌そうな顔をした。
(俺達これ以上の魔物を倒すんだよな?)
コウタは自信がなくなっていた。それもそうだろう。まだゴブリンとスライム大きくてもアリしか出会っていないのにその王様を倒すなど想像もできない。
「ヨルでも勝てない相手って魔王討伐なんて夢のまた夢じゃ」
ケイタがコウタが言いたかったことを言ってくれた。
「大丈夫よ。その時はおそらく人間VS魔物の総力戦になると思うわ。だからすくなからず正面から戦うことはないでしょう」
(絶対正面から戦わない)
コウタは心に誓った。
「自衛派だけどね。絶対1度以上は会うことになるわ。魔王城までの道中に必ず通らなければならない道があるからね。聞いた限りだと~
悪い妖精の住む森
雪女のいる氷山
巨大バクのいる沼地
亡霊魔女の森
の4つね多分まだあると思う。名前しかしらないからこれ以上聞かないでね」
(悪い妖精・・・)
妖精に興味があったカズハだったがこの妖精には会いたくないなと思っていた。
「さて、まぁとりあえず終わりね。明日は食料のことを話すわ。とくにメイカは聞くように!」
ビシッ!とメイカに指をさしていうが、メイカは口笛を吹いて知らんぷりをかましていた。
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