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「で、どうでしょうか」
メイカ、ヨル、ソータが集まり、ソータが先に話を切り出した。
「どうってなにが?」
ヨルが一回目で理解できず聞き返す。
「いえ、あの子たちについてですよ」
それを聞いて納得したような表情をみせる。
「ケイタは素質があるよ。いずれは私を超すかもね」
冗談紛いにヨルがいうが、それでもだいぶケイタを買っていた。
「コウタも才能はあるわ」
それを聞いてソータは少し安心する。
「そうですか。カズハさんも魔力量、素質は十分です。ですが・・・」
欠点をあげようとすると3人がそろって口を開いた。
「「「経験が足りない」」」
やはりそこが欠点だった。三人とも魔物を相手したことがあまりない。
「でも、コウタとカズハは魔物と戦闘は少し経験してるわよ」
メイカが補足をする。コウタはゴブリンと戦闘、カズハは巨大アリと戦闘した。唯一戦闘がないのがケイタだがそれはヨルが補足した。
「ケイタは大丈夫よ。一応動物とかは食料調達で狩っていたらしいし、私が念を押しといたわ」
念を押しておいたが、ただの助言にすぎず、ヨルはケイタを信じて言った言葉だった。
『人間も相手するのは私たちの仕事』
ようするに魔物は任せた。ということだ。
「でもなんで私が選ばれたのか。不思議なんだけど」
メイカは今まで思っていた疑問を二人に打ち明けた。最初は二人悩んでいたが先に答えにたどり着いたのはヨルだった。
「実力じゃないかしら?」
一位のザイアは城の警備を任されているからでられないのは知っている。だがリーダー等の経験がないメイカが選ばれたのは自分でも納得がいっていなかった。
「簡単よ。三位の彼だとおそらく今のメンツと仲良くはなれない。四位の私は基本防衛だし、それ以下は逆に危ないし」
四位までが国王に認められているほどの実力であり、それ以外は四人と違って飛びぬけている実力がなく任せるには少し頼りないところがある。
「不安でしたら私達にいまみたいに相談するのもいいと思いますよ。あなたがチームを率いるのは初めてらしいので」
ソータが自分を心配していると察したメイカは口を閉じてしまう。
(不安・・・不安)
このままだと話が進まないソータは自分の疑問をぶつけてみることにした。
「なんでメイカさんはあの少年をあそこまで信じるんですか?」
(そんな質問・・・)
とこれまでのことを思い出す。
「彼にたくさんのことを教わったからよ」
それまで騎士のころでは教わらなかったことをたった数日間経過したのにも関わらずたくさんのことを教わってしまった。
「だから、私が強くなるには彼が必要なの」
それを聞いてソータはあまり納得してはいなかったが、ヨルがいい感じにまとめて一応報告会を終わらせた。
「ねぇ、メイカ」
ヨルがメイカを引き留める。
「さっき言った言葉わすれないようにね」
と固めさせた決意を解くまいとメイカにも念を押した。
「わかっているわ。それとこの後、開いてる?」
「?」
ヨルはいきなり誘われてびっくりする。訳を聞くと女同士の話がしたいらしく。まぁ後輩がいると話し辛いか、という結論にたどり着き飲みに付き合うことになった。
「久しぶりね。二人で飲むの」
二人居酒屋に入り、酒を飲んでいた。二人とも酒を飲める年齢なので問題はない。
「いや、ソータがいると話し辛いのよ。で、ケイタに押した念ってなに?」
単刀直入に聞かれてヨルはびっくりする。
「いや・・・念ってただの助言よ?助言」
ヨルはできるだけこのことについてはあまり探られたくはなかった。自分の失態とケイタをビビらせたことについてはメイカにいじられそうだからだ。
「助言ってなに」
少し酔っていてぐいぐい押してくる。断っても聞いてきそうなのでしぶしぶあのことを言った。
「ふ~ん。そんなことが」
思ったのと違う反応でヨルはホッとする。けどメイカの顔は少しむすっとしていた。
「気に喰わなかった?」
酔っているので多少のことは聞けるだろうと踏んだヨルは表情の訳を聞く。
「いや、私も似たようなことがあったわけよ」
メイカは勢いでコウタとの出来事をあらかた説明した。
すべて説明するのに30分ほどかかり、ヨルは少し呆れていた。
「ってことは、あなたは騎士をやめたのね」
友人の悩みを洗いざらい聞けてヨルは安心する。
「そういうヨルは、騎士を続けるのね」
「ええ」
二人とも決意が固まる。そしてメイカは気が緩み途端に眠くなる。
「ごめん」
と言い残し、顔を伏せ寝た。
「しょうがないなぁ」
ヨルは勘定を済ませ、メイカをおんぶし店を出た。
「あなたは皆を守るために騎士をやめ、私は彼を守るために騎士をする。か」
ふと頭に浮かんだことをつぶやくと少しにやけてしまう。
「なんか面白くなってきた」
その声は自分に向けているのか。寝ているメイカに向けているのか。ヨルはスピードを上げて大使館へと向かった。