2/12
ひかげの中に
少し肌寒い朝。
まだ一度も袖を通していなく
人の温もりに飢えた制服は
程よく体温を奪っていく。
ベッドの中で
あらかじめ暖めておいたタイツを
ゆっくりと履き
スカートのフックをかける。
ただそれだけの事なのに
何故か誇らしい気持ちが溢れてくる。
ローファーを履き
トントンっと爪先を鳴らす。
「いってきまーす。」
帰ってくるはずのない
返事を求めているのか
自己満足なのか。
それとも儀式的なものなのか。
間違いなく冷え切った毎日に
春が来たことはなかった。