風向きが、変わる
「ちょっと摩耶!
奏から離れなさーーーいっ!!!」
がらっと扉が開き、
黒髪ロングの女が
私に向かって飛んでくる。
一瞬、ホラー映画にでてくる
あの女の人に見えたのは
本人には言わないでおこう。
黒髪ロングは私に馬乗りになり
制服の襟元を掴み、揺する。
あぁ、服がのびるなぁ…
「梓先輩、重いです。」
黒髪ロングもとい梓先輩は
いつもこうだ。
会長の幼なじみらしいが、
いつも会長に
軽くあしらわれている。
テニス部の部長としては
有能だそうだが、私から見ると
ただのチョロインだ。
「摩耶、奏に何をしたのっ!?
事によっては
ただじゃおかないから!!」
めんどくさいなぁ…、いつも通り。
「まぁまぁ、
そこらへんにしてあげてよ。梓。」
会長が一言発すると、
梓先輩は顔を真っ赤にさせて
私から退いた。
恐るべし、会長パワー。
もっとも、会長は
梓先輩の気持ちに気付いていないようだが。
「まーた、やっているのですか?
梓先輩もすこしは
学習したらどうでしょう?
後輩にやきもちを妬くなんて、
はしたないですよ。」
霧島先輩にいわれ
悔しそうに唇を噛む梓先輩。
これじゃあ
どっちが先輩かわからないな…。
「…ただ
奏を守りたかっただけなのにっ…。」
うつむき、そっと呟く彼女を見て
私はなんだか悲しくなった。
そんなに、人を。
人を、好きになったことが。
私は
「摩耶、どうかした?
気分悪いの?」
目の前に、心配そうに覗き込む
梓先輩。
「ちょっと、考え事していました。
すみません。心配かけて。」
言い終わった後に微笑む。
「もぉ。心配させないでよ。」
「摩耶らしいですね。」
二人とも安心したような笑みを
浮かべていたが、
私には会長の探るような視線が
ただただ恐ろしかった。




