平和な逃走劇
初めて書いてみたので誤字、脱字があるかもしれません。
遠慮なく言ってください。
拙いものですが、最後まで読んでいただけると幸いです。
四元素、それはこの世を構成する要素である。
しかし、それは厳密には元素という物質の事ではない。
そもそも元素という物質は人の力で干渉出来ない、いわばこの世の理によって縛られた存在だと言える。
だからこそ遙か太古の人々は地震は神の怒り、雨は神の涙、風は神の息、炎は神の裁きと考えた。人の力で干渉出来ないのだからそれは神の力であると怖れた。
しかし、もしもその理の中の物質に
人の力で干渉できたとしたら?
神の力が実は人の力であったとしたら?
それが本当ならかつて崇められ、神話にすらその名を刻む神々しい天界の神達はただの人であったということになる。
そしてその証明こそが四元素。この世を構成する要素。人の力で干渉でき、その効果が物質にまで影響を及ぼす存在である。
古来より秘匿され、伝説中の知識とされていた四元素が一般の知識として受け入れられてから約100年、世界では二つの組織による勢力争いが起こっていた。
自然系四元素を基礎として伝説の技術と知識をそのままに操り、自然の力で世界統一を目指す自然系四元素組織、アストラル
人工系四元素を基礎として元素を新たに生み出し、普及させることで世界の利益獲得を画策する人工系四元素組織、オーバーウェルム
二つの組織は繁栄とおける名の戦争で互いを牽制したが、直接の戦火を交えることはなかった。
しかし、今より10年前世論の流れを受けた各国が国を挙げて二つの組織の一方をそれぞれ支持するようになったため、二つの組織の争いは地球規模で直接戦火を交える全面戦争へと発展した。
これは四元素によって神という存在も魔法という幻想も否定された世界の物語。
•
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
夜の街に、追う男と追われながら叫ぶ少年。それだけで何やら事件性を連想させる内容だが、この場合は事件には当たらない。
追われる少年はチンピラに絡まれていた少女を助けたというわけでもなく、悪の組織に立ち向かったわけでもない。
追う男はチンピラでもなければ、組織の構成員でもない。
簡単に言ってしまえば追われているのは不良グループの少年で、追っているのは警察である。
「うわぁぁぁ‼︎だから嫌だったんだ‼︎あいつの考えた作戦に乗るのは‼︎‼︎」
俺はこの台詞をこの一年で何回繰り返したのだろうか?と俺は路地の角を回りながら思った。
後悔するならやるなよ、と過去の自分に言いたいがこんな状況になってしまったのだから仕方がない。
「新谷進一君、ちょっとでいいから止まってもらってもいいかな?そろそろ僕は疲れてきたよ」
男、つまり警官が話しかけてきた。
話し方からも分かる通りこの警官と俺、つまり新谷進一と知り合いだった。
いや、この一年間週に二回のペースで会っ……追いかけれているのだ。覚えない方がおかしい。
普通警官に止まれと言われたら止まるのが常識なのだろうけど、止まるとどういう目にあうのかが、体に染み付いているので止まるわけにはいかない。
「息も切れてないのに何言ってるんですか‼︎‼︎ていうか、毎度毎度一高校生相手に警官が本気とか大人気ないと思わないんですか⁉︎そして警察はそんなにヒマなんですか⁉︎佐刀警部‼︎」
走りながら叫ぶというのは疲れるが、叫ばずにはいられない。
使い慣れた路地の角を利用しているが、その警官の視界の外に出ることは叶わない。
まるで獣の如く、どこかに引っかかりそうな警官服で狭い路地をかけている。
「たとえ小さな悪であっても全力を尽くす。いやはや警察の鏡だと思わないかい?」
ええ、警察の鏡だよアンタは。でも大人としては最低だ!
「ていうか、いつも通り俺は巻き込まれただけですって‼︎こんなに追い回す必要ないじゃないですか‼︎」
一応抗議をしてみる。これは言い訳ではなく、確固たる事実なのだが……。
「うん?いや〜君の部下を名乗る深柳…辰男君だったか、今回もその子が首謀者は君だとさっき証言してくれてね。隠れ場所も親切に教えてくれてこちらとしては大助かりだよ」
深柳辰男というのは同じ学校に通う不良仲間の一人だ。大柄な体にモヒカン頭、着ている服には装飾品多数。俺のことは部下扱いするクセに、いざ捕まると自称部下になる。なんというか、小物臭がする男だった。
「またかよ‼︎何回目だ‼︎さては辰男のやつ、尋問に耐えられなくなったか、物に釣られたな‼︎‼︎」
途中にあったゴミ箱を佐刀警部に向かって蹴り上げながら辰男への怒りをヤケクソ気味に叫ぶ。
俺にも小物臭がうつったかもしれないなとしみじみ思う。
「いや〜捕まえて連行してみると『俺が考えたんじゃないんです‼︎進一のやつが‼︎俺は止めたんですけど‼︎』と言うものだからね、捜査にも協力してくれるし、良い子じゃないか」
蹴り上げられたゴミ箱の下をスライディングでくぐり抜けるという荒技を見せながら詳細な状況説明をしてくれる警部。
一方俺はゴミ箱が時間稼ぎにすらならなかったことと最早進んで警察に協力しているとしか思えない辰男の行動にしばし言葉を失っていた。
「クソ裏切り者が‼︎、警部!アンタも一年間も追いかけてるんだから分かるでしょう‼︎‼︎首謀者はあいつですよ‼︎‼︎」
すでに俺との距離を半分詰めた警部に、次は心理戦を挑んでみる。
辰男のことは…今は諦めよう、どうしようもないことだ。明日殴り飛ばせばいいだけだ。
いや、俺が殴るまでもなく他のメンバーにやられているかもしれないが…。
「うん?誰だい?何のことか僕にはさっぱり分かるないね?」
…どうやら動揺をしたようだ。ダメ元で空き缶を顔面狙いで投げつけておく。
結構な距離を走ってこっちはそろそろ限界なのだが、超人警官はまだまだ元気なようで耳を傾けるように迫ってくる。
「あいつですよ‼︎絶対分かってるでしょ‼︎‼︎いくら一年間捕まえられてないからって現実逃避はよくな…」言い終わる前にプシュという音とともにこちらの顔の横を何かが突き抜けた。
壁に当たって跳ね返ったそれを見てみると…
「銃弾⁉︎アンタ‼︎キレて高校生相手に銃使うっていうのか⁉︎ていうか当たったらどうするんだ‼︎‼︎完璧に殺す気だろ‼︎⁉︎」
一応年上だからと使っていた敬語をやめて素で抗議する。
なにせ銃だ。しかも頭狙い。
威嚇射撃ではなく今も銃口は常に俺に照準を合わせている。
「大丈夫だよ。最新の衝撃拘束銃だから当たっても激痛で気絶するくらいで害はないよ。これは僕の体で証明済みだ。」
こいつ子供だ!
いや前々から感づいてはいたけど今確信した!
新しいオモチャを買ってもらったから早く試したいな的なノリで銃ぶっ放す危険な子供だ!!
しかも『僕の体で証明済み』ときたもんだ!
お前の肉体が全国の高校生共通の基準だとでも思っているのか!
幸い超人警官も銃の扱いは難しいのか今の所かろうじて当たってはいない。
ともあれ現状『あいつを一年間捕まえられない超危険クソガキ超人警官』との銃乱射鬼ごっこという危険極まりない状態だ。
ここで俺を助けてくれる人が現れるなんていう神の奇跡なんてものは1世紀前に否定されている。
しかし、残念ながら打開策があるわけでもない。
よって…
「うわぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」とにかく走るしかない!具体策がないのは自分でも頼りないと思うがこうするしかないというのだから自分の周辺の環境ってやつは狂っている。
•
1時間後、なんとか警官をまいた少年はひと気のない真夜中の公園のベンチで頑張って走ってくれた自分の脚をプルプルと痙攣させながら座っていた。
「ハァ…ハァ……ダメだ…もう動けねぇ…。」
一年間も警官に追いかけられながら、あいつにも指導して貰って磨きがかかっている逃走術だが、佐刀京介警部のような超人には全く役に立たない。
今回も逃げている途中にちょうどスピード違反の車を見つけた佐刀警部が俺のことを諦めてくれたからこその結果だった。
あれだけ走りまわった後にも関わらず、警部はその足で車を追いかけて行くほど元気な様子だった。
あれで身体強化を施していないのだからなおさら恐ろしい。
「もう…あいつの誘いなんか乗るもんか…」と決意を固める俺だったが…。
「そういえば春休みは今日で終わりか、明日からまた学校だな…」
今日は4月6日、つまりは春休み最後の日だった。宿題は全て仕上げている。不良なのに宿題はやるのか?と良く言われるが、俺は不良グループに入りたかったわけではなく、あいつに強制的入らされただけだ。自分で言うのも何だが基本的に根は真面目なのだ。
しかし学校に行くとなると、否が応でもあいつと顔を合わせることになる。
おもむろに口から苦笑が漏れた。情緒不安定なのではない。
「俺も変わったもんだなぁ」
ポツリと呟く。
いや、変えられたと言うべきか。
1年前なら長期休みが終わり、学校が始まる時期は必ず口からため息が漏れたものだ。
夜風に当たりながら感慨にふけっていると、いつの間にか足の疲れもとれたように感じる。
帰るか、と呟いていて熱が残るベンチから立ち上がる。
すると、右の耳の後ろにつけてある小型通信用チップが自分に対するメール信号を捉えた。
今時チップを日用品として使う人間は稀なのだが、通信端末を耳に当てなくても通話できるという便利さはなかなか捨て難いものだ。
もっとも今は通話ではなくメールなのでチップは信号を捉えることにしか機能しない。
代わりに腕に巻いてる生活用万能端末から仮想型のタッチパネルが掌に浮かび上がった。
裏からは見えないように不透過機能が働いているので、情報漏洩の心配もない。
スプライトがチップから信号を受け取り、メールへと変換する。
メールの差出人で一番可能性があるのは母親だろう、夜道を歩いている息子が心配で一言入れてきても何らおかしくない母親だ。
まぁまだ日付も変わっていないので一言入れられても急いで帰るようなことはしないが。
次に可能性があるとしたら辰男か、そろそろ警察から解放されている時間だ。
謝罪の言葉ならまだしも自慢かその他なら一旦収まった怒りが爆発しかねない。(メールを見て怒りが最高潮に達したとしても、通信端末を叩き壊す心配がないのもスプライトの利点の一つかもしれない)
最後は他のメンバーという可能性だが、それならどちらかというと通話になるはずだ。
他のメンバーも各々逃走中で、メールを打っているヒマなのないはずなのだから……。
いや……一人だけいる。警察の追跡を簡単に振り切ってメールを打つ余裕があるやつが。
タッチパネルを見るとやはり差出人はあいつだった。
何事だろうか?あいつがグループのチャットではなく、俺個人に対してなんて珍しい…。
何か急を要する出来事でもあったのだろうか?
それ以上は考えるより見た方が早いと思ってメールを開いた。
『お疲れ〜(^o^)囮ありがとうw
お前のおかげで今回も佐刀警部に捕まらずにすんだ(^o^)/
詳しい顛末は明日学校で伝えるから今日は帰ってもいいぞ(帰れたらだがなww)
じゃあおやすみ(。-_-。)』
メールを見た進一はたっぷり1分近く絶句していた。
脳内には損とか取越苦労という言葉が高速で何度も流れている。
なんだろう、労を労って貰って帰宅の許可も貰って感謝もされたのだが全くプラスの感情にならない。
むしろマイナスの感情が心に沸いてくる。
しかし、マイナスであっても嫌という感情はない。
不思議と口から笑みが零れた。
本当に自分は変えられたものだ。
言いたいことは山ほどある。
ただ今は疲れた。明日学校で会えるだろう。
今だけはあいつの言うことを聞こう。
そう思い立った進一は、自分の家と今は呼べる場所に足をむけた。
同時刻、東京都空中国際空港に一機の飛行機が到着した。
その飛行機から最後に出てきた一人の少女に、空港内の男性は目を一瞬奪われていた。
少女は指を組んで一つ大きく伸びをすると一言呟いた。
「ハイジャックでも起こるかと思ったけど、意外に平和ね」
おおよそ平和とは言えない台詞を当然の如く言った彼女はイタズラっぽい笑みを浮かべて続けた。
「休暇中は事件が起こらないといいけど…。さぁ初めての日本、どこに行こうかしら?」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずは主人公がどんなキャラクターなのかを知ってもらいたくて、このような内容になりました。
次からはあらすじに近づけていければと思っています。
コメントをいただければ、間違っているところなどは出来る限り直していきたいと思っています。
次からも読んでいただけると幸いです。




