第1話 ある夏、日に灼けた街燈の下で/Lily Marleneが聞こえたら
先に失礼を詫びます。
本作品のタグにかたわ少女と付けたのは
そういったゲームがあるからです。
雰囲気を似せたような部分がある為に
リスペクトして載せさせて頂きました。
また、そのゲームも先天性の障害を差別的に扱うつもりがない事を、この場を借りて弁明として一緒に載せさせて頂きます。
一日中続く真夏の日差しが、僕を少しずつ灼いている。
山を撫で下ろすように吹き抜ける風が、僕を気遣うように包んでいく。
この山の中の小さな村は絶えず日差しが差し込み、太陽の恩恵をその身にしっかりと受けた赤いトマトが美しい色を放つ。
山だからと、Tシャツでやってきたのが裏目に出た。
後で早速、着替えを使う事になってしまったと、僕はげんなりしていた。
つい一週間前。
山などとは縁のない街で、クーラーの効いた部屋でパソコンを弄っていた僕は、ふと、文通メールという物を見つけた。
誰とも知らない人と、メールをやり取りするというものだった。
やる事もなかった僕は、いつしか「相手を探す」というボタンを押していた。
…―…―…―…―…―…―…―…―…―…
受信先:lily-marlene.yuri@santex.co.jp
本文:初めまして、顔の見えない人と
こうしてメールを交わすのも初めてなので
何か失礼などあったら言って下さい。
よろしくお願いします。
メールを確認するなり、鼓動が早まっていくのが、よく感じられた。
なんとなく女性というイメージを持った僕の心臓が、余計に早鐘を打ち始める。
何から話せばいいか、切り出す言葉を考えつつメールアドレスを見ると、リリーマルレーンと打ってある事に気がついた。
送信先:lily-marlene.yuri@santex.co.jp
本文:ありがとうございます。
こちらこそ初めてなので、色々失礼をしてしまうかもしれませんが、許して頂けると嬉しいです。
アドレスのリリーマルレーンとは、好きな曲ですか?
送信してから、返事は少し遅かった。
…―…―…―…―…―…―…―…―…―…
受信:lily-marlene.yuri@sanset.co.jp
本文:お返事ありがとうございます。
はい、リリーマルレーンは私が時々口ずさんでしまう程大好きな曲です。
私の名前が百合なので、という事もあったりします。
そういえば、出来ればお名前を教えて欲しいのですが、どうですか?
僕はときめいていた。
すぐに名前を書き込み、危ないし、マナー違反ではないかとも思ったが、それを送った。
いつしか会話は弾み、オフで話さないかという話になった時の僕は、舞い上がらん程に高ぶっていた。