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02:幼馴染との再会と

 相変わらず説明が多いですねー ←

「みなさんも知っての通り、LATはAI――人工知能を搭載した身体能力強化型のパワードスーツです」


 自己紹介を兼ねた一時間目のホームルームは終わって早速、授業は始まった。なんでも操縦士科全体が最初の一ヶ月ほどで基礎知識を叩きこみ、訓練機を用いた実践授業を行う方針だという。


 支倉先生の言葉に合わせて、電子黒板にいくつかの画像が表示される。黄色の塗装に白のラインが入った、『白菊』。国産のLATで耐久力に優れており、訓練機として最も配備されているタイプだ。簡易操縦試験でも使用したから、よく覚えている。


 もう一つ、暗紅色の『紅葉』は今年の春から導入された新型機。白菊が防御重視の近接格闘戦を主体に置いていて、紅葉は逆に機動性重視の中・長距離射撃戦を主体に置いている。


「これからみなさんが実習で使うこの練習機――『白菊』と『紅葉』にも、もちろん人工知能は搭載されています。しかしこれはあくまで動作補助のためで、LATが本来持つ力を発揮させるものではありません。正式名称はT-OS(テクニカル・オーエス)ですが、これはまた別の授業で説明しますね」


 説明をノートに書き取っていると、先生は次の画像を表示させた。白菊と紅葉の操縦者の動作をデータ・数値化したものである。


「LATに搭載された人工知能は使用者の動きを覚え、使用者と共に成長します。これは訓練機の場合オミットされてますので、主な搭載機は専用機と呼ばれ、使用者とは文字通りパートナーの関係を構築していきます。LATは操縦者の特性を理解しようとし、より性能を引き出せるということになるわけです。なのでLATは操縦する時間が長ければ長いほど強くなるというわけです。もちろん、ただ慢性的に操縦するだけでは逆効果ですが」

 

 言って、支倉先生は「ここまでで質問のある人ー」とクラスを見まわした。もちろん、手を挙げる人などいない。

 簡易操縦試験から入学までの間に詰め込んでおいてよかったと思う。テキストを用意してくれた兄に感謝してもしたりないが……最初からこうなることを予想してたんじゃないんだろうかとも思う。


「じゃあ続けますね。ご存じの通り、LATは人命救助の現場――例えば大火災や嵐の海の中などでの活動を想定して製作しており、そのため操縦者の全身は特殊なエネルギーフィールドで包まれています。このエネルギーは通称『ディフェンシブ・エネルギー』と言って、防御用バリアとして使われる他、少数ではありますが攻撃に転用する武器もありますね。一般的にLATを用いた模擬戦ではこのエネルギーが先に使い果たした方が負けになります。また致命傷回避プログラムが発動すれば普段使用する以上のエネルギーを使いますので、覚えていてください」


 すらすらと淀みなく、支倉先生は説明を続けていく。


 LAT自体は一週間程度の行動が可能になるエネルギー貯蔵パックがついている。コロナエンジンと呼ばれているそのシステムは、太陽エネルギーを特殊な状態に加工して取り入れるため実質的にエネルギー切れを起こさない仕様になっているが、稼働が毎回日中だとは限らない。そのための貯蔵パックだとか。


 そもそも防御バリアは常時展開されているのが基本である。アグレッシブな行動が必要とされることや、空気汚染対策でもあるらしい。LATを着用して高々度飛行なんて日常茶飯事であるため、展開状態ではエネルギーの消費は非常に微々たるものだ。そういう風に作られている。


 しかし、バリアも万能ではない。バリアを突破する程の攻撃を受けることもあり、その場合はエネルギーを消費して、操縦者の肉体に与えられる衝撃を緩和するよう設定されている。衝撃を緩和しきれず、操縦者の生命維持が不可能だとLAT側が判断した際は、搭載されている『致命傷回避プログラム』――通称VDEが膨大なエネルギーを代償に発動する……以上、教科書より引用。


「……と、いうわけでこれでニ時間目の授業を終わります。次の授業も、遅れないでくださいね」


 授業終了を告げるチャイムに気づいた支倉先生がそう言って、統也兄と一緒に教室から出て行った。ちなみに統也兄は授業の様子を教室後方から見ていただけだったりする。……あの人、本当に教師か?


 そんなことを思いつつも、 鬼教官の睨みから一時的に解放されたクラスの視線は、再び私に集中している。時々小声で「おい、お前が行けよ」とか「ちょ、抜け駆けはなしだろ」とか聞こえてきて、気になってしょうがない。


 わざと音を立てて立ちあがり、椅子を仕舞って、窓際の前から二番目の席へ向かう。足音に気付いた少年が私を見た。栗色の髪と同色の瞳が、記憶に残る彼と一致する。よかった、変わってない。


「……宗谷(そうや)くん。少し、いいかな?」

「……ああ。構わないよ、秋月さん」


 約一秒のアイコンタクトで事情を察した彼は頷いて、私の苗字を呼んだ。そして二人揃って廊下に出、最寄りの階段へ向かう。背中に突き刺さっていた視線は、ここまで来れば感じることは無い。


「……久しぶりだね、魁人。元気だった?」

「うん。椎奈も……大変だったね」


 頷いて、彼・宗谷魁人(そうやかいと)は苦笑する。

 小学校に入学する少し前からの、幼馴染。


「ニュースで見たよ。本当に、お疲れ様」

「大変なのはこれからだよ。私、あのクラスでやっていけるかどうか……」


 三年振りに会った幼馴染の労いに、私は愚痴を返した。そして私の言葉に合点がいったようで、魁人は「ああ」と声を漏らす。

「椎奈は女子中に通ってたんだっけ。だから自己紹介の時、怯えてたんだ」

「正解。あー、やっぱり昔からの知り合いがいると精神的に楽だね。心強い」

「それはどうも。でも、よく僕だって分かったね。3年間会ってなかったのに」

 私が女子中に通っていた3年間、彼はLATSに入学するための事前学習を導入した学校に通っていたのだ。

「分かるよ。背が伸びたところ以外、昔のままだから」


 髪や目の色も、困ったようなその表情も、昔と変わらない。違うのは身長差くらいで、それが嬉しいようで、少し悔しい。


 昔は私の方が背が高かったのに、やっぱり男の子なんだよなあ……。


「椎奈は、変わったね」

「そう?」

「うん。髪も短くなったし……雰囲気も、なんか違う気がする」

「そうかなあ……?」


 そう言われたのは初めてだ。まあ3年前の私を知っているLATS関係者は彼と統也兄くらいだけど。


「でも、驚いたなあ。まさか担任が統也さんなんて」

「私も……まあ、何の仕事をしてるかも知らなかったけど」


 まさかLATSで教員をやってるなんて思いもしなかった。しかもかなり有名みたいだし。


「有名みたいってレベルじゃないよ。『アーサー王』秋月統也は世界最強のLAT操縦者とも言われてるから」

「へー……」

「へーって……まあ統也さんのことだから、椎奈には教えてないだろうけど」


 世界最強、ねえ……。というか統也兄、LAT操縦士だったんだ。


 ……そんなことすら教えてもらえなかった私って、何なんだろう。


 こっそり溜息を吐いた。

 




 お久しぶりです。説明が多いと脳内がパニックになりますね(自分で考えた設定だというのに……)

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