表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやかし街の看板娘~不当解雇された私はあやかし達をデザインの力で魅了します~  作者: MURASAKI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/17

第3話 おいしい展開、いただきます!

栗栖(くりす)くん、お客様にそのような口のきき方は感心せぇへんよ?」



 この人がオーナーだろうか?

 コック帽をかぶり、白い調理服を身に着けている。サラサラな栗色の少し長い髪をひとつに束ね、細い目元にはほくろがふたつ。差し色の赤いタイがとても似合っていて、こちらも信じられないくらいのイケメンだ。

 しかもちょっと言葉のイントネーションが京なまり。それだけで落ちる女の子もいるのではないだろうか。



 こんなイケメンが料理作ってくれて、それをきれいな男の子が給仕してくれるなんて、たとえ味が酷くマズくても女の子が放っておかないんじゃないの?

 ファンクラブが存在してもおかしくないレベルの美形なんて、テレビでしか見た事ないよ!?



 目の前のイケメン二人にずっと口があんぐりと開いたままの私に気が付き、コック帽をかぶった男性はにこやかに会釈した。



「本日の限定クーポン当選者の板狩杏美(いたかりあずみ)様ですね。僕はこのリーフ亭のオーナー兼料理長の狐崎碧葉(こざきあおば)と申します」


「あ、はい! 確かに私は板狩杏美(いたかりあずみ)ですが、何故私の名前を?」


「うちの店のクーポンは、一日おひとり様にしか発行しておりません。当選したお客様の個人情報はクーポンサイトから届くんですけど……ああ、個人情報は怪しいことには使いませんから、ご安心くださいね」


「そうなんですね。ところで、ランチ時なのにどうしてこのお店、こんなに人が……?」


「それは……単刀直入に、この店に人が自力でたどり着けねーからだよ」


「確かに、私もあの子猫ちゃんが導いてくれなかったら、私はリーフ亭(ここ)には辿り着けていなかったかも」


「子猫ちゃ……!!! あかん、くはっ!!!」



 私の子猫ちゃんという言葉を聞いて、オーナーの狐崎(こざき)は噴き出してしまった。正確には、必死で笑いをこらえているのだけれど、バレバレだ。

 そんなに笑いのツボなの? 子猫が??



「うっせえ!!! オマエは早くランチ作って来いよ、オーナー!!!」



 恐らくバイトであろう栗栖が、狐崎(こざき)に向かって悪態をついている。笑いをこらえているのか顔が真っ赤だ。彼にも子猫はツボだったのだろうか?

 はいはい、とまだ肩を震わせている狐崎(こざき)は厨房へと消えて行った。



「アンタはこっち」



 栗栖は、何が気に入らないのか口をとんがらせて、ぶっきらぼうな物言いで私を席に案内する。

 何だかんだ言いながら、椅子を引いて座らせてくれたりと物腰は優雅だ。


 私が席に座った直後、待つことなく料理が運ばれてくる。

 いくらなんでも早すぎる気もするが、サラダと一緒に運ばれてきたスープはアツアツで湯気が立ち上っている。

 鼻をくすぐる香りは、今まで食べてきたスープは一体何だったのかと思うくらい、いいにおいだ。

 たまらずお腹が「くぅ」と鳴り、思わずあふれ出た唾を飲み込む。

 オードブルが出てくるタイミングが早かった事など、どうでも良い。むしろ今がジャストタイミングだと思えるほどに魅力的だ。



「前菜の時点で、すごく美味しそう」


「実際、すげー美味いぞ! 食べたら驚くぜ」



 ニヤニヤ顔の栗栖を横目に、私は素早く手を合わせ「いただきます!」と、いつもより元気な声で挨拶し、まずはサラダに手を付けた。



 おいしい。



 かかっているドレッシングは私の大好きなゴマベースのドレッシングで、ごまの香りがきちんと感じられる。

 さらに野菜そのものの味が濃い。青臭いわけでなく、野菜の美味しさをダイレクトに感じることができる。

 無意識に箸のスピードが上がる。

 夢中で食べる私の姿が面白いのか、栗栖がしてやったりの顔で見ている。そんな栗栖を横目に、スープをひとくちすする。濃厚なのにしつこくない複雑な味のスープは、口に含んだ瞬間に香りが口の中いっぱいにひろがる。

 飲み込むのがもったいない。思わず目をつむり、口にふくんだスープの味と香りをしっかり堪能する。


 感動しながらサラダとスープを食べ終わったタイミングで、メイン料理が運ばれてきた。見るからにアツアツの鉄板の上に分厚いステーキが乗っていて、ジュージューと音を立てている。

 それを栗栖が受け取り、華麗に切り分けてお皿に盛り付けサーブしてくれる。


 鉄板のままでもいいけど、何と言うか栗栖の所作があまりにも美しく優雅で、あの生意気な口の聞き方なんてどうでもいいと思える。もちろん、盛られた皿も丁寧にソースがかけられ、一流レストランで出て来そうな仕上がりだ。

 今すぐスマホを取り出して、写真撮影したくなる。



「すごく芸術的な盛り付けで食べるのがもったいない! これ、写真に撮ってもいい?」


「ダメだ! 写真撮影したらネットに上げるだろ? この店はそういうの、許可していない。すぐ食べないと味が落ちるからすぐに食え! さあ、早く食え! 今すぐ食え!! 無言で食え!!!」



 前言撤回。


 やっぱりどんなに美しい容姿でも、この言葉遣いは幻滅してしまう。一部のショタコン(?)のお姉さま方には人気が出そうだけれども、感動を返してほしいと思ってしまう。


 写真を撮るのは諦めて、目の前に出された肉を口に入れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ