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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第二章 【異世界編】ココロとスマホだけ異世界へ
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6.リアンナ王国の美しくて恐ろしいアクア王子

「リアンナ王国の太陽、リアンナ王陛下に御挨拶申し上げます」


 玉座に鎮座しているリアンナ王にアクア王子は跪いて挨拶した。

 王の周りには、ビチリヤ宰相も玉座の横に起立したままひかえている。


「アクア、来たか。今日は少し忠告したいことがあり呼んだのだ。顔をあげなさい」

「何でしょう?」


 アクア王子は、父のリアンナ王を見つめた。

 第一王子アクアの美しさは、父親のリアンナ王でさえ、見慣れるということはなかった。

 一瞬、その美しさに言葉がつまる。


「い、いや……最近、騎士や使用人への締め付けがきついと報告を受けている。人の上に立つ者は、ちゃんと愛情をもって、周りの人間に接するように」

「……」

「アクア?」

「いえ、肝に銘じます」

「……理解したならよろしい。今日はリリーシャ嬢がいよいよ登城するだろう。忙しくなる。もう退出しなさい」








※ ※ ※


 その後、アクア王子が部屋で軽食を摂っていると、ビチリヤ宰相が王子をたずねた。


「お食事中、失礼いたします」

「いや、もうすぐ終わる」


 王子は宰相を向かいの席に座るよう手で促した。

 メイドは、宰相にお茶を配膳した後、退室する。

 王子は、護衛騎士にも退出を命じ宰相と二人きりで密談を始めた。


「先程の陛下のお言葉は、お気にされなくても良いかと思われます」


 ビチリヤ宰相は、リアンナ王の忠告をわざわざ無視するよう助言しに来たのだった。

 アクア王子は一つ深いため息をついてつぶやく。


「陛下の忠告なんて耳に入ってこないから安心しろ。護衛になめられて命を落としそうになった張本人のくせに」

「少々お言葉が過ぎますが、下々の者には『秩序』を叩き込まねばなりません」

「わかっている。リアンナ王国のためだ。多少命の犠牲もあろうがしょうがない」


 ビチリヤ宰相は満足した表情になって続けた。


「そろそろリリーシャ嬢がお越しになりますね」


 一瞬、その言葉に王子の口角が上がった。


「ほぼ二年ぶりだな。しばらくクーデターがあり厳重体制が続いたから」

「8歳から婚約者として指名され、いよいよ正式に婚約発表ですね。おめでとうございます」

「ああ、早く婚姻したいくらいだ」


 ビチリヤ宰相はさすがに声を出して笑った。


「それはまだ気が早いというものです。まだお二人とも14歳ではないですか」








 その後、宰相が退出した部屋で、アクア王子はリリーシャ嬢を迎えるために、メイドに手伝ってもらいながら、身支度を整えていた。


 数人のメイドは、王子の機嫌を損なわないよう注意深く作業している。


「まだ終わらないのか」


 その王子の言葉に、メイド達は怯えた表情になった。


「も、もう少しで終わりますのでお許しを」


 作業する手が震えたが、なんとか身支度を終えた。

 メイド達は一斉に安堵する。


「護衛の人数が足らないな」


 次に、王子は護衛騎士の人数が一人足らないことに気づいた。

 すると、廊下を走る足音が近づいてきて、一人の騎士が息を切らして、部屋に入室し謝罪した。

 それを受けて、騎士団長がアクア王子に報告する。


「も、申し訳ございません! ただいま全員揃いました」

「……騎士団長……これは誰のミスだ? 集合時間の連絡ミスかそれとも遅刻者の怠慢か?」

「……申し訳ございません。言葉もございません……」

「お前は潔いな。個人のミスとも全体のミスとも明らかにしないのだな。ならば、平等に罰しよう。全員向こう1ヶ月の減給。当事者は任務が終わり次第、3日間幽閉だ」

「……承りました。寛大な処置ありがとうございます」


 使用人や護衛も胸を撫で下ろした。

 ここ最近では懲罰としては緩い方だ。

 ムチ打ち等の懲罰を免れたことが奇跡に近い。

 それほどアクア王子の遂行する「規律」「懲罰」は厳しいものになっていた。

 しかし、彼はリリーシャ嬢に再会する日なので、罰を緩くした。 

 それほど、彼は内心浮かれていたのだった。







※  ※  ※



「リリーシャ様、王城が見えてきましたよ」


 侍女が言葉をかけた。

 リリーシャは少し馬車の中で、うとうととしていたが、すっかり目が覚めた。

「は、はい……そうですね」

 リリーシャはとっさに手の震えが止まらなくなった。


(こ、怖い……確かクーデター前と違って、もうアクアは厳格になって私を制圧しようとするはず……)


 リリーシャは以前の記憶から、この再会の日にアクアに恐怖を覚え始めたことを思い出した。

 周りのちょっとしたミスへの懲罰、私への有無を言わさない命令……それをあの人は全て「愛情」だと思い込んでいた。

 リリーシャは脳内で友香に話しかける。


『失礼いたします、友香様! 馬車が止まったら、意識を代わってくださいませ! アクアに会うのが怖いのです!』


 ゆっくり休んでいた友香の意識は、一気に覚醒した。


『もうすぐ疾風(はやて)……いやアクア君に会えるの? やったーーー! 代わる代わる! 代わらせてください!』

『もう少しお静かにしてくださいませ! 馬車が止まってからで構わないのです。友香様は異世界の方なので、また何をされるかわかりません。アクアに会う直前まで交代しないでおきましょう。淑女の挨拶はできますよね?』


 リリーシャは意識下の友香が浮かれてうるさいので、耳を押さえて険しい顔つきをした。

 侍女はそれを見て、リリーシャ嬢がアクア王子の噂のため、緊張されているのだろうと彼女を思いやる。


 王城の門をくぐり、アクア王子他騎士や使用人が待機している列の前で、馬車が止まった。

 友香はリリーシャと意識を交代した。


 ーーいよいよ、はや……アクア君に会える! ーー

 

 

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