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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第三章 【現代編】推し活女子大生が王国を救ったので現代に帰りました!
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40.美女の直談判

「前世とか……じゃないですか?」


 友香が正解をそのまま口にする。

 自分は嘘が苦手だし、その方が疾風(はやて)もスッキリするかもしれないと、とっさに思ったのだ。


「わー、やっぱり女の子はそういうの好きだよね!」

 疾風(はやて)は何万人もの人間を幸福に陥れる笑顔を友香に向ける。


(は、早く事務所に着いて……殺される)


 友香は息も絶え絶えに、前席のシートをつかんで願っていた。そんな彼女に疾風(はやて)は声をかける。


「今日はね、江口美聡(みさと)さんが友香さんにお話があるんだって」

「はい?」


 初めて聞く人名に友香は思わず聞き返す。


「〇〇エンタ社長のお嬢さんだよ」

「そんなすごい方が私に何のご用でしょうか?」

「この前、事務所に来てくれたでしょ? その時に一目見て、ぜひ直接スカウトしたいから、呼んでほしいって頼まれたんだ」

「なんのスカウトでしょう?」

「モデルだったかなぁ」


 ーーぜ っ た い 、 う そ だ !


「友香さんと同じ事務所になったら嬉しいなあ! 橘さん絶対喜ぶと思うよ」


 ーーああ……そうだった……アクア君も素直な人でした。人の言葉を真に受ける人でした……。あなたの前世で間違いありません。


 疾風(はやて)の純粋さに友香は一人、車内でうなだれているとスマホが振動する。

 光輝からのラインだった。


『あと5分ぐらいで着くかな? 初対面の人に会うと思うけど、僕がちゃんと見守ってるから、遠慮なく言いたいこと言ってね』

 そして、『がんばれ!』とかわいい犬のスタンプが押された。


 ーー 光輝さんが見守ってる? どうやって? とにかく、ハル皇子のようにサポートしてくれるのだろうか? でも何故、私が大手芸能事務所の社長令嬢に呼び出されるの?


 いろんな疑問がわいてくるが、どこかで光輝さんが見ていてくれる、と友香は自身を励ました。

 プレゼントの紙袋をしっかり抱きしめながら、友香は車を降りた。



 ※ ※ ※

 友香は疾風(はやて)と共に事務所の応接室に入る。

 とりあえず、二人はソファに向かい合わせに座った。

 疾風(はやて)は緊張した面持ちの友香に話しかける。


「僕は美聡さんが来たら、席を外さなきゃならないんだ。それまで少し話をしようか」

「は、はい」


 その間、男性秘書らしき人が、紅茶と焼き菓子をテーブルに並べる。


「今日、橘さんと会うんでしょ?」

 疾風(はやて)が話を切り出した。


「はい、その予定です」

「だから、今日かわいくしてるんだね。僕達と会った時の何倍もかわいいよ。メイク変えたとか?」

「と、特に何も……」

「じゃあ、恋愛してるからだよ! いいなーー!」


 ーー キレイになってる? 私が? そうかな?


 友香は急に体温が上昇した気がしたので、頬を手で包んで体温を下げようと試みた。

 疾風(はやて)はそんな友香の様子を見ながら、テーブルの裏側を触る。

 すると、疾風(はやて)のスマホにラインの通知が入った。その画面を確認して、彼は微笑んだ。



 ーーガチャッ


 そして、応接室の扉は開かれた。






「初めまして。私は〇〇エンタの企画部総括マネージャー江口美聡(みさと)と申します。あなたが野岸友香さんですか?」


 グレーのニットと黒のフレアスカートをスラリと着こなし、一瞬モデルが入ってきたのかと目を疑った。

 切れ長で品のある目元、厚い艶のある唇、豊かな少し巻いた長い黒髪。

 アジアンビューティーの代名詞のような女性だった。


(はあーー、美男美女しかいないのかしら、この会社は……)


 友香は社長令嬢の美貌に圧倒され、ため息がもれる。


(本当にこんな美人が近くにいて、橘さんは何とも思わないの? 本当に?)


 すると、江口美聡(みさと)は呆然としている友香に声をかけた。

「友香さん? どうされましたか? 体調が優れませんか?」

「い、いえ、いたって健康です」


 友香はとりあえず気をしっかり持つよう自分に喝を入れる。


「じゃあ、少し二人でお話しましょうか。私、本当に友香さんに会いたかったんですよ」

「は、はい。ありがとうございます」

「じゃあ、僕はこれで失礼します。ごゆっくりどうぞ」


 疾風(はやて)は美聡にソファの席を譲り、立ち上がって退室した。


「では、本題に入る前に少し軽くお話しましょうか」

 江口美聡はにこやかに笑いながら、お茶とスイーツを勧めてくる。

 友香はまだ警戒心は解けないが、おもむろに個包装の焼き菓子に手を伸ばした。




 ※ ※ ※


「どう? 聞こえる?」


 会議室で疾風(はやて)はイヤホンをつけている光輝にたずねる。

「ああ、ばっちりだ。ありがとう」

「僕も役者になったよー」


 疾風(はやて)は、さっき友香と応接室で何気ない会話をしている最中に、テーブル下に盗聴器を仕掛けた。

 そして、ちゃんと機能してることを確認した光輝は、会議室から疾風(はやて)にそのことをラインで送ったのだ。


 先日、番組のリハーサルで疾風(はやて)は江口美聡に呼び出され、野岸友香をたまたま見かけてスカウトしたいので協力してほしい、と頼まれた。もちろん、橘光輝にはこの件は秘密にしてほしい、と念もおされていた。

 しかし、それを疾風(はやて)は早々に光輝に密告した。

 彼にとって、光輝は美聡より遥かに大切な存在であるからだ。

 その時、光輝は美聡に2年間も言い寄られていたので、友香に諦めるよう直談判をするのだろう、とすぐに感づいた。


 しかし、疾風(はやて)は、

「友香さんがスカウトされて同じ事務所になったら、ほぼ毎日会えるようになるね」

 と、彼女の言葉をそのまま信じていた。


「君は変わらないねーー……」


 橘は、アクア王子の素直さと危うさをそのまま受け継いでいる疾風(はやて)の頭を優しく撫でた。






 

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