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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第三章 【現代編】推し活女子大生が王国を救ったので現代に帰りました!
35/45

35.好きな人が好きなものを好きだと話しているのを見るのが好き

「はい、まだ有効なんですよ。見ますか?」


 友香はささっとスマホを操作して光輝に渡す。

 それは、リアンナ王国の検索結果だ。


「うわぁ……信じられないですね。僕は確か53歳で亡くなったから、その後のことはわからないんです。でも、あれから数百年も続いたんですね。あの世界では、あの規模の国はすぐ大国の支配下におかれてましたから」


 それから友香は、リリーシャもアクア王子の行く末も調べた、と明かした。


「リリーシャさんもアクア君も幸せになって何よりです」


 友香は満足そうに微笑む。

 光輝は何気なく彼女に問いかけた。


「僕のことは調べましたか?」


 友香はそこを指摘されて一瞬怯んだ後、視線を外す。


「いえ……」


 それを聞いて、光輝は少し寂しそうな表情を見せる。


「僕のことは気になりませんでしたか? 一回、あの世界では僕のことを検索したのに」

「あ、あの時は、ハル皇子のことは何とも思ってなかったから……」


 友香はそこで口をつぐんでしまった。

 光輝は彼女が切なそうにうつむいてしまった様子に

(今は何とも思っているから検索できないと言ってるようなもんだな)

 と動揺するが、光輝自身も友香に意識されてる事実に顔が照りだした。


「ハルの人生喋って大丈夫ですか?」

「は、はい……」

 友香は耳が痛いが覚悟を決める。


「そうですね。友香さんが帰った後は、忙しかったですね。僕は皇太子になる決心をしましたから。権力と知識がないと自国とリアンナ王国の両方を守れないので」

「両方の国を守った?」

「はい。リアンナ王国は主権国家の国です。しかし、オークテリシア大帝国と面してる国境線は安全でしたが、他の国境ではいざこざが絶えませんでした。防衛という面では、僕の国がかなりの騎士を派遣しましたよ。友好国ですからね」


 友香にとっては到底理解が追いつかない世界なので、大変でしたね、と答えるだけだった。


「僕はこの現代に追いつくまで、10人くらいの人生を歩んだと思います。魔法を使える世界にも生まれ落ちましたよ。僕はそこでは炎を扱えましたね」


「ほ、本当ですか?!」


 友香は表情がぱあっと明るくなった。

(魔法の国なんて完全にアニメだ! 楽しかったはず!)


「いいなぁー!! 行ってみたいです!」

 彼女はキラキラと音がするような瞳で、彼の体験を羨ましがった。

「戦争してましたね」

「え?」

「どんな世界に行っても戦ってばかりでした。毎回、明日食べる物にも困るような家庭に(せい)を受けました。だから、生きるのに必死でした。絶対あんな世界にあなたを行かせません。」


 友香はきっといろんな力がつかえて、アニメみたいに冒険と友情と少しばかりのロマンスと。

 そんな話が聞けると思っていたが、現実は悲惨で言葉を失った。

 少しテンションが下がった空気を読んで、光輝は友香に語りかける。

「だから、友香さんの存在は僕の生きる糧になったという話ですよ。楽しいことだけ考えましょう! すみません、僕が暗い話しちゃったから」


 光輝は運ばれてきた前菜とスープを食べながら、友香の機嫌が良くなる絶対的なワードを口にした。


「昨日、疾風(はやて)から連絡があったんですよ」


 ーー「は」「や」「て」ーー


 この文字を耳が認識した途端、友香は冗談みたいに顔が赤くなり、目に輝きが宿る。

 その一連の変化に思わず光輝はスープが気管に入りそうになった。

 咳き込んでいると、友香は心配そうに声をかけてくる。


「だ、大丈夫? どうしたんですか?!」


 光輝は息を整えた後笑い出し、友香はきょとんとした。


「いや、友香さんはわかりやすくて本当かわいらしいです」


 笑いすぎて、目尻に涙が浮かんだのか指で拭っている。


「詳しい話は言えませんが、いろいろプロジェクトが進行中でしてね」

「わーっっ!! 『BREEZE(ブリーズ)』としては待ち遠しいです! 今日もアプリでライブ配信予定だし!」

 にこにこと微笑みながら友香の話を聞いている光輝に、友香は一番気になっている話題を持ち出す。


「私……『BREEZE(ブリーズ)(ファンクラブ名)』のままでいいですか? ライブとか参戦したり……」

「え? 友香さんREDWIND(レッドウィンド)のファンやめちゃうんですか?」


 ここで、メインの各々がオーダーした食事が運ばれてくる。

 友香は肉で光輝は魚。光輝の皿には魚と共に黄と赤のパプリカが彩りよくのっていた。


「何故BREEZE(ブリーズ)じゃなくなるんですか?」

「世の中には、推し活を良く思わない彼氏がいるじゃないですか」


 光輝は嬉しそうに友香の顔を見つめながら、魚にナイフを入れる。


「へー、僕の彼女になるための確認ですか?」

「いや、でも……そうだったらどうしようと思って……」

「ハルの時にも、僕言いましたよね?」

「え?」


 光輝は友香の目を真正面にとらえながら、にこやかな表情で答える。


「僕は、好きな人が好きなものを好きだと話しているのを見るのが好きなんですよ」



 ※ ※ ※


 友香は初デートを終え、体力気力も使い切ったのかベッドにへたり込む。


 ーーあんなの卑怯じゃない? 顔も性格もイケメンとか……断れないじゃない! いや、断るつもりもないけど! 本当に私が橘さんの彼女になっていいの?


 呆然としていると、友香はラインの通知に反応してスマホを手に取る。


『今日いろんな話ができて楽しかったです 次いつ会えますか?』


 友香は、このアフターフォローも完璧な橘に屈する日も近いと痛感する。

 体全体が心臓になったみたいに、鼓動がうるさい。

 こんな状態で眠れるだろうか。

 友香はスウェットに着替えた後、ラインでどんな内容を返信するか長い間考えては表情が崩れている。

 すると、ネットのある情報が目に留まる。

 ある経済誌の広告だった。発売は三週間後。

 彼女は、速攻その本を三冊予約注文した。




 

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