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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第三章 【現代編】推し活女子大生が王国を救ったので現代に帰りました!
34/45

34.推しと彼氏

 数日後、友香はライブ友達二人が家に押しかけてきた。

 コンビニ弁当やスイーツが、狭い机の上に無造作に並ぶ。


「どういうことよ、聞いてないわよ!」

「出会いは?」

「何歳? 会社員?」


 矢継ぎ早に質問されるが、光輝との電話での打ち合わせ通り、しばらくREDWIND(レッドウィンド)のプロデューサーであることは秘密にすることにした。

 出会いは……とりあえず、あのグッズ売り場で光輝が友香に一目惚れしたということにするらしい。


『誰が信じるっていうんですか?!』

 と、友香は電話で抗議したが、

『異世界で出会ったなんて言えないでしょ?』 

 と、あいかわらずクスクス笑って返された。


 ハル皇子にもよく笑われたことを思い出して、悔しいが胸の奥を音を立ててしめつけられる。

 そして、今は光輝とすり合わせた様々な設定をライブ仲間に暴露した。


「いやー、友香にあんな大人なイケメンの彼氏ができるなんてねー、私たちの希望の星だわ!」


 その発言の後、もう一人の友達が真顔になって、友香の目を見つめて口を開く。


「ところで……一番気になることなんだけど」

「何?」

REDWIND(レッドウィンド)の推し活どうするの?」




 ※ ※ ※

 騒々しいライブ友達が帰った後、友香は疾風(はやて)のぬいぐるみを顔に近づけて、思い巡らせる。


 ーー彼氏できたからって『REDWIND(レッドウィンド)』推したらダメとかあるの? いや、だって橘さんは彼らのプロデューサーじゃない。それはないと思うけど……。


「それはないはよね? 疾風(はやて)君?」


 友香はぬいぐるみの疾風(はやて)君に問いかける。

 明日は、橘と初めてのデートだ。

 友香はいつも通り疾風(はやて)のぬいぐるみにお休み、と声をかけて、仰向けに寝転んで布団をかけた。

 ぼんやりと明日に思いを巡らせる。


 ーー聞きたいことは山ほどある。でも、ファンを継続したいことをまず言わないと


 友香は人生初の「デート」という予定に思わず足がバタつく。 そして、盛大に掛け布団が宙を舞うのだった。





 ※  ※  ※

 橘光輝との待ち合わせ場所は、ベタベタな場所を指定された。

 有名な犬の像の前には観光客がひしめき合っている。

 カメラの画角の邪魔にならないよう少し離れた場所で、友香は立ち尽くしていた。

 その間スマホを開いて、自分の顔をすかさずチェックする。


 ーー あぁっっ! 髪がはねてる! どうして?! 家でちゃんとセットしてきたのに! 


 友香が泣きそうな表情をしていると、ごめん待った? 、と声をかけられた。

 不機嫌な表情のまま声の主に向き直る。

 ブラウンのコート、薄手のオフホワイトのニットという何でもない普段着を、モデルのように着こなす橘光輝がいた。


「どうしたの? 何かありましたか?」

「……が、かみが……」

「髪?」

「はねちゃってる」


 髪の一部を押さえている友香が、すねた表情になっている理由を白状すると、光輝は呆気にとられたような顔になってため息をつく。


「はあーー、本当やばい……」

「はあ? はねててテンション下がってるんですけど」

「分かりました あのビルに入りましょうか? お手洗い行ってきて下さい」

「直るかなぁ」


 友香は足早に光輝の元を離れ、トイレに駆け込む。

 その後ろ姿を見ながら光輝は心臓あたりを押さえていた。


(あれを「無自覚のあざとさ」というのか)


 なんでもない普通の動作も友香がすると、とたんに「かわいいフィルター」がかかる。

 光輝はハルの時と全く変わらない心臓の鼓動に顔が高揚していた。




 ※ ※ ※


 とりあえず、光輝はゆっくり話ができるようランチはホテルの高層階の洋食レストランを予約していた。


「こんなところ高いでしょう?」

「一応、友香さんよりは稼いでるから大丈夫」

「売れっ子プロデューサーの給料なんて、私のファミレスのバイト代の何倍か想像もできないです」


 友香が、ありがとう、とお礼を言ってテーブルにつく。


「今日は初デートだし、いっぱい話したいことあるからね」


 光輝は二人でのセットプランがあるコースをたのんだ。

 未成年の友香に合わせて、光輝も飲み物はソフトドリンクにする。


 ホテルのレストランで、すらすら注文する光輝を眺めながら、なんとも自分と違う世界の人間のような気がする。


 あいかわらず大人だなぁ……と友香は心臓がうるさく騒ぎ出す。


 ハル皇子も優しかった。私が無茶なことをしても、にこにこ笑って手を握ってくれたり、頭をなでてくれたり、ほめてくれたり……。あの時はハル皇子って17歳で年下だったんだよね。


「友香さん? どうしたの?」

「あぁ、ご、ごめんなさい! 何か言いましたか?」

「考え事してたみたいだから」

「ああ……ハル皇子のことを……」


 光輝はその言葉を聞いて、一瞬表情を曇らせたがすぐに話題を変える。


「ところで、友香さんのスマホはまだ異世界の情報表示するのですか?」


 

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