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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第二章 【異世界編】ココロとスマホだけ異世界へ
32/45

32.この世界で見つかってしまったから


「ねえ、見て、あの人。関係者だと思うけど、めっちゃかっこよくない?」

「本当だ! やっぱり業界の人ってなんかあか抜けてるよね 」

「近くによって、列を乱して怒られようか?」


 友香達3人はグッズ列に並んでいたが、彼女たちにもヒソヒソとファン達のそんな話が聞こえてくる。


「うーん、業界のイケメンに目移りするとは、ファンを名乗る資格はない!」


 友香はため息をついて豪語した。


「でも、友香だって、イケメンは見ちゃうでしょ?」

萌那(もな)疾風(はやて)君一筋じゃないの?」

「う~~ん、やっぱり『彼氏』と『推し』はちがうじゃん!」

「彼氏できてから言いなよー」


 ケラケラ楽しそうに話していると、背中越しに声をかけられた。




「ノギシトモカさん? ……」


「はい、何……?」




 とっさに返事をしたが、ライブ友達以外で知り合いなんていない友香は、びっくりして振り向いた。

 すると、背の高いスマートな男性が立っていた。

 友香は全く知らない人だったので気味が悪いはずだが、なぜか雰囲気に既視感があった。


「どこかで会ったことありましたか?」


 そのスマートな人は、友香の手を取ってつぶやいた。


「ちょっと時間下さい」


 いきなり知らない人に手を取られ彼女は困惑する。


「え? でも……友達が……」

「いいですよね? 友香さんを連れていっても」


 光輝はライブ友達二人ににっこり笑いかけた。


「は、はい! どうぞ! 持っていって下さい!」


 友達二人はスーツ姿のイケメンに話しかけられ、顔を赤くして声が裏返っている。


「えぇ? ど、どこに……」


 友香は面識がない男性に連れていかれる恐怖が先に立って、繋がれている手を離そうと抵抗した。


「僕ですよ。ハルです」

「ハ……ハル……ハル皇子? 本当に?」

「ちゃんと待っててくれてました?」


 急に友香の目が潤んできたので光輝は焦る。

 とっさに彼女の手を引いて、走ってその場を離れた。


「ちょっとーー、また報告しなさいよーー友香!」


 ライブ友達の声が遠くに響いていた。






 ーー ハル皇子だ! 姿も声も年齢も違うけど、優しい口調、優しい眼差し……どうしよう。本当に出会ってしまった! 私を見つけ出したんだ! 





 二人は、ライブ会場から少し離れた公園のベンチに座った。


「やっと見つけた。ノギシトモカさん、18歳、◯◯女子大学一年、日本人、東京都在住、アルバイトは◯◯ファミリーレストラン」

「……どうしてそれを……」

「リリーシャ王妃から買ったんですよ、情報を」

「えぇ? だから、個人情報をハル皇子に教えるなとか言ってたんだ……リリーシャさんって金の猛者だわ」

「金額も今のこの世界だと、1つの情報に1兆〜2兆しましたよ。去ってからも、あなたはリアンナ王国をどれだけ救ったか」


 くすくす笑いながら、光輝は答えた。


「はい、僕の名刺。ねえ、友香さんの連絡先教えてください」

「あの……本当に私を見て幻滅してないですか?」

「何故?」

「わ、私、普通のオタクで……リリーシャさんみたいな美女じゃないし……」


 一瞬、光輝は言葉をつぐんだ。

 彼は友香の手を取って、ゆっくりキスをした。


「ハ、ハル……おうじっ!」


 友香は急に顔が熱くなった。


「想像の何万倍もかわいくて、びっくりしてるんですよ。あまり僕の趣味をバカにしないでください」


(いや、ちょっとここまでくると嫌みに聞こえるわ……美的感覚狂ってない? )


 そして、友香は光輝(こうき)の名刺を眺めて、また驚愕した。


「◯◯エンタ……疾風(はやて)君の事務所じゃないっ! 嘘???」

「ふふ……『REDWIND(レッドウィンド)』は僕が作ったグループですよ」

「なんですって?」

「他事務所のオーディションに落ちた疾風(はやて)君に声をかけました。確かにアクア王子そっくりで驚きました。そして、僕がプロデュースしたんです。あなたを見つけるために」


 友香はそこで言葉を失った。


「僕が……怖いですか? どうしてもあなたに会いたかったんです」


 この人はきっとまだ私には話してないことを、たくさん経験したはず。その全てが私に出会うため……。


 こんなに深くて怖い溺愛とかあるの?


「……ちょっと抱き締めていいですか? 本当に僕は君に出会うために長い時間かかったんです」

「……は、はい、どうぞ」


 すると、光輝は友香の感触を実感するように、ゆっくり背中に手を回す。

 手の感触から彼が震えているのが伝わってくる。

 少し彼は泣いてるかもしれない。

 友香も彼の背中に手を回した。


「頑張ったのね、本当に」


 友香は幼い子供に声をかけるように、大きな背中をなでて慰めた。


「はい……長かった。大変でした。」


 二人はしばらく抱き合ったまま動かなかった。

 

 この世界で彼女と恋愛をするために生まれたんだと、光輝は彼女を抱き締める腕に力をこめる。


 友香はハル皇子の腕の中で、もう逃げられないと悟った。


 だって、この世界で、見つかってしまったのだから。


 

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