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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第一章 王国と芸能界とファミレスと
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3.女子大生と伯爵令嬢

 ーー ここは一体どこ? ーー

 

 リリーシャは、時が止まったような世界に降り立った。

 確かに、私は老衰でさっき息を引き取ったはず。

 すると、突然この世界に放り出された。

 夜の窓に映った自分の姿は、20代の頃に戻っているようだ。

 ここは、とても時間の流れがゆったりしている……というより止まっている。

 誰も私の姿も見えず、声も聞こえないかのよう。

 忙しなく人々が行き交っている食堂に見える。


 私は老いて寝たきりになってから……いやリアンナ王国の王であり夫であったアクアが処刑され、国がオークリテシア大帝国に領地を没収されてから、ずっと後悔し続けた。


 アクア王陛下がもっと国民に寄り添った政治をしていれば。

 私が彼に積極的に助言していれば。

 不義理を働き続けたビチリア宰相を更迭していれば。

 しかし、それも全て後の祭り。


 リアンナ王国が滅んでからは、自分自身精神的な病にかかり、あまり記憶にない。

 支配されたオークテリシア大帝国の皇子の側妃になったような気がする。

 自分が正常ではないことは自覚していた。

 後悔するばかりで自分を責める毎日。

 生き地獄であった。

 そして、実際自分が死ぬとこの奇妙な世界で、さ迷っている。


 ーー 一体、私にどこに行けと? 天国でもなく地獄でもなく、行き着いた先がこんな場所なんてーー


 






「ん? みんな何してるの?」


 野岸友香は、今の今までファミリーレストランで動き回っていた。

 今もレストランの制服でトレイとふきんを持ち、立ちすくんでいる。

 レストラン内は時間が止まっていた。

 子供がドリンクバーで機械のボタンを押していたり、学生達がタブレットで注文するために操作している。

 料理を楽しみながらお喋りする家族連れ。

 料理を運ぶキャラクターロボット。

 その全ての動きが静止画と化している。


「……どういうこと?」


 友香がとまどっていると、しくしく泣く声が遠くから聞こえてくる。


「誰? 誰かいるの?」


 この一枚の画像のような空間に誰かいるのだろうか?

 友香は辺りを見回すと、薄いワンピースを着た外国人が膝を抱えて泣いている。


「どうかしましたか?」


 友香は近寄って話しかけた。

 すると、彼女は一瞬肩を震わせ顔をあげた途端、思わず友香はわぁっと感嘆の声を上げた。

 まるで、アニメの絶世たる美女としてデザインされた容姿だった。


 ( こんなことある? 実在してる女性だよね? )


 金髪で深い翠の瞳に薄いピンク色の唇。

 なめらかな肌に丸くて愛らしい目の形。

 神様は不平等って事実なのだわ……。


「あの……」


 その美女はあまりにも友香が凝視するので、涙も止まったようだった。


「あ、ああ、ごめんなさいね。どうして泣いてるの? これは一体……?」


 とりあえず、友香は今のこの状況を彼女にたずねてみた。

 日本語は通じるのだろうか。


「わからないの。私もさっきこの世界に放り出されたから」


 言葉は通じているが、足は裸足だし薄着だし日本のファミレスを背景としているが、ものすごく似つかわない格好をしている。


「どこの国の人?」

「オークテリシア大帝国のリアンナ人。以前、リアンナ王国だった……」


 友香が耳にしたことのない国名だった。


「ちょっと待ってて」


 彼女はマネキンと化した客やバイト仲間を避けて通り抜け、控え室のロッカーから自分のスマホを取り出す。

 その外国人の前に座ると、もう一度国名を教えてもらって検索してみた。


「オークテ……リ……シア」


 検索すると、大帝国ようだ。


 (ん……何これ。「異世界の過去の大国」って。今のヨーロッパではないの? この世界でも現代でもなく、異世界の過去の人なの? )


 もう少し詳細に調べてみた。


「リ……アンナ王国」


 オークテリシア大帝国は、リアンナ王国と戦争をして、滅ぼし支配したようだ。

 それからは、リアンナ王国は一つの地方名になっている。


( 当時のリアンナ王国の王様が悪政を行い、戦争になって処刑されたのか……でも、国民にとっては良かったみたいね。オークテリシア大帝国は、善政で長く栄えたみたいだから )


 友香はふとこの状況に立ち返った。


 ーーいやいやいや、おかしいでしょ。何故「過去の異世界の人」が、日本のファミレスで泣いてるのよ。私達以外、時も止まってるし! ーー


「あなたは名前は?」

「私は……リリーシャ……リリーシャ リアンナ」

「り……リー……リアンナ」


 試しに検索してみる。

 すると、驚きの結果が表示された。


「リアンナ王国の第4代リアンナ王アクアの王妃リリーシャ……?」


 リリーシャは、自分の素性まで詳しく表記するこの未知の機械に目を丸くする。


「こ、これは……何という物体なのですか? 百科事典……すぐ回答が表示される……なんて事!」


 さっきまで泣いていた美女は目を輝かせて興奮していた。

 友香は、彼女の経歴を読み上げた。


「彼女は歴代まれに見る『悪の王妃』の一人だ。使用人や家来をささいな失態で、身体的にも経済的にも罰を与えた。しかし、アクア王はそれ以上に残酷で、実際に使用人を何人も惨殺している。彼は歴史上最も悪政を働いた暴君だ……」


 友香がここまで読むと、リリーシャの目からは再度涙がぽつりぽつりとこぼれた。


「……誤解です。私……私は怖かったのです。アクアが私に異常に執着して……彼は人を疑うことしかしらないから。私が他の殿方に目移りしないよう部屋に閉じ込め、使用人には身分の差を思いしらすため、厳しく接しました。恐怖で皆を支配しようとしたのです」


 彼女は身の潔白を力説していたが、歴史の真実なんてどの世界でも闇の中だろう。


( どちらにしても、私には関係のない話だわ )


「今では、私は『悪の王妃』として名を残しているなんて……絶対に汚名をはらしたいです」


 リリーシャは唇をかみ、悔しそうに手を握る。

 友香は、彼女のそんな様子をよそに何かを検索し始めた。

 

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