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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第二章 【異世界編】ココロとスマホだけ異世界へ
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26.これで現代に帰れるはず!

 いよいよ、リリーシャが直接プロデュースした大きな花束を、オークテリシア大帝国イリアン子爵(ハル皇子)に贈呈する。

 意識は友香に代わっていた。

 スマホを操作できるのは、心が友香の時だけだから。

 

 リリーシャ(友香)に使用人が大きな花束を渡した。

 彼女はハンカチで隠していたスマホを手に持っていた。

 手元も見えないくらい大きな花束を抱えながら、ホール中心に移動する。

 そこには、イリアン子爵(ハル皇子)が跪いていた。

 リリーシャ(友香)が、彼に声をかける。


「両國の友好の証として、この花束をお受け下さい」

 

 決められた台詞を彼女は口にした。

 

「喜んでお受け致します」

 

 彼は立ち上がり、花束を受け取った。

 その場面で一旦二人は停止した。

 拍手を促すためだ。

 一通り拍手の波が終わった後、ある男の声が響いた。

 

『ラランカの花にご興味ありませんか? とても美しい花でしょう。私が栽培方法の情報を提供いたしましょう。きっとお役にたちますよ。ラランカの花にご興味ありませんか? とても美しい花でしょう。私が栽培方法の情報を提供いたしましょう。きっとお役にたちますよ。ラランカの……』


 延々とビチリア宰相の話し声がリピートされた。友香が宰相が話した部分を切り取り、リピートするよう編集したのだ。


 一気に貴族達がざわついた。


「これは……ビチリア宰相の声だわ」

「ラランカの花……きっとこのリアンナ王国のことよね?」

「何? 誰に何の情報を提供するの?」


 ずっとスマホの声が響き渡り、ビチリア宰相は顔面蒼白になった。

 そして、リリーシャ(友香)は、再生を止めた。

 イリアン子爵(ハル皇子)は、彼女を見ながら、

「とても上手でしたよ」と、耳元で褒めてくれた。


 会場が騒然となり、群衆の中にいたビチリア宰相は慌てふためいた。


「ご、誤解だ! 私はただラランカの花について話しただけだ! 花の話題をして何が悪い!!」


 ビチリア宰相は往生際が悪く叫びだす。

 それを見ていたリアンナ王は、おろおろするばかりで、この騒ぎの収拾がつかない。

 アクア王子はそんな王陛下の姿を見て、立ち上がってビチリア宰相に問いかけた。


「ビチリア宰相、誰に何の情報を提供しようとしたのか。答えてみろ、本当にラランカの花のことなのか?」


 14歳のアクア王子は宰相を怒りの形相でにらんだ。

 彼の美しくも異様な威圧感に圧倒される。



「そ、それは……」


 ビチリア宰相は、ちらっとオークテリシア大帝国のナリア伯爵の方を見た。

 ナリア伯爵も、彼の裏切り行為の音声が流れることは知らず、戸惑いの表情を見せていた。


「皆さま、ご静粛に! 先ほど、リリーシャ嬢から花束を受け取ったオークテリシア大帝国の子爵イリアンと申します。おそれながら、私から一言申し上げます」


 ここで、イリアン子爵ことハル皇子が、事の顛末を釈明しだした。


「先日、確かにビチリア宰相から我が国に、先ほどのような提案がありました。それは、間違いございません。……ではここからは、ナリア伯爵から弁明いたします」


 ハル皇子は見事に貴族達を動揺を鎮めて、ナリア伯爵の話に耳を傾けさせることに成功する。


「皆さま、私がオークテリシア帝国伯爵ナリアでございます。リアンナ王陛下ならびに皆さまにご報告したい件がございます」


 ナリア伯爵は、リアンナ王が座っている上段の玉座の方向に跪く。

 そして、帝国の護衛が一枚のリアンナ王国近衛兵の制服を広げて持ち上げ、王族と貴族に見せつけた。


「こちらは、我が国に亡命したリアンナ王国 レーバン侯爵のかつての騎士の制服です」


「何……?」


 リアンナ王はにわかに信じがたいのか、呆然と立ち上がった。


「や、やつは焼身自害したはずでは……」

「いいえ、我が国に亡命しました。今は、素性を変え、家族と一緒に大帝国の保護の元暮らしております」

「じゃあ、あの遺体は……」

「別人ですね。帝国で火事で亡くなった身元不明の遺体です。身元もわからない故、最後に身代わりになってもらいました。レーバン侯爵のネーム入りの剣を側においたので、そのまま彼の遺体として処理されたと思いますが」


 ナリア伯爵はひょうひょうと答える。


「こ、これは我がリアンナ王国に対して、不義理な対応だろう。彼は大罪を犯したのだ。何故引き渡さない?」

「ビチリア宰相に脅迫され、致し方なく犯行に及んだとしてもでしょうか?」

「……な、なんだとっ!」


 ビチリア宰相は、リアンナ王陛下襲撃事件の証人が生きている事実に衝撃を受け、立ち尽くすしかなかった。


「大陸亡命協定では、政治的に迫害が予想される場合、引き渡しはできません。我が国では、これに該当すると判断しました」

「うぅ……しかし……」


 リアンナ王は小国であるため大帝国の判断を覆すとこはできなかった。

 会場にいる貴族達は、一斉に顔を真っ青にしてうつむいているビチリア宰相に視線を向けている。


「それより、ビチリア宰相に事情を聞いたら、いかがですか?」


 アクア王子は、王陛下にビチリア宰相を別室で取り調べするよう助言した。


「そ、そうだな。ビチリア宰相を捕らえて、別室にて事情聴取しろ!」

「や、やめろ! 私は現王妃の兄だぞ! 王妃、なんとか言ってください!」


 リアンナ王妃は全く国政に疎く、この事態に戸惑うばかりで言葉を失っていた。


 すると、5人ほどの護衛騎士が、抵抗するビチリア宰相の腕をつかみ、会場から退出させた。


 会場内は騒然としたが、アクア王子は一言発言する。


「場を乱して申し訳ない。どうかめでたい席でなので落ち着いて欲しい。式典はまだプログラムが残っている」


 まだ14歳の幼い王子に、大人達が諭されている光景に、イリアン子爵(ハル皇子)はリアンナ王国が変わりつつある状況を目の当たりしているように感じた。

 そのまま隣で座っているリリーシャに目線を移す。


(帰れたのかな、あの子……)


 ハル皇子はリリーシャの表情が曇っているような気がしたが、今は話しかける術もないので、後で彼女に確認することにした。






 

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