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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第二章 【異世界編】ココロとスマホだけ異世界へ
25/45

25.推しに会いたいだけ

 2曲目はピアノ伴奏での歌唱だ。


 これは、平和の祈りを壮大なスケールで歌い上げた。

 皆、心に響くものがあるのだろう。

 厳粛な雰囲気が漂う。

 歌い終わると、自然と拍手がわき起こった。

 きっと、貴族の中にも平和というテーマには思うところがあるのだろう。

 アクア王子もきっとこの歌を選んで練習するうちに、周りの人間への愛情が芽生え、彼を変化させたかもしれない。

 リリーシャはそう思い巡らせた。

 

 いよいよ3曲目はオーケストラやコーラス隊との競演の歌唱になる。リリーシャは友香と体を交代した。

 

 (アクア君をちゃんと補充して帰らなきゃ。もうたぶんアクア君の歌を聴くのは最後だろうし)

 

 友香はこの世界に来て戸惑うことも多かったが、やはりアクア王子には救われていた。

 

ーー国の滅亡を阻止するとか、そんな大それたことが可能かどうかわからないが、アクア君とリリーシャさんには幸せになってもらいたい。


友香は心の底から願っていた。

 

ーーそして、私は帰るんだ⋯⋯!






 静かにオーケストラ演奏が始まった。

 それに合わせて、アクア王子がゆっくりと歌い始める。

 友香はアクアを眺めながら、瀬田疾風(はやて)に思いを馳せていた。



ーーどちらも素晴らしい歌手だ。

 顔はそっくりだけど、やっぱり歌声は微妙に違う。

 いや、歌っている曲のカテゴリー自体が違うけど……。確かにこの曲はリリーシャさんに向けたもので、私はその人の体の中にいて……推し激似の美声王子様がこっちを見て歌ってくれている。彼は私だけに向けて指ハートもしてくれる。


 とたんに、友香の目からは、一筋の涙がつたう。



ーー疾風(はやて)君にとって、私なんてステージから見ればペンライトの小さな灯り一つに過ぎない。

 1万、いや5万の中の一つ。ライブ中の「指ハート」だって、私の周辺の100人くらいにしているのだろう。私なんて認知されることなんて一生ない。


 それでも……


疾風(はやて)君に会いたい」


 友香は涙を流しながら、つぶやいていた。




 拍手喝采がなりやまない中、アクア王子の歌唱のイベントは終わった。

 皆、余韻に浸りながら、口々に王子への賛辞を送っている。

 友香はこの休憩時間に少しドレスルームへ退席した。





 ※ ※ ※


『大丈夫? 泣いていらっしゃったけど……』


 リリーシャは心配そうに脳内で声をかけてくれる。


『うん、大丈夫。気持ちが高ぶっちゃって』

『そう……いよいよ、あと2つ後のプログラムに花束贈呈がありますからね。スマホ? でしたかしら? 準備しておいて下さいませ』

『うん、わかった』


 ここで、友香はリリーシャと意識を交代して、花束贈呈まで休ませてもらうことにした。







 リリーシャが会場に戻ると、オークテリシア大帝国面々が挨拶にきた。


「もうすぐ花束贈呈ですね」


 ナリア伯爵がリリーシャに話しかけた。


「そうですね。緊張します」

「私がサポートしますから、大丈夫ですよ」


 イリアン子爵ことハル皇子が励ました。


「ところで、今はリリーシャ嬢ですか? もう一人の方と代わってもらえませんか?」


 彼はリリーシャにしかわからない会話をした。

 大帝国の面々は、この会話が全く理解できない表情をしている。


「いいでしょう。あなたも必死でございますのね、彼女に」


 リリーシャはクスクス笑って、友香と意識を代わった。


 また意識を入れ替わった途端、イリアン子爵(ハル皇子)が目の前にいるので、友香は慌てふためいた。


「は、は、ハル……イリアン子爵っっ!」

「大丈夫ですか? あと2つプログラム消化したら、いよいよ私たちの出番ですよ」


 ニコニコ笑って、彼は彼女に話しかける。


「これが最後かもしれないから何度でも言いますね。私はあなたの世界で必ずあなたに会いに行きます」


 リリーシャ(友香)は鼓動が波打ち、顔が燃え盛るように真っ赤になった。


「で、でも私なんて! 普通のオタク女子で、リリーシャみたいな超絶美女ではないですよ!」

「僕だって、そこでは超絶美形ではないと思いますよ。それに君は絶対かわいいはずです、僕にとっては」

「あ、あ、あの……私は、疾風(はやて)君が好きですし」

「その疾風(はやて)君を好きな君が好きなんですよ……ああ、そろそろ戻らなきゃ。じゃあ、また花束贈呈でね」


 イリアン子爵(ハル皇子)は、そのまま大帝国の護衛達の元に戻っていった。

 友香も心臓が落ち着かないので、即座にリリーシャに体を代わってもらった。


「あらあら、ハル皇子はすっかり友香様にご執心でございますこと」


 そうつぶやいて、リリーシャはにっこり笑った。



 

 

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