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推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第二章 【異世界編】ココロとスマホだけ異世界へ
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11.命を奪う花

「本気ですか? ハル皇子殿下」

「伯爵、私は今は『イリアン子爵』、あなたの護衛騎士です」

「し、失礼しました。どうも慣れなくて」


 就寝前、客室にイリアン子爵ことハル第二皇子、ナリア伯爵、他護衛騎士達数名が集まっていた。


「明日、アクア王子に園庭のある一角で歌の練習をしてもらう。そこで事件を起こす。皆、手はず通りに頼む」

 ハル第二皇子はある作戦会議を終わらせようとしていた。


「しかし……戦争の火種になるかもしれませんよ」


「花数輪(すうりん)で戦争を起こすなら、愚王もいいところだ。リアンナ王国もそこまでの国だったということだな」


 ハル皇子はぴしゃりと言いきった。


「王子の歌唱講師の買収はすんでいるか」

「仰せのままに」


 ナリア伯爵はハル皇子に楽しそうに声をかける。


「明日は皇子の演技力が試されますな」








 ※ ※ ※

 アクア王子は、公務や婚約パーティーの準備等の合間をぬって、歌の練習をしていた。


(不思議だな……僕は歌っているとものすごく幸せを感じる。前世は歌い手だったとか? )


 王子の歌声はもはや城中の使用人達の癒しになりつつあった。

 彼が歌うと、皆が足を止めて聴きいったり目を(つむ)って手を止めてしまう。

 しかし、仕事を進めないと懲罰があることを思いだし、また(せわ)しなく働いた。

 歌の講師がある提案をする。


「今日は天気も良いので、外で練習しましょうか」


 庭に出て、講師はラランカの花壇前の小さなスペースに案内した。

 そして、アクア王子は講師の合図とともに歌を披露する。

 すると、メイド達が聞き惚れ顔を赤くして王子の方を見つめた。


(なんだろう……今までにない幸福感だ。僕は歌うことで、これほど人を惹き付けられるとは思わなかった)


 王子の歌声は、リリーシャの客室にも届いていた。


『ちょっ! 疾風(はやて)君の歌声だ! 野外ゲリラライブしてる!』


 衣装合わせをしていたリリーシャの頭の中で、友香が体を代わるよう騒いでいる。


『えぇ? 衣装合わせ中なのですよ? 今、アクアに会いたいのですか? 』


 リリーシャと体を交代した友香は、今すぐ外に出たいから、パーティードレスを脱がして、簡易なドレスに着替えさせるようメイドにお願いした。


 そんな中、突然、王子の歌声が聴こえなくなった。

 友香が窓から様子を見ると、オークテリシア帝国の人達が通りかかって、王子に挨拶しているようだ。

 ビチリヤ宰相が、帝国側の伯爵一行を連れて、園庭を案内しているように見える。


(ちょっと! このまま歌が終わったら嫌だ! 早く着替えなきゃ! )


 友香がバタバタと着替えていると、部屋にメイドが慌てて入ってきた。


「大変でございます! 殿下が大帝国の護衛騎士に切りかかろうとしております!」








 ※ ※ ※


「貴様……何をしたかわかっているのか?」


 花壇の上に倒れた大帝国の騎士に、アクア王子は剣をつきつける。

 体を半分起こした護衛騎士は顔を青くして、震えていた。


「も、申し訳ございません! 足がもつれてしまって」


 騎士は小声で震えながら謝罪する。

 アクア王子は怒りで顔が歪んでいた。


「お、王子殿下! お止めください! 護衛騎士といえどもオークテリシア大帝国の騎士ですぞ!」


 ビチリヤ宰相は慌てて王子を制止する。


「この花はラランカ……明後日の婚約パーティーにはなくてはならない国花だ。建国以来、祝辞には飾られた花……一度も欠かしたことはなかった! 会場にこの花がなければ不幸が起こるとも言われている! 貴様は、このリアンナ王国をつぶしたいのか!」


 護衛騎士は、ナリア伯爵と共にビチリヤ宰相に園庭を案内されている途中、ラランカの花壇に足がもつれて倒れてしまったという主張だ。

 ナリア伯爵も騎士の行動を謝罪するが、王子の怒りはおさまらない。

 この護衛騎士はイリアン子爵……ハル第二皇子の仮の姿だった。

 確かにリアンナ王国にとっては、貴重な花かもしれないが、オークテリシア大帝国にとってはただの花。

 それが理由で、大帝国の騎士に剣を突きつけているというのは、正気の沙汰ではない。


「どうか気をお鎮め下さい。両国の摩擦の原因になります」


 ビチリヤ宰相は、アクア王子が「恐怖王」として育つよう教育したが、それは内部の者に対してであって、まさか自国の数十倍もの領土をもつ大帝国の者にまで、こういう行動に出るとは思いもよらなかった。


「リアンナ王、王妃、リリーシャ嬢を呼べ!」


 ビチリヤ宰相は、とりあえずアクア王子を説得するために3名の名前を出し、使用人に命令した。

 しかし、両陛下は公務で不在であることを思い出した。

 場は騒然とし、アクア王子はハル第二皇子の仮の姿イリアン子爵を睨み付けていた。

 そして、イリアン子爵(ハル皇子)は、もう外部からの助けはないと判断した。


(ダメだな……私も剣を抜くしかないのか)


「貴様……故意にラランカを狙って倒れただろう」


 王子は剣を突きつけ不敵な笑みを浮かべながらつぶやいた。


「いや、決してそのような」

(鋭いな……ばれてる! やはり、ただの愚王ではなさそうだ)


 イリアン子爵(ハル皇子)は、剣の鞘に手をかけて身構えた。


「覚悟はできているのか? バカにしやがって!」

 アクア王子はためらいなく剣を振り下ろそうとした。


「やめて!!」


 その時、リリーシャの声が遠くから響いた。

 もちろん、中は人は友香だった。




 

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