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第三十六章 再起


ヴァイスとの死別は、コリンの心に深い影を落としていた。数年の歳月が過ぎてもなお、彼は言葉をほとんど発さず、ただ物思いに沈む日々を送っていた。


それでも、家のことはきちんとこなし、規律ある生活を続けている様子からは、彼らしい律儀さと内に秘めた強さが窺えた。その律正さは、崩れかけた心を支える支柱のように働いていたのだろう。その姿を見て、私は彼が確かに生き続けていることに、自然と安堵を覚えるのだった。


譲り受けたイリスとの狩りは今や息が合い、見事な連携を見せていた。イリスは鋭い視覚と聴覚を駆使して魔物を自ら発見し、状況に応じた判断まで下すようになっている。


自然界の捕食者が風や地形、匂いを読み取るのと同じく、イリスも環境の変化に敏感に反応していた。魔法鞄には次々と仕留めた獲物が詰め込まれ、組合へ運び込む私の姿に、傭兵たちが羨望と驚嘆の眼差しを向ける。


称賛と嫉妬が入り混じる視線も、私はただ静かに受け流した。人は他者の成果に強く心を揺さぶられるが、私は淡々とその日を積み重ねるのみだった。


「さて、今日は……久しぶりに串焼きですかね」


以前は家で料理をすることもあったが、コリンの様子が気にかかり、私が家で何かすることを、彼が変に気にしてしまうのではないかと心配するあまり、遠慮してしまっていた。


だから今では、街で出来合いの食事を買い、家に帰るのが習慣となっていた。街の屋台には香ばしい煙が立ちのぼり、風に乗って香りが運ばれてくる。買った食材を魔法鞄に収めると、街の外で待つイリスの首筋をそっと撫でた。


イリスは嬉しそうに身をかがめ、背に乗るよう促してくれる。その大きな体温が風と混ざり、微かな安心を与えてくれた。杖で浮遊を装いながら背に乗り込むと、自然と口元がほころぶ。


「イリス、ありがとう。ねぐらへ帰っていいよ」


そう告げると、イリスは今日の成果を一つ咥え、お気に入りの空へと飛び立った。翼が大気を切り裂き、日の光を受けて煌めく。その飛翔は自由そのものだった。


「では、私も家に入りますかね」


独り言が増えた自分を自嘲しつつ、台所に出来立ての串焼きと香り豊かなスープを並べる。すると、珍しくコリンが食卓へやって来た。普段は私の後で一人で食べ、片付けも済ませていた彼が、久々に向かい合う形となる。


「コリンも、久しぶりにどうですか?」


言葉を返されることはないと思いつつ食べ始めたその時、低い声が響いた。


「今まで、ごめん」

「いいえ、気にしてませんよ」


数年ぶりに聞くその声に、私は過去に彼へ何度も語りかけ続けた日々を思い出す。あの頃の幼い姿が、一瞬今のコリンと重なった。


彼は静かに椅子を引き、私の隣に腰を下ろした。瞳には迷いを払うような、決意の色が浮かんでいた。


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