第二十三章 目的
街で必要な買い物を済ませた私達は、そのまま街を出て夜営をした際に当面の事を話し合った。
「――あんまうまくはねぇだろ?」
「だめですよ、聞こえます」
宿泊費に含まれた夕食の席に出された食事に対してヴァイスが小声で聞いてくる。更に小声で答えた私だが…
単純な調理法ながらも毎日食べていた魔物の肉に舌が慣れてしまった私とコリンは、互いに気まずそうな顔を見合わせた。出された動物の肉が使われた食事と比較してしまったのだ。
ヴァイスの指摘にその通りだと頷きたい気持ちになったが、食堂の人々の視線を意識し、正直には言えず苦笑いを浮かべるしかなかった。
「意地悪はしないで下さい」
「いやー、お前らなんか良い子過ぎてな、からかいたくなるんだよ」
夕食を食べ終わり借りた個室に入った所で指摘をしておく。ヴァイスからすれば私たちに子供らしくと言いたい気持ちがあるのは理解出来るが。だからといって他人を巻き込むなと言いたいところである。
そのような宿屋の喧騒など届かない森の端では、月明かりに照らされた木々の影が揺れ、静かな夜風がそっとイリスを撫でていた。
宿屋に一泊する理由は、明日から冒険者の依頼を受けるためだ。昨夜も軽く説明されたが交代での見張りが必要だからと時間が足りなかった。改めて今夜、ヴァイスから詳しく聞く事になった。
「Gランクからスタート、これは誰しも通る道だ。報酬も低いし肉体労働が多い。魔法が必要な仕事だけやれば直ぐにFに上がる」
受付の職員から聞かされるよりヴァイスの経験に基づいた説明だった。しかし長くなるため、一度言葉を切って息を整える。
「FもGと似た仕事だな。魔法を使ってりゃ、Eに上がる」
「そんなに簡単にですか?」
「お前らがどこまで上がるか、経験から言わせてもらうとAは確実だな」
そう言ってヴァイスは私達の表情をうかがう。
「秘密があるだろ?」
「はい、使っていい魔法ですよね」
「そうだ。ギルドに入った理由は身分証だ。街の出入りも国境を越えるのも必要になる。だから簡単に入れる冒険者ギルドを勧めた」
「はい、そうでしたね」
真面目に働く冒険者からすれば私たちの不純な動機に映るだろうが、事実だった。
「楽しくなったらランクを上げて暮らすのもいい。身分証だけでいいなら実力は隠せって話だ」
コリンが冒険者を選んだ事からしても彼も今は隠したいのだろう。だから薬師へは進まなかった。聞いては居ないがこれまでの関係性から予想はできる。
「解りました。必要なものが身分証なら?」
「Eランクまでは上がっといた方がいいな」
「何故ですか?」
「報酬は税金が引かれた額だ。Fまでは税を納めきるには依頼を多くこなさないとならん。
街に住む冒険者にとっては助かる依頼だがな」
「つまり、Eからどこまでが理想ですか?」
「Eには隣街までの護衛みたいな依頼がある。護衛というより荷物持ちだな」
滅多にいない盗賊の類も、狙うのは金になる商隊ばかりで、利益にならない者は襲わないのだという。その仕組みは理解出来るが盗賊が居ると知り身体が強張る。
「DからはCの依頼が混ざる。そこに本当の護衛依頼がある。実力を示せば断れない指名依頼も発生するから厄介だな」
聞かされる説明には筋道の通った理由があり私たちの目的に忠実だ。好きにすればいい、この先に何があるかは分からない――そう締めくくるとヴァイスは自分の個室へ戻っていった。




