第二十二章 知見
「その見分けにもなりますが、これまでに見つかった物で魔法の効果を持つものは未だにございません」
「その、魔道具はなんで王公貴族なの?」
魔道具への興味は一旦落ち着いた所で専売元が王公と言う点を問う。
「それは、魔道具の図面を所持しているのが王公貴族だからです」
意味が理解できずいたら私の顔に出たのだろう、そのまま店員は説明を続けた。
「図面そのものが古代の物なのです」
「古代?」
「ええ、歴史では必ず学ぶ内容でして、天恵の時代と呼ばれる魔道具の時代とも言われます」
店員は知識を話すのが楽しくなったようで、最後まで止まらず説明してくれた。
「そして、人と魔物は決して同じ土地に住めなかったようです」
「凄い、お勉強になりました。ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
簡単に言えば、大昔は現代よりも魔道具が多く存在していた。
今では衰退し古代の遺跡から稀に発見される図面からしか製造できない。
研究は続けているが解析も分析も出来ず失われた今現在は失われた技術となった。何故そうなったかと店員はさらに詳しく語ってくれたが、私には必要のない話題だった。
「ヴァイスさん、欲しいなら買おうよ」
「しかし、値段が…」
「ずっと見てるんですし、余裕があるなら一つくらい。ね?」
コリンにも賛同を求めるように頷いた。
「じゃあ、買うか!中古だが」
長話を店員にさせた手前、買ってもらった方が都合がいい。古代や失われた技術とまで評価された魔道具を更に詳しく見てみたい。売り物を解析するのは抵抗があったのだ。
あれだけ欲しそうにしていたし資金源となる魔物はこれから先、好きなだけ狩ればいいだけだ。ヴァイスのロマンと私の欲求二つも叶うなら寧ろお得だろう。
「―金貨一枚」
水の魔道具は中古で金貨一枚。年代物と見える外観ではないが、決して安くはない。効果は飲み水を出す魔道具で、銀の筒に魔力を込めると筒の先から常温の飲み水が出る。装飾は貴族らしく美術品としての価値も高い。
「あまり…うまくはないな」
早速試すヴァイス。これまで家で飲んでいたのは冷やした水で、同等かそれ以上の品質だと思ったのだろう。家の近くにあった湧き水がそもそもミネラル豊富な天然水だった。そちらと比較しても生ぬるい水とは雲泥の差だろう。
「私も見ても良いですか?」
買い物を終え、イリスを呼ぶため平地へ向かう途中、現実を知ってロマンが薄れたのか水の魔道具を弄んでから仕舞おうとしていた。
「いいぞ、壊すなよ?」
見るだけなので壊す気はない。構造の詳しい解析はできなかったが、思った通りの仕組みで核を使っただけの道具で間違いないようだ。
「はい、ありがとうございます」
「早いな、どうだ?」
「素材と装飾の価値だけでも良い買い物だと思います」
その評価に満足したのか受け取った後、布にくるみ大事にしまっていた。彼にとってロマンだ大切な物になるのだろう。
「もう一稼ぎにいくか。頼むぞ、イリス」
待機していたイリスの背に乗った一行。空の旅は、これから本番を迎えるのだろう。




