第二十章 好奇
「ブラック…バイパーですね」
「珍しいだろ?いい値を頼むわ」
受付へヴァイスが品を告げると別室へと職員に案内された。滅多に持ち込まれない素材への期待が高まる。
検分役の職員は小型のルーペを使い、素早く素材を確認している。その道具は、ただのルーペではなかった。
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魔道具
物の情報を読み取ることができる。
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気になり目を凝らすと鑑定が勝手に働いてしまった。特別な名前は無いらしいが、効果を拡張すればより多くの情報を得られるのだろう。その分、値も高騰するに違いない。
「いいね、取引成立だ」
ヴァイスが納得のいく値がついたようで、巾着袋は膨らみを取り戻していた。全ての素材を売り払った後はと言うと
「次は、あっちだ」
同じ建物の一角に魔道具を扱う場所がありそこへ移動する。街にも専門店はあるが、商人ギルドの職員が直接説明を行うため、ヴァイスはここで知識を得たいと考えていた。
「こちらは定番の灯りの魔道具ですね。金貨一枚。新しい技術を使ったこちらは金貨三枚です」
「これは?」
「そちらは飲み水の出る魔道具です。金貨二枚、こちらは改良型で金貨五枚となります」
私の知識に照らせば、銀貨と言えば一枚で平民が一ヶ月暮らせる額だ。ここでの価値が同じとは限らないが、それだけ高額である目安にはなる。壁にかかった古い時計の針がゆっくりと進み、時折小さな音を立てていた。
「参考になった」
ヴァイスは購入を見送った。
「これからは未開の地もあるからな。水が無いと困る。中古品を探して、後は必要な道具を揃えれば十分だ」
ふと、思い出したことがあった。魔法で生じる水は確かに「水」だが、容器に貯めたままにすると効果が失われ、やがて消えてしまう。学んでいたのを忘れていた。
「ヴァイスさん」
「何だ?」
急ぎ足で進む一行の中、彼の耳元に小声で告げた。
「私の魔法の水は飲めますよ」
「はあ?なんだって―」
ヴァイスは足を止め、思わず声を張り上げた。周囲の視線が一斉にこちらに集まる。その視線に気がつき続く言葉を飲み込んだようだ。
「すまん、それは本当か?」
「言うのを忘れていました。途中からになりますが、私が魔法で作った水です」
彼が帰宅した際に口にする水もそれだった。検証も済み、鑑定でも「飲用可」と出ていた。二人で暮らす中でそれが当たり前になり、コリンにとっても特別なことではなくなっていた。ヴァイスへの報告を怠ったのではなく、私にとっては「水は飲めるもの」であるのが当然だったため、魔法の常識を忘れていたのだ。
(そもそも、水は飲めますからね)




