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第十章 魔力


翌朝、日の出とともに起床。朝の支度を済ませ、補充された雑穀と野菜、狩りで蓄えた塩漬けを使い、簡単なスープを三人分用意する。ヴァイスがいるときはこうして三人分を用意するのが当たり前となった。


「お前らに新しく教えるのは魔法の基礎だ」


その言葉に、言葉にならない重みが胸を襲った。空の旅で火の魔法を見せてもらい、魔力の鍛錬も行ってきたが、理解は追いつかず、魔力を現象として出すイメージは持てなかった。


「体力はその為に必要だ。魔力については説明したからわかると思うが、使いすぎは気をつけろ」

「はい」


私達は魔力を魔法に変換する基礎段階、精神的疲労が襲い更に体力が不足しては混沌する事もある。それでこの日まで使わず鍛練をしていた。しかし、使えるイメージは私にはなかった。コリンも苦戦している。


コリンは言葉が解らない事が障害となった。ヴァイスは魔法の基礎を教え、魔力の使い過ぎは命の危険に繋がると、最後に同じことを釘を刺して行商に戻った。


「あっ、痛」


私は集中できず、足元の岩でふくらはぎに深い傷を負った。持ち歩いている水袋の水で洗い流し、薬草を貼る。痛みがずきずきと増す。


「いたい?いたい?」

「はい、凄く痛いです。少し休みます」


コリンには痛みを隠さず伝えた。言葉を覚える為に大丈夫等と言う事は使わない。


コリンが傷を手で触れようとした瞬間、痛みは消え、草を剥がすと傷口は塞がっていた。赤い筋が残るだけで、瘡蓋や自然治癒とは異なる。コリンは何が起きたかわからず口を開け閉めする。


「コリン、これは回復魔法だと思います」

「かいふくまほう」

「ただ、呪文が無かったので心配です」

「呪文ないね」

「ええ、だからヴァイスさんに説明して、小さな怪我でも使えるよう訓練しましょう」

「わかった、がんばる」


コリンは大きく頷き、これまでの切り傷や痣を続けて治す姿を見て、私の中で複雑な感情が押し寄せる。


「大丈夫です」


ヴァイスが帰還し、コリンの回復魔法について話す。私は呪文が必要だとは思えなかったが、ヴァイスは改めて呪文の必要性を教えた。


「コリン、めずらしい、良くない、解るか?」

「わかった、良くない」

「出来る人がいない、良くない」

「なんで?」

「コリンが危ないからだ」

「危ない?」

「そうだ。みんなしないことをすれば、コリンは危ない」

「わかった」

「ネアムも良く聞け。これは才能だ。しかし特別な才能は何が起こるか分からん。コリンは自分の身を守れないだろ?呪文無しで魔法を使うのは諸刃の剣だ」

「解りました」

「コリンは今回復だけだろ?」

「はい」

「ならネアムは回復呪文を教え、コリンが馴染む言葉を覚えさせろ。これから使う属性は必ず言葉に馴染ませてから使わせろ。ネアムもだ」


ヴァイスの指示に、私は心からの謝意を胸に刻む。

「言葉がお前達を助けると思ってやれ」


ヴァイスはコリンの回復を確認後、行商へ戻った。私達は毎日狩りと魔法訓練に明け暮れる。


その後、コリンに発音しやすく、魔法で起こる現象を地面に描き理解を深めさせた。それから暫くして火・風・水・土・回復の五属性を使えるようになった。ヴァイスは家に留まる日が増え、魔法を確実なものに導く。私は未だ魔法が使えず、置き去りにされた葛藤とストレスが蓄積される。


だが、これまでの知識では魔法は使えないと認め、魔法理論を受け入れる決意をした。


(…もう、いいです。理解できなくても受け入れる。この身体はコリンやヴァイスと同じ今を生きている。だから使えないのは私のせいだ)


体内の魔力をエネルギーと仮定して放出すると、初めて魔法が現れる。


「…」

「ネアムだめ、それだめ」


初めて魔法を使えた瞬間だった。目の前の鹿に、風の刃が深い傷を刻む。ただ、集中しすぎて呪文を忘れていた。


「すいません。忘れていました。だめな才能ですね」

「うん、同じだね」


私達は笑い、呪文は口実として口にした。既に発動に呪文は不要であることを立証した。


「つまり、お前も呪文は不要か」

「はい、人前では忘れないようコリンと同じ呪文にしました」


ヴァイスは呆れたように頭をかき、腕を組み思案する。

「それが解ってるなら良い、暫くここに残る」


呪文無しのダメな才能は三人だけの秘密とし、コリンに真似しないようにヴァイスは釘を刺した。その様子をイリスも静かに見守っていた。数日後、私達は全ての属性を使えるようになり、ヴァイスは合格と認め、どこか呆れた表情を浮かべた。



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