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第六十七話 新キャラ登場ラッシュ

 根倉さんに哀悼の意をささげた後。

 湾内さんはまだ根倉さんの修理を諦めていないようだったので、俺と最上さんは先に学校を出た。


「根倉さん、体調が悪かったのかなぁ」


「そうなのかもしれないな」


 たぶん君のせいだが。

 まるで、強い仲間が入って追い出された勇者パーティーの一人みたいな落ちぶれ方だった。どうか這い上がってくれ。追放されたけどもう遅い展開、大好きなのでぜひともがんばってほしい。


 まぁ、ひとまず『お疲れさま』とだけは言ってあげよう。もう諦めてしまった元メインヒロインにこれ以上攻撃しては可哀想である。


 そうやって、会話をしながらのんびりと歩いていた時のこと。


「そういえば、佐藤君」


「なんだ?」


「あの、お昼はごめんね。急に逃げたりしちゃって」


 ……おお。

 なかったことにするのかと思っていたが、どうやらちゃんと向き合ってはいたらしい。


「いや。こちらこそごめんな。いきなりすぎたかと反省した」


「ううん。気持ちは嬉しかった」


 最上さんは小さく笑った。

 お昼の時は動揺のせいか笑顔が見られなかった。笑えているということは、幾分か心に余裕が生まれたのかもしれない。


「あの、返事は――もうちょっとだけ、待ってもらえる?」


 少し時間が空いて。

 冷静になった彼女が導き出してくれた答えに、俺はしっかりと頷いた。


「もちろん」


 まだ好感度が足りないのなら、もっと好きになってもらえるように努力する。

 ――と、言いたいところだが。


 しかしこの猶予の時間は、俺のためのものではないということを分かっている。


「わたしが、佐藤君に釣り合う女性になれるまで……待たせちゃってごめんね? もっと、佐藤君の隣にいても胸を張れるような人になるために、がんばるから」


 うーむ。逆なんだよなぁ。

 俺が不釣り合い、というなら万人が頷いてくれると思うのだが。

 しかし、最上さんは俺に対する評価が異常に高い。彼女のフィルター越しに見える俺は、非の打ち所のない完璧な人間らしい。


 残念ながら、佐藤悟という人間はそこまで素晴らしい人格者ではないというのに。


「俺は今の最上さんでも、十分に素敵だと思うがな」


「……そ、そういう言葉に甘えちゃったら、佐藤君に失礼だから」


 そう言いながらも、褒められたことは嬉しいのだろう。最上さんはほっぺたをむにゅむにゅとつまんで、ニヤケそうになるほっぺたを無理やり抑え込んでいた。かわいい。


(卑屈の名残は、まだ消えないか)


 彼女は自分に対する評価が著しく厳しい。

 やはり思想の根っこにあるのは自己否定論なのだろう。


(――強く言うべきか?)


 他者の思想を変えることはほぼ不可能。

 しかし、影響を与えることなら、やれないこともない。

 先ほどは控えめに言ったが、ここはあえて強い言葉を使うべきか。


 もちろん、そうは言っても別に精神的に追い詰めるという目的のものではない。


(リミッターを外して、最上さんを褒めまくってもいいのかもしれない)


 俺の最大限の力で、彼女を褒め称える。

 こちらからの他者肯定によって、最上さんの自己否定を押しつぶす。

 そうすることで、関係性に新たな進展が生まれるかもしれない。


 そう思ったので、早速。


「最上さん。俺は君のことを――」


 肯定の言葉を暴力的にぶつけようとした、その瞬間。

 まるで、意図されたタイミングのように。


「あっ。佐藤君、そっちは危ないよ。車が向かって来てる」


 対面から、黒塗りの高級車が近づいてきた。

 郊外のベッドタウンではなかなか見かけないサイズである。最上さんの忠告通り、壁際に近づいて通り過ぎるのを待とうかと思ったが……俺たちのそばで車が停止したので、こちらも足を止めた。


 な、何事だろうか。

 最上さんと顔を見合わせていると、突然窓が開いた。


 そして顔を覗かせたのは――金髪縦ロールの女子生徒。


「ちょっと、そこの庶民と……風子さん。どうぞ、お乗りくださいまし?」


 湾内さん、根倉さんに続く、新キャラクターの登場である。


 彼女の名前は、尾瀬うさぎ。

 生粋のお嬢様であり、真田才賀を狙う、メインヒロインの一人だった――。

お読みくださりありがとうございます!

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これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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― 新着の感想 ―
打ち切りにしたのは編集部だけど先生に手あかしか残ってないコテコテのラブコメを書かせたのも編集部だから優秀でも何でもないぞ
全てのキャラがクソだと思ったらコレ打ち切り漫画だったね、打ち切りにした編集部は超優秀だったって事か!
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