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第四十七話 真田才賀はイケメンでかっこよくてみんな付き合いたくて仕方ない

 湾内さんの言動をまとめよう。


 彼女はもともと、真田を取り合うヒロインの一人として抗争を繰り広げていた。

 しかし、最上さんの登場によって戦意が折れた。他のヒロインには負けじと食い下がっていたものの、最上さんに勝てないと悟り、戦線から身を引いた。


 そして彼女は、最上さんのサポートをすることを決めたわけだ。


「あたしの気持ち、風子に託す。あたしの分まで幸せになってね……」


 湾内さんは涙ぐんでいた。

 本当は自分が真田のそばにいたかったのだろう。

 でも、最上さんの方が自分よりも真田を幸せにできると判断した彼女は、どこか晴れやかでもあった。


「才賀のこと、よろしくねっ」


 爽やかな笑顔だ。

 まるで敗北したスポーツ選手のような態度である。

 ベストは尽くした。相手がそれ以上に素晴らしかった。ただ、それだけだ。


 そういうことを、彼女は言いたいのだろう。


 一方、託された最上さんは――


「ご、ごめんなさい。無理です」


 ――ぺこりと頭を下げて、丁重にお断りしていた。

 まぁ、そうなるよな。そもそも最初から彼女は乗り気じゃなかったし。


 ただ、湾内さんは驚いたように目を丸くして、最上さんを凝視していた。


「にゃ、にゃんでっ」


「にゃん?」


「にゃんで断るのよっ!」


 驚きのあまりわんちゃんがねこちゃんになっている。

 舌ったらずなところも湾内さんのいいところだ。アニメ化とかしたらきっと一部の層に爆発的な人気が出るだろう。薄い本も厚くなるかもしれない。


 まぁ、そんな下世話な話はさておき。


「わたしには、真田君を幸せにすることはできないよっ」


「できるわよ! なんでやる前から諦めてるの? もっとがんばってよ! やってみないと分かんないでしょっ!!」


 熱い。熱すぎてちょっと暑苦しい。

 というか、最上さんが断っている理由は努力と関係ないと思うが。


「あんたならできるっ。自信をもって、才賀にアタックして!」


「違くてっ。できるとか、できないとか、そういうのは関係なくて、あの……!」


「大丈夫。風子はかわいいし、胸が大きいし、ドスケベだし、男ならみんなむしゃぶりつきたくなる体してるんだから、堂々として! その無駄にでかい胸を張りなさいよ!!」


「うぅ……佐藤君、たすけてぇ」


 二人の間で会話が成り立っていない。

 もともと話すことが苦手な最上さんは、早々に俺に助けを求めてきた。


 むにゅっ。

 助けを求められた際、なぜか腕に抱き着かれて胸を押し付けられたのだが、これは何の意味があったのだろう。


 色仕掛けか。けしからん。

 でもそういうことをされたのであれば、俺が助けなければならないな。


 ヒロイン同士のやり取りなので、あまり首を突っ込む気はなかったが。

 胸を押し付けられては仕方なかった。


「湾内さん。なんで最上さんが無理だと言っていると思う?」


「それは、自信がないんでしょ? 才賀がイケメンすぎて、自分が不釣り合いだと思ってるんじゃないの? その気持ち、ちょー分かる」


「いや、分かってない」


 やっぱりそうだった。

 最上さんと湾内さんの話がかみ合わない理由は、そこなのだ。


 そもそも、前提条件が違う。


「落ち着いて聞いてくれ。最上さんは、真田のことをイケメンだとまったく思っていない」


「は? そんなわけなくない? あんなにイケメンなのに???」


 ほら、この通り。

 湾内さんは真田のことを魅力的な人間だと思っている。


 しかし、最上さんは違うのだ。

 つまり、こういうことになる。


「いいか? 最上さんは、別に真田と付き合いたいと一切思っていないんだよ」


「え? ……えー!?!?!?!?」


 俺の指摘に、湾内さんは声を上げて驚愕していた。

 まるで、天動説だと思い込んでいる人間に地動説を提唱した、みたいな反応である。いや、今の比喩は適当すぎるか。


 要するに、湾内さんはかなりびっくりしていた。

 そうなるの無理はない。


 なぜなら、彼女は負け濃厚とはいえヒロイン界隈の一人。

 彼女たちにとっての大前提である『真田才賀はイケメンでかっこよくてみんな付き合いたくて仕方ない』という認識を否定したのだから――。



お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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