表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/181

第三十二話 脇役の台頭に主人公が焦りだした

 ああ、やっぱりこうなるんだ。

 なんとなく、予感していた。きっとすぐにでも、彼と対面することになるのだろうな――と。


「おい、ちょっといいか?」


 弁当を食べ終えた後のこと。

 昼休みはあと五分ほどで終わる。最上さんと俺は違うクラスなので、別れて自分の教室に向かっていた。


 その最中に、呼び止められたのだ。

 その相手はもちろん――真田才賀だった。


「……ん? なんだ?」


 一瞬、どう応じようか迷った。

 不遜にいくべきか。あるいは謙虚にいるべきか。真田との関係性をどちらに定めるかによって、態度を変えることは可能だ。


 しかしながら、俺はどちらも選ばなかった。

 真田は味方でも敵でもない、という判断にしたのだ。


 まだ、この展開の全容が見えない。

 こんな不透明な状況でヘイトを買うわけにはいかないし、逆に友好的でいられても困る。


 だからこそ、中庸でいいのかもしれない。


「お前、名前は?」


「佐藤だよ。よろしくな、真田」


「俺の名前は知っているんだな」


「有名人だから、当たり前だろ」


 あれだけ美少女を侍らせておいて、無名なわけないだろ。

 男子生徒なら、俺じゃなくてもお前の名前は知っている。男子高校生の嫉妬心を舐めるな。まぁ、俺は最上さんにしか興味ないので、みんなとは少し違うが。


「で、何か用事か?」


 昼休みも残り数分。

 できれば、解放してほしいものだが。


 しかし、彼は何か聞きたいことがあるようだ。


「……最上と付き合っているのか?」


 なんて率直な質問なんだ。

 たしかに時間はないが、もう少しオブラートにしてほしい話題である。


 会社とかで後輩の女性社員に聞いたら、セクハラ認定される問いかけだった。

 まぁ、俺はあらゆるハラスメントを乗り越えた屈強の営業戦士(故)。この程度では動じない。


「付き合ってはないな」


「じゃあ、どういう関係だ?」


「……どういう関係なのか、俺も知りたい」


「は? ふざけているのか?」


 いやいや。もうちょっと態度を柔らかくしてくれよ。

 敵意がにじみ出ていて、あまり良い心象を与えないぞ。ビジネスの場では本心を曝け出すと不利になるのだ。


 たとえ相手が嫌いでも、好きそうなそぶりを見せる。

 それが人間関係を円滑にする手段だ。


「強いて言うなら、師弟だな。あるいはファンとアイドル。もしくは観客と演者かもしれない」


「……意味が分からねぇよ」


 俺だって分からないからな。

 曖昧な表現になることは許してくれ。


「とにかく、最上とは近しい関係なんだよな?」


「まぁ、否定はできない」


「――そうか。なるほどな」


 なるほどって、何を納得したんだろう。

 というか、真田よ……お前、夏休み前はまったく最上さんのことを気にしていなかったのに。


 見た目が変わった瞬間、態度が一転したな。


「夏休み前はもう少し地味な印象だったが……あんなにかわいいなんて知らなかった」


「そうか」


「ああ。だから、ちょっと気になってるんだよ」


「……それを俺に言う意味があるのか?」


 何の宣言だよ。

 気になっているのはいいことだ。アプローチでも仕掛ければいい。


 だが、俺に仕掛けてどうするんだ。


「気になっている、というのはあれだぞ。恋愛的な意味じゃなくて、人間的にという意味だからな」


「それは別にいいんだが」


 そんな言い訳はどうでもいい。

 とにかく、そろそろ本当に授業に遅れるので、会話は打ち切りにするか。


「これから授業なんだ。真田も教室に戻った方がいいぞ」


「ああ。分かっている。またな」


 また会うつもりなんだなぁ。

 俺としては別に、会う必要性を感じないが。


 しかし……これでハッキリしたな。


(真田が俺のことを敵視しているということは――あいつ、焦ってないか?)


 まるで、新たなライバルが登場したかのような。

 そんな態度で接された気がしてならない。


 今のやり取りも、何か探りを入れられている感じがした。

 様子見なのか、偵察なのか、小手調べなのか。まぁ、全部同じような意味か。


 こんな脇役を意識するなんて、時間の無駄だと思うが。


(……いや、俺はそもそも脇役なのか? もう傍観者ではないだろこれは)


 自分の立場すら、認識に自信がなくなってくる。

 恐らく今のは、宣戦布告だ。


 主人公が俺の存在を認めて、舞台上に引き上げた。

 さて、困った。俺はこれから、どんな立ち回りをすればいいのだろうか。


 この先の展開は、この漫画の作者にしか分からない――。


お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
原作主人公様、転生か憑依かが微レ存?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ