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第二十話 モブヒロインが生まれてきてくれたことに感謝

 午後。約束通り、俺は最上さんの家にやって来た。


(手土産は酒にしたかったが、さすがに未成年だから買えなかった……)


 転生前に営業職をしていた名残りだろうか。

 どうしても、手土産を持って行かないと気がすまなかった。


 地方に行く際は、都会の有名店の商品を。

 都市部に行く際は、地方の産品を。


 たったこれだけの気遣いで、今後のコミュニケーションが何倍にも円滑になるのだから、持って行くだけ得なのだ。特に働き盛りの男性には酒が好まれる。地方の地酒を用意すると喜ばれたものだ。


 まぁ、おとうさんはここが地元の人間なので、地酒は別に珍しいものではないだろうが。

 高校生からもらうのも変だろうし。ここは年相応に、有名店の銘菓にしておいた。


 ……男子高校生がお土産に銘菓を買うことが、年相応なのか少し自信がないが。

 まぁ、転生前は大人だったので、これくらいの違和感は許してほしい。


「いらっしゃい、佐藤君。あ、これってお土産? おお、なんか美味しそうなお菓子だ……いいの? ありがとう♪」


 幸いにも、最上さんが喜んでくれたのでいいだろう。


「おじゃまします。最上さんの部屋ってどこだ?」


「に、二階だけど……入ったらダメっ。散らかってるもん。リビングで――」


「そうか……」


「え? あ、あの……リビングにしようかなと思ってけど、お部屋がいいの?」


 落ち込んだそぶりを見せたら、速攻で最上さんは俺を受け入れてくれた。

 あまりにも素直すぎる。チョロいともいえるので、悪い男に騙されないか不安だ。真田にはこの子をしっかりと支えてほしいものである。


 と、いうのはさておき。


「いや。プライベートの空間だからな、別に気にしないでくれ。リビングに行こう」


「うんっ。もうリビングで出迎える準備もしてたから、そっちがいいよ。一応、お茶菓子も用意してて……甘くない商品なら、佐藤君でも食べられるよね?」


「もちろん。気を遣わせてすまないな」


「いえいえ。まぁ、お母さんが気合を入れて色々買って来たから」


「それはありがたい」


 あと、おかあさんには俺が来ることをちゃんと伝えていることに安堵した。

 家主に黙って勝手にお邪魔するのは気が引けていたのだ。手土産を用意したのは、そういう気持ちでもあったりしたわけである。


 それから、リビングに案内された。

 最上さんの家は普通なので、なかなか情景描写がしにくい。八畳くらいのリビングには二人用のソファがあって、テレビがあって……これといって特徴がない庶民的な雰囲気である。


 家族って感じがする内装だ。

 転生前は出張ばかりで、長く同じ土地に住むことが少なかった。だからこそ、こういう温かい家は好きだ。子供の頃を思い出す。まぁ、今は転生しているのでちゃんと子供なのだが。


「お菓子、自由に食べてね」


「うん。それで、最上さん」


「え? なに?」


「なんで制服じゃないんだ?」


 さて、一通りシチュエーションの説明が終わったところで。

 そろそろ、本題に入らせてもらおう。というか、玄関を開けた時からずっと疑問だったのである。


「俺は君の制服を見てニヤニヤしに来たんだが」


「に、ニヤニヤ……佐藤君って、たまにストレートで言うよねっ」


 だって、ハッキリ言わないと最上さんには伝わらないからな。

 少し明るくなったとはいえ、彼女はまだまだネガティブである。言葉を悪く捉えることも多々あるので、そこを勘違いさせないように分かりやすく言っているのだ。


 かわいい、とか。

 好み、とか。

 最上さんは悪くない、とか。


 もちろん、たまに過剰な愛情を表現しそうになるので、そこは抑えているが。


 あと、そういう言葉をかけてあげると、彼女は喜ぶわけで。

 今も、俺の発言を気持ち悪いとは思っていないみたいで、なんだかモジモジしていた。


「ちょ、ちょっと緊張しちゃって……じゃあ、今から着てくるから、待っててね?」


「分かった。楽しみにしてるぞ」


 そう言って、彼女はリビングを出て行った。

 階段を上る足音が聞こえたので、恐らくは二階の部屋に行ったのだろう。


 数分程、お菓子をかじっていると。

 なぜか、そろーっとした足取りで……最上さんが、恐る恐ると言わんばかりにリビングに戻ってきた。


「ど、どうかな?」


 ついに、待ちに待っていた最上さんの制服姿。

 それを見て、俺は――


(や、やっぱり、かわいいなっ)


 ――息が止まった。

 髪型を変えてから、初めての制服姿。


 もちろん、少し手を加えたいところはある。

 というか、なんでまだジャージを着ているのかも気になるし、予想通りスカートの丈が長いことも、気にはなる。


 だが、とりあえず……かわいいことには、変わりない。

 だから、俺は手を叩いてまずは称賛した。


「この世に存在してくれてありがとう」


「そ、そんなに!?」


 ああ、これくらいは君の存在に感謝しているよ。

 だって、俺は最上さんのことを心からかわいいと思っているのだから――。

お読みくださりありがとうございます!

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これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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