表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/224

第百九十七話 性欲か。理性か

 だいたい二時間くらいだろうか。

 なんだかんだ、制限時間いっぱいカラオケを利用していた。


「スッキリした~!」


 特に湾内さんが楽しんでいた気がする。

 七割くらいは彼女が歌いまくっていた。最初だけ最上さんに歌を強要したが、あれ以降は専ら自分ばかり曲を入れていたのである。


 たまに俺や最上さんとデュエットしたり、ということもあったが……まぁ、湾内さんは歌が上手いので、聞いていて普通に面白かった。最近の流行りの曲も知ることができて良かったと思う。


 そんなこんなで、帰り道。


「うーん。風子に歌は無理そうね」


 湾内さんがそう呟いて、俺の脇腹を小突いてきた。なんだ小娘、喧嘩を売ってるのか?


「いやいや。素晴らしかっただろ」


「そう思っているのはあんただけよ」


「わたしもそう思うなぁ」


 最上さんまで湾内さんに同調していた。

 たしかに上手ではなかったが、別に否定するほどではないと思うのだが。


「残念……もし歌が上手ければ、ミスコンで歌わせてたのに」


「え!?」


 寝耳に水だったのか。

 最上さんはびっくりして大きな声を発していた。このリアクションを見る限り、湾内さんの意図は聞いていなかったのだろう。


 一方、俺は内心で頷いていた。


(やっぱりミスコンで出す特技を探っていたのか)


 予想していたので、驚きはない。

 この場で何も知らなかったのは、ミスコンに出場する最上さんだけだったようだ。


 ただし、俺はミスコンなど関係なくついてきた、という設定である。一応、驚いたふりをした方がいいだろう。


「な、なんだってー」


「……棒読みすぎるでしょ。あんたはどうせ察してたんじゃないの?」


 流石は同じ黒幕属性。俺が察していたことを彼女は察していたらしい。その上で、あえて手の内を見せてくれたようだ。


「まぁ、風子って歌が下手くそだし、最初から期待はしてなかったけどね」


「そうだよっ。わたし、みんなの前で歌えないよ!?」


「あたしと佐藤の前なら歌えるんだから、その気になれば大丈夫よ」


「……美鈴ちゃんと佐藤くんだから、歌えるだけだよ? 知らない人の前では、いくら美鈴ちゃんのお願いでも絶対にダメだからねっ」


 とかなんとか言いながら、最上さんは土下座したらきっと頷いてくれるんだろうなぁ。

 しかし、湾内さんはもう最上さんに歌わせる気はないので、その機会は訪れないか。


「ほう。歌わせないのか」


 ただし、俺は湾内さんとは少し意見が違った。

 もちろんそれを伝えては敵に塩を送ることになるので、あえて黙っておこうとしたのだが……湾内さんは、俺の様子を探っていたようで。


「ふーん。あんたなら歌わせてたの?」


 いち早く反応されてしまった。

 心を読まれては仕方ない。彼女の言う通り、俺が湾内さんの立場にいたらそうしていただろう。


「そうだな。俺なら、最上さんに土下座して歌ってもらっていた」


「え。佐藤くん、ダメだからね!? いくら土下座されても、ダメだよっ」


「そうか。ごめん、無理をさせるつもりはないよ。嫌なら、ちゃんと断ってくれてもいいから」


「……ちょ、ちょっとだけだからね?」


 ふっ。チョロいな。ちょっと殊勝な態度を見せたらこれだ。土下座すれば絶対にイケる。

 そのことは湾内さんも分かっているのだろう。最上さんの素直さに苦笑していたが、これ以上は触れずに俺との会話を継続した。


「なんで? あんなに下手くそなら、マイナスのプロモーションにしかならなくない?」


「技術なんて関係ない。カラオケ大会ではないからな……歌っている姿が魅力的であれば、それでいい。この一生懸命なところに、男子はグッとくるだろう」


「あっそ。あたしはそう思わないけどね」


 恐らく、俺と湾内さんでは見ている方向が違うのだろう。

 俺は最上さんに、不完全な魅力を求めている。

 しかし湾内さんは、彼女に欠陥なき魅力を求めているのかもしれない。


 もっと簡単に言おう。

 俺は最上さんに『内面の魅力』を感じている。

 一方、湾内さんは『容姿の魅力』を感じているのだ。


「この見た目なのよ? 一生懸命アピールなんかより、もっと見た目で圧倒できるから、もったいなくない? 風子は中身もかわいいけど、外見の方が絶対にレベルが高いでしょ」


「その意見も分かるがな」


「性欲に訴えかけた方が良いと、あたしは思う」


「俺は理性に訴えかける手段を選ぶな」


 見解の相違、というものだ。

 最上さんはどちらの方向にも十分な魅力を持っている。


 だからこそ、プロデュースする者……いや、俺と湾内さんの場合は『黒幕』だな。その意向や手腕が、問われるのかもしれない――。


お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ