第百六十三話 サキュバスは動物か否か
とりあえず、A組がバニー喫茶とメイド喫茶で意見が割れていることは分かった。
俺としては、どうにかバニー喫茶の方向に向かうことを願うばかりである。
「メイド喫茶が優勢なのか……でも、決定はしていないんだよな?」
「うん。一部が、メイド喫茶に猛反発してて」
「一部?」
「一部というか、その……うさぎちゃんと美鈴ちゃんなんだけど」
「――素晴らしい二人だな」
少数派かもしれないが、メンバーが個性的すぎる。
この二人なら、戦況をひっくり返せる可能性があるな。
尾瀬さんは流石である。俺との『スケベなバニーが見たい同盟』はまだ継続されているのだろう。
彼女も恐らく、最上さんのバニー喫茶が見たいはずだ。がんばってクラスのみんなを説得してくれないだろうか。
「ちなみに、美鈴ちゃんが『本当は逆バニー喫茶がいい』ってわたしに言ってたなぁ」
「……みんなの前で言わなかっただけマシか。褒めてあげてくれ」
想像の遥か上を越えてくるメスガキである。学校祭でそんなこと許されるわけないだろ。
……いや、学校祭だけではなく、そのイベントはエロ漫画でしか許されないか。
「そういえば、真田はどっちがいいと言ってたんだ? あいつなら、よりスケベなバニーの方を選びそうだが」
「え? さぁ、どうだろう。真田君のことは見てないから分かんないなぁ」
そ、そっか。
真田って、見られてないんだ。
俺が思っている以上、最上さんが真田に興味を持っていなかった。まぁ、あいつはどうせ鼻の下を伸ばしていただけだと思うので、別にいいか。メイドでもバニーでも、どっちでも良かったのかもしれない。
「でも、さすがに二人しか反論がないから、たぶん多数決でメイド喫茶になると思うよ」
「それは、ちょっともったいないな」
バニーが見たいところだが。
しかし、この調子だと厳しいか。
「佐藤君は、メイドさんは嫌いなの?」
「いや、普通に好きだぞ。バニーほどではないが、秋葉原の道端に立っているメイドさんとかよく見てたからな」
「よく見てたんだ……」
「ただし、見てるだけで満足したほうがいい。ついていくと、たまにぼったくられると噂で聞いたことがある。やはりメイド喫茶は大手が安心、と友人が言ってた」
「な、なんか詳しいね」
まぁ、実体験だからな。
友達が言ってた、という話はだいたい実話である。ただ、転生前の話なので、あえてぼかしておいた。
道端の客引きには気を付けなければならない、という教訓代ということで。
「でも、バニーも捨てがたい……」
とはいえ、バニーはやはり露出が多いという印象が強いか。
学校祭なので、不健全なものは好まれないだろう。尾瀬さんと湾内さんが抵抗しても、この規制には敵わない。
それなら……こんなのはどうだろうか。
「――アニマル喫茶とかならどうだ? メイド服に加えて、それぞれが動物をモチーフにしたアイテムを付けたら、いいと思うが」
「……それ、ちょっとかわいいかも」
ふとした思い付きの言葉だったが、意外と最上さんが食いついてきた。
どうやら、彼女にも刺さったらしい。
「美鈴ちゃんの犬っぽいコスプレとか、うさぎちゃんのうさ耳とか……かわいくなりそうだねっ」
ああ、そういうことか。
友人の魅力的なところが見たい、という最上さんの素直な気持ちなのだろう。
本当にこの子はいい子だ。俺は最上さんのスケベなところが見たいという下心しかなかったので、ちょっと心が痛かった。ごめん、最上さん。俺はそんなに綺麗な存在じゃないんだ。
「じゃあ、最上さんはサキュバスで」
「サキュバスって動物なの!?」
「……間違えた。小悪魔でいいか?」
「こ、小悪魔も、動物なのかなぁ」
アニマル喫茶というよりは、コスプレ喫茶になってしまうな。
でも、コスプレ喫茶だと不健全だと見られかねないので、アニマル喫茶という体でどうにかならないだろうか。
「一応、湾内さんと尾瀬さんにもお願いしておくか。最上さん、ちょっと早めに昼食を食べてから、教室に行こう」
「う、うんっ。分かった」
そういうわけで、少し急いで昼食を食べた後。
A組に行って、湾内さんと尾瀬さんに俺の意図を伝えておいた。二人ともいいアイディアだと頷いてくれたので、後は任せよう。
あとは神に祈るだけだ。どうか、お願いします。
最上さんのサキュバス……じゃなかった。小悪魔コスプレも、見られますように――。
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