表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

143/159

第百三十八話 G=主人公

 もし、裏垢が身バレしてしまったら、どうすればいいのか。

 SNSが当たり前の世代に生きているさやちゃんが、その対処法について教えてくれた。


「さやから言えることは『絶対に認めないこと』ですね。似ている人なんてたくさんいますから、自分ではないと言い張るべきだと思います」


「……そういえば芸能人とかも、都合の悪い投稿をしたら『乗っ取られていた』ってよく言うな」


「実際、そういったこともあるそうですね。まぁ、セキュリティ意識が弱いことの方がさやは問題だと思いますが」


 そして、実際に乗っ取られていたことが本当なのかどうか、という疑念も多くの人間が抱いているだろうが。

 ともあれ、たしかに『絶対に認めない』ということは、一つの解決策と考えていいのかもしれない。


「さやも、兄からアカウントのことを指摘されたら『絶対に違う』で押し通すと決めていますよ」


「……さやちゃんは、真田には絶対バレたくないんだな」


「はい。もしバレたら、家出してお兄さまの家に住みますね」


「へ、部屋が余ってないんだ。すまない」


「大丈夫です。お兄さまなら、同じお部屋でも問題ありません」


 君が良くても、世間の常識的に良くないんだよなぁ。

 まぁ、そのことについては後々に考えるとして。


(認めなければいいわけか……それなら、氷室さんのやり方が正解だったということだ)


 どうやら、彼女のやり方は間違っていなかったらしい。

 さすが、頭脳明晰だ。あの状況でも慌てずに冷静だったし、俺よりも遙かにスペックが高い。やはり、変に手を出さなくて良かった……彼女は最善のやり方で、リスクをうまく回避していたようだ。


「まさか、他人にバレることになるなんて」


「いかがわしいアカウントのリスクですね。承認欲求は時に人を狂わせます」


「……前から思ってたけど、さやちゃんって難しい言葉を知っているね」


「えへっ。そんな、お兄さまったら……褒めても愛情しか出ませんよ?」


「いや。褒めているというか、事実というか」


 実際問題、この子は受け答えがしっかりしている。

 話し方がやや舌足らずではあるが、語彙も豊富だ。


「両親の影響だと思います。二人とも、話し方が丁寧な人なので。あと、兄がカスカスなので、自分でしっかりと生きていかなければならない、という強い心が自立心を養いました。その点では兄に感謝です。あの人の役割はもう終わったので、さやの視界から消えていなくなればいいと思います」


「――感謝なんて、とんでもない。さやは俺の大切な妹だから、当然だよ」


 おい。どこから現れた。


「ぎゃぁあああああああああ!? で、出た!! お兄さま、あいつが出ましたっ」


 さやちゃんもGが出たみたいな反応をしていた。

 それくらい突然、音もなく……さやちゃんの背後に――真田才賀が現れたのだ。


「家に帰ったらまだいなかったから、迎えに来たんだ」


「頼んでいません。さやがどこに行こうとあなたに関係ありません」


「あはは。照れてないで、そろそろ行くぞ。こんな男に惑わされたらダメだからな。さ、さと……さとかわ? こいつはロリコンだぞ。危険な奴だから、離れなさい」


「さやにとって、あなた以上に危険な人間はこの世に存在しませんっ。悪霊退散……悪霊退散!!」


 名前が未だに認識されていないのはともかく。

 いや、こいつはもしかしたら覚えている上で、わざと俺を嘲笑したくて間違えているのか?

 まぁ、どっちでもいいか。真田に対しては怒りとかそういう感情すら沸かないので、どうでも良い。


 ただ、さやちゃんが十字を切っているのは面白かったので、そっちに目がいった。

 Gとは、ゴーストの方なのか。あるいは、ごきぶr……いや、単語だけで不快になる人もいると思うので、自重しておこう。


「あ、そうだ――さやは今、記憶を失いました。あなたは誰ですか? 知らない人なので、どこかに消え失せてください」


「はいはい。じゃあ、帰るぞ」


「やだっ。やだやだやだ! お兄さま、たすけてっ」


 記憶を失っているという設定はどこへやら。

 俺のことは都合良く覚えていたらしいさやちゃんは、真田に手を引っ張られて泣きべそをかいていた。

 ……ごめん。そろそろ氷室さんとの約束の時間も迫っているので、解散だ。ミルフィーユも食べ終えているし、問題ないだろう。


「またね、さやちゃん」


「うるせぇ! 俺の妹に色目を使うな!!」


「お兄さま……さやは絶対に、戻ってきます。それまで、待っていてください。これは試練です。この悪魔を討伐して、本当の自由を手に入れてみせますっ」


 ……意外と、さやちゃんも面白い子なんだよなぁ。

 真田の妹なだけあって、なかなか性格がユニークだった――。

お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ