第百二十五話 最上さんは興味津々
「わたくしを無視して、二人だけの世界に入らないでくださいまし?」
おっと。
最上さんと見つめ合っていたら、尾瀬さんが間に割って入ってきた。
不服そうな表情を浮かべている……いや、なんで俺を睨んでいるんだ。
「庶民。やはり、わたくしのライバルはあなたですわ」
「もう対立構造は間に合ってるんだが」
敵対するのは真田と湾内さんだけにしてくれ。
君と争う気はないぞ。
「でも、風子さんを独占なんて許しませんわ」
「そんなつもりはない」
「はわわっ。ふ、二人とも、けんかはやめて……?」
自分のことで、俺と尾瀬さんが険悪になりかけているのを察知したのか。
慌てた様子で仲裁に入ろうとする最上さん。その時に初めて俺に背を向けたのだが……う、後ろもすごいな!!
(むっちむちだ……!?)
網タイツから肉が少し浮き出ている。
レオタード状の形状とはいえ、別にお尻が出ているというわけじゃない。ただ、太もも付近の肉が少しあふれ出そうになっていて……うむ。やはり素晴らしい。
あと、兎の尻尾がついているのに初めて気付いた。
小さくてかわいい尻尾だ。スケベさとキュートさを兼ね備えているハイブリッドバニーガールだな。
「……尾瀬さんの言う通り、おしりも最高だな」
「……庶民。先程の言葉を撤回いたしますわ。お胸もまた、風子さんの最大の魅力ですわね」
尾瀬さんも、改めて最上さんの前面を眺めたらしい。満足そうな表情を浮かべていた。
つい数秒前までは、一触即発だったのに。
最上さんが大好き、という点で俺たちの意思は同じだ。
それなら、争う必要なんてないのではないだろうか。
「尾瀬さん。俺は最上さんを独占なんてしない……こんなに素晴らしい存在を、独り占めするなんてもったいないだろ?」
「た、たしかに、そうですわっ。風子さんは女神に等しきお方……全ての存在を導くスケベさを持っていますもの」
「言っていることはよく分からんが、だいたい俺も同じ気持ちだと思う。だから――共有しよう。最上さんの魅力を、二人で存分に味わおう」
「おほほ。庶民にしてはいい考えですわ。よろしくってよ」
心は、一つだ。
ある意味で、俺と尾瀬さんは誰よりも理解しあっているのかもしれない。
正直なところ、お互いがお互いについてはさほど関心がない。
しかし、最上さんへの気持ちは二人とも深い。だからこそ、その点で分かり合えたのだ。
「え? あ、あれ? けんかは……終わった???」
最上さんは混乱している。
即座に仲直りした俺と尾瀬さんを交互に見て、首を傾けていた。仕草がやっぱりかわいいな。
「え、えっと。じゃあ、そろそろわたしは、着替えてもいいのかな……?」
「「ダメ(ですわ)」」
「……ですよねー」
最上さんもダメ元だったのだろう。
俺と尾瀬さんが首を横に振ったのを見て、乾いた笑みを浮かべた。
「ここで終わるとでも?」
「むしろ、本番はここからですわ」
「そろそろ動画と写真を撮るぞ。最上さん、ベッドの上でポーズをとってくれ」
「え? 撮るの!?!?!?」
逆に聞きたいが、なぜ撮らないと思うんだ?
「こんなに素晴らしいバニーガールを映像として残さないわけないだろ」
「風子さんの神々しいお姿を記録に残すのは当然ですわ。わたくしの待ち受けにしますの」
「そ、それは流石に恥ずかしい……でも、佐藤君がそれを望むなら――」
「待て待て。俺は待ち受けにすると言ってないぞ」
いや、本当は待ち受けにしたいのだが。
しかしながら、家族の目がある。穏やかな両親が、たまたま俺の待ち受けに映っているバニーの最上さんを見たら、きっと動揺して家庭の平和が壊れるだろう。あの二人は平凡で優しい、ありふれた親なのだ。迷惑はかけられない。
ただ、言い方が少し難しいな。
最上さんの魅力が足りないから、待ち受けにできない――と認識されては困る。
そうやって勘違いされないように、俺はしっかりと釘を刺しておいた。
「――最上さんがスケベすぎて、見るたびに興奮するのは体力が持たないから、待ち受けにはできないんだ」
「え!? そうなんだ……こうふん、しちゃうんだ……なるほどっ」
なぜ今の発言でそんなに動揺するんだ。『なるほど』とは、いったい何を理解したというのか。
「べ、べべべ別に今後の参考にしようとか、そんなことは思ってないからねっ」
その言い方はもう自白と同義なんだがな。
今後、どんなシチュエーションで参考にしようとしているのか。
まったく……最上さんは、やっぱり満更でもなさそうだった――
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