表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/181

第百十四話 バニーガール←大好き

 帰り道。

 最上さんと俺の家は同じ方向なので、途中まで一緒に帰る日も多い。

 最近は最上さんの補講とか、俺がさやちゃんと密会していたので、少し機会が減っていたが。


 でも、やっぱりこの時間は落ち着く。

 少しでも長く最上さんと一緒にいたくて、無意識に歩くペースが遅くなるくらいには大切な時間だ。

 最上さんもきっと、同じように思ってくれていたのかもしれない。


 いつもの倍以上の時間をかけて、のんびり歩いている。

 ……いや。しかし今は、そういう意味で歩くペースが遅いわけではないか。


「ば、ばにぃがぁる?」


 呆然としていた。

 俺の突然の一言に、最上さんはぽかんと口を開けている。

 あまりにも脈絡のないお願いだったのだろう。脳の処理が追いついていないようだった。そのせいで歩く足もさらに遅くなったので、俺は立ち止まってちゃんと気持ちを伝えた。


「最上さんのバニーガールを見るのが夢だったんだ」


 転生前、モブ子ちゃんのバニーガールが見たくて仕方ない時期があった。

 残念ながら人気作とは言えなかったので、ファンアートもなかった。ねこねこ先生はモブ子ちゃんに限らず、他のヒロインでもバニーガールは書かなかったので、読者として見ることはできなかったのである。


 理由はなんとなくわかる。

 バニーガールって、学園ラブコメとは距離のある存在だ。

 でも、一時期から爆発的に増えたんだよなぁ。最近は水着よりも、バニーガールの方が喜ばれる傾向がある気もする。ソシャゲでもバニーは大人気だ。


 だから、俺は見たい。


「最上さん。兎さんになってくれ」


「え? え……えっ。えー!?」


 最近、最上さんをあまり堪能できていない。

 氷室さんのこととか、さやちゃんのことで、なかなか時間が作れなかった。

 あの二人が物語の進行上大切そうなので、こうなってしまうのも無理はないのかもしれない。


 でもこの漫画は、ラブコメが中心というよりも、ヒロインの可愛さをメインで楽しむタイプの作品だ。

 最上さんのかわいいところを、俺はもっと見たかった。


「む、無理だよっ。バニーってあれだよね……あの、逆のやつ!!」


「いや、逆バニーとは違うぞ。落ち着け、最上さん。逆バニーを正式なバニーガールと思うのは危険だ」


 たしかにエッチなコンテンツだと、逆バニーがむしろ正式なバニーガールみたいになっているが。

 あれは布の位置が逆だ。俺が見たいのは、ちゃんと普通のバニーガールで……まぁ、そもそもバニーガールが普通なのかどうかは分からないが、とにかく健全な方である。うーん、バニーガールが健全かどうかも諸説あるので、とにかく俺はどっちでもいい!


 ただ、漫画のレーティング的に逆バニーは不可能なので、やっぱり普通の方にしようか。


「逆じゃない……あっ。もしかして、あれって正式じゃないの!?」


「もちろん。あれが正式だったらバニーガールなんて存在しない。もともとはウェイトレスの衣装だぞ」


 ただし『ちょっと大人なお店の』ウェイトレスなのだが、その情報は意図的に削除した。嘘はついていないので問題はないだろう。これが叙述トリック……いや、たぶん違うな。推理小説は読んだことないのでよく分からない。


「へー。そっか、ウェイトレスさんなんだ……メイド喫茶とかと同じ感じなのかな?」


「たぶんそうだ。だから健全だと思う」


「そ、そうだね。わたしが見たやつは、ちょっと過激な種類だったのかも……?」


「過激って。最上さんはいったい何を見ていたんだ」


「べ、べべべつに普通だよ!! あの、その、普通だから……!」


 必死すぎて逆に分かりやすかった。

 今までの付き合いで、なんとなく彼女に感じていることがある。


(最上さんって、意外とそういうことにも興味あるのかもしれない)


 清楚そうだが、内心ではどうなのだろうか。

 真田ほど下品な感じはないので不快感はない。ただ、無関心じゃないだろうなとは感じるので、それはそれで最高だった。清楚そうで意外とピンク色なのはたまらないな。このギャップが魅力だと思う。


 うん、これなら……いけるな。


「最上さん。そういうわけだから、バニーガールになってくれないか?」


「どういうわけか分からないよっ。わたし、その……うぅっ」


「大丈夫! 一回だけだから!!」


 両手を合わせて、拝むように頭を下げる。

 そうすると、最上さんは困ったようにおろおろして……それから、小さく呟いた。


「……見たいの?」


「もちろん」


「……そんなに?」


「ああ。最上さんのバニーガールを見ないと、死んだときに後悔するかもしれない。それでもいいのか?」


「そ、それはダメっ。佐藤君が死んだら悲しいよっ」


 いや。別に死ぬとは言ってないが。

 それはともかく。あと一息だ。


「じゃあ、見せてくれるんだな?」


「し、死ぬくらいなら……うん、分かった」


「え? なんだって? 声が小さいな」


「わ、分かりました!」


「何を分かったんだ? ハッキリ言ってくれ……最上さんは、何をするんだ?」


「ば、バニーガールに、なりますっ!」


 なぜか敬語になって宣言した最上さん。

 やはり押しに弱かった。俺の強引な追及にいとも簡単に屈した彼女は、バニーガールになることを約束してくれた。


 と、いうわけで。

 俺の夢が叶いそうである――。

お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
バニーガールゴリ押しが妹に押ししか使えない真田みたいに思えて草。
なお、バニーガールとは、「俺たちが考える最強のス〇ベ制服作ろうぜww」というネットの俺らみたいなノリで始まったアメリカの雑誌企画の成果であったりする。 『ウェイトレスの衣装だから大丈夫』は嘘じゃないけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ